原油高で消費国が悲鳴も、OPECプラスが積極増産を拒否した理由は?
石油輸出国機構(OPEC)プラスは10月4日の閣僚級会合において、月に日量40万バレルのペースで増産する現行の合意案を11月も維持することを確認した。原油や天然ガスなどエネルギー価格の高騰が本格化しているため、米国など一部消費国からはOPECプラスに対して増産ペースの加速を要請する声も強くなっていた。しかし、OPECプラスとしては、少なくとも現段階で政策調整を行う必要はないとの判断を下した。
ブレント原油相場が1バレル=80ドル台と2018年10月以来の高値を更新する中、こうしたOPECプラスの対応には当然に疑問の声もある。産油国が原油価格を高めに誘導するために意図的に供給量を抑制して、消費国にその負担を負わせているのではないかとの見方も可能なためだ。仮にそうした意図がないにしても、原油高がガソリン高などを通じて家計に大きな負担を迫る中、増産対応を期待する向きは多かった。
実際にOPECプラス内からも、イラク石油相が100ドルの原油価格は持続可能ではないとの見方を示すなど、高過ぎる原油価格に対して居心地の悪さを示唆するような発言も聞かれ始めていた。過剰な原油高は脱石油の最近のトレンドを加速させかねないことに加えて、世界経済の減速を招きかねないためだ。産油国としても、消費国が受け入れ不可能なレベルの原油高は望んでおらず、実際に今会合に向けては増産ペース加速の議論も行われたことが、複数の関係筋の発言から確認されていた。
それにもかかわらずOPECプラスが増産ペースの加速を見送ったのは、今後の原油需給環境が増産ペースの加速を要求していないと考えているためだ。確かに足元ではエネルギー需給全体のひっ迫懸念が強くなっており、特に冬の暖房用エネルギー需要に対応できる供給量を確保できるのか、警戒の声も聞かれる。しかし、OPECプラスは来年に向けて原油需給が極端にひっ迫化するとは考えておらず、逆に供給過剰圧力が強まるリスクさえも警戒しているのだ。
今後は需要の伸びが鈍化する一方、OPECプラス以外からの供給量が増加し、更にイラン核協議の行方によっては大量のイラン産原油が市場に供給される可能性もある。短期目線で見ても、新型コロナウイルスの変異株の感染状況などによっては容易に原油需要が大きく落ち込む可能性があり、政策調整には慎重に臨まざるを得ない状況と考えている可能性が高い。
OPECプラスとしてもこれ以上の原油高を望んでいる訳ではないだろうが、需給バランスを長期にわたって安定化させ、原油価格をある程度の高値水準で安定化させるためには、現段階での増産ペース加速はメリットよりもデメリットの方が大きいと考えたのだろう。
次回のOPECプラス会合は11月4日に予定されており、それまでに原油供給不足、原油高が一段と深刻化していれば、OPECプラスが12月以降の大規模増産に乗り出す可能性も十分にある。しかし、当面はOPECプラスの介入によって原油需給のひっ迫懸念が解消されることはなく、原油価格の上昇傾向が維持され易い状況が続くことになる。ガソリンや灯油価格などが値上がりし易い状況が維持されよう。