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マーク・ハメットヘッドコーチ、サンウルブズは大丈夫? 都内で講演【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本のスーパーラグビークラブの初代指揮官。手腕やいかに。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

南半球最高峰のスーパーラグビーに、今季から日本拠点チームが参戦する。サンウルブズだ。1月28日、マーク・ハメットヘッドコーチが都内で講演。2月4日からの始動に際し、抱負を語った。

チームは一昨年から参入が決定も、当時のラグビー・オブ・ディレクターが猛練習と感情の振れ幅の大きさで鳴らすエディー・ジョーンズ日本代表前ヘッドコーチだったこともあり、メンバー集めに難航。8月下旬にはチーム消滅の危機に瀕していた。

ジョーンズの辞任とほぼ同時期にピンチを免れた後も、定まらぬ体制に契約選手がいらだちを覗かせる。現在も産みの苦しみの只中だが、クルセイダーズの選手、アシスタントコーチとして計7回の優勝を経験したハメット新ヘッドコーチは「礎を作る」と前向きだ。

以下、講演中の一問一答の一部。

――就任の経緯。

「サンウルブスのヘッドコーチのお話をいただいたのは昨年12月。考える時間はなかったのですが、スーパーラグビーに何か貢献をしたいという気持ちがありました。クルセイダーズでコーチを務めてきました。7回優勝しているのですが、設立時は苦労していて1996年は最下位です。そこで土台作りが大事だと思った。今回、この職をお受けすることになりました」

――日本チームが参加する意義。

「日本のラグビーには歴史がある。それを経て、世界で最もタフとされるスーパーラグビーに挑戦する。機が熟したと思います。ニュージーランドのメディアに『日本の参画は早すぎるのでは』と質問されましたが、『それならば、2、3年経てばちょうどいいタイミングになるのか』いいものなのかと、逆にお聞きした。ものを始める時はいつでも課題はあるが、やろうとした時が適時になる場合があります。昨年、代表チームがあのような成功(ワールドカップイングランド大会で予選プール3勝)。いい時期だと思っています」

―― 一番影響を受けたコーチは。

「素晴らしいコーチはたくさん思い浮かぶが、そのなかでも1人目はロビー・ディーンズ(かつてクルセイダーズを指揮。現在は日本のパナソニックで監督を務める)。一生懸命、仕事に取り組む。密接なチームを作ることに尽力している。ラグビーをするうえで、』個人よりチームが重要だと考えているからだと思います。

2人目はウェイン・スミス(現ニュージーランド代表アシスタントコーチ)。テクニカルな指導に長けている。加えて、選手への接し方が細やか。私に対しても、家族のことなども考えて話している印象」

――ハメットさんは、これから。

「一緒にいる時間が長いので、楽しいチームを作れるかが肝になる。グラウンドの上では、いいプレーがあってももっと上を求める。グラウンドを離れたら、選手を知ろうと心掛ける。趣味が何か、奥様やガールフレンドがどんな人か、など。大事なのはキャラクター。それを知れば、もっとそれ以上のものが得られる。チームで1つのことを成し遂げないといけないところが、ラグビーの魅力です」

――サンウルブスと日本代表との連関性について。

これはあくまで私の意見なので、スタッフや皆さんと話さないといけないのですが…。

まず、サンウルブスが強くならなければいけない。プロの強いチームを作ることが必要。ただ、日本協会と密接なつながりを持たなければならない。どこかの部分では、一緒にやっていかなければいけないところが出てくるでしょう。サンウルブスと日本代表、サンウルブスとほかの日本のチーム…というつながりも大事。サンウルブスのヘッドコーチは、代表のヘッドコーチと密接にやっていかなければいけない。オールブラックス(ニュージーランド代表)のヘッドコーチはスーパーラグビーの各コーチと連携を密にしている。それが強さの理由だと思います」

――どんなスタイルを目指すか。

「まずは皆が一体となるチームを目指す。ここでストレングス&コンディショニングのスタッフと話しながら、選手たちとも話をしたい。ぜひ、この時に選手のキャラクターを知りたい。サンウルブスでどうなりたいかということも聞きたいです。ラグビーではジャパンスタイルをしたい。南アフリカやニュージーランドのまねをするのはダメ。フリーフロー、ワイド、速い。それが特徴。相手がそれを止めに来るのに対し、どう対処するかも重要。最初の2、3試合は、とにかく速いプレーをするのがキーになると思います」

――準備期間は短い。

「たぶん、そこが我々の最大の課題です。通常なら、スーパーラグビーではクリスマスまでの1か月間、一緒に過ごす。その後を含めると計2か月くらいは一緒に過ごす。その意味では我々の準備期間は短いですが、アドバンテージかと思います。ほかの多くのチームがもう練習に飽き飽きしている。そうなっていれば、チャンス」

――追加選手は。

「おそらく、今後選手を加える可能性はあります。スーパーラグビーでは長く戦うことになるので、何らかの形でバックアップスコッドを整えるのが大事。そこに選ばれた選手が本当のスコッドと練習するのは、彼らのメリットにもなる。そこでいいパフォーマンスを見せれば、来年契約することもある。1年目。すべての仕組みが整うかはわかりませんが、この仕組みだけは整えていきたい」

――キャプテンは。

「決定はしていませんが、候補は明らかに数名、います。決定は、選手と直接話してから決める。キャプテンがその役割に意欲を持っていないといけない。自分のポジションでもしっかり役割を果たさないと。また、複数キャプテン制度というアイデアにあります。キャプテン以外に、リーダーシップチームもぜひ作っていきたい。キャプテンのサポートをするなかで、ほかのキャプテンについていきたい若い選手を作る。勝敗はもちろん、選手を成長させるためにもそうしていきたい」

――エディー・ジョーンズが日本代表でしたような早朝練習などはあるか。

「ワールドカップは特別なイベント。(早朝練習は)それを乗り越えるために、限られた合宿期間で必要なこととしてやったのだと思います(正しくはほぼ4年間、おこなわれた)。

私は、あれは決して長く続けられるものではないと思います。スーパーラグビーは違った戦いになる。日本に帰ってきたときは家族や愛する人と過ごすように。そのバランスを取りたい」

――戦術面について、より具体的に。

「エディーがやったストラテジーはよいものだった。全体の競技力を上がった。そうしたストラテジーは、描くよりやり遂げるのが大変。それをやり遂げるには、コツがある。練習でハチャメチャなトレーニングをするなかで、その状況を乗り越えるなど…。強いチームのまねをしてはダメ。根底として、どうボールを奪うか、どう戦うか。それは(昨季のジャパンからも)引き継がれると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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