携帯電話の普及率の現状を詳しくさぐる(2023年公開版)
持ち運びが容易な電話として普及し、インターネットへのアクセス機能の実装で飛躍的な進化を遂げ、今や日常生活では欠かせない存在となった携帯電話。その世帯ベースでの普及率の実情を、内閣府の消費動向調査(※)の結果から確認する。
まずは全般的な世帯普及率(質問票では「あなたの世帯で持っている耐久消費財などの数量を記入してください」とあり、保有率をも意味する)。単身世帯はスマートフォン84.5%、従来型携帯電話12.2%。二人以上世帯はスマートフォン92.6%、従来型携帯電話18.2%。案外単身世帯のスマートフォン普及率が低いように思えるが、これは高齢層まで勘案対象のため。
二人以上世帯では過半数どころか9割強がスマートフォン持ちで、従来型携帯電話の普及率をはるかに超える状況が確認できる。そして単身世帯でも男女ともにスマートフォンの方が普及率は高い。
続いて年齢階層別普及率。さらに年齢階層の区分は大まかなまとめになるが男女別の値も用意されているので、それぞれを確認していく。まずは単純な年齢階層別普及率。
双方機種で二人以上世帯の方が普及率が高い傾向にあることは、世帯構成人数の問題。またスマートフォンは若年層、従来型携帯電話は高齢層の方が普及率は高い。
29歳以下でも数%は今なお従来型携帯電話を所有しているが、スマートフォンは40代までが9割強の普及率に達している。二人以上世帯に限れば、60代までが9割台。全体におけるスマートフォンの普及率は単身世帯で82.0%、二人以上世帯で91.9%であることは上記で記した通りだが、多分に高齢層の普及率の低さが全体値の頭を押さえていることが分かる。
続いて男女別・年齢階層別で区分した場合。
スマートフォンでは男女差はさほどないように見えるが、従来型携帯電話では男性の方が高い値を示している属性が多い。しかし男女における違いが明確化されるような傾向は見当たらない。かつては女性の方が従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトが進んでいるように解釈できる値が示されていたのだが。
最後に世帯年収別普及率。携帯電話の種類別で大きな違いが確認できる。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。
従来型携帯電話は二人以上世帯の場合、おおよそ低世帯年収ほど高普及率を示している(550万円以上ではほぼ横ばいとなるが)。他方単身世帯では低世帯年収で高普及率を示した後、世帯年収が増えるに連れて普及率は一旦落ち、再び上がっていく。世帯年収そのものよりも、世帯主の年齢に引きずられての動きかもしれない(単身世帯の場合は特に高世帯年収の世帯ほど、世帯主が高年齢である場合が多い)。
スマートフォンでは単身世帯・二人以上世帯ともに大体高世帯年収ほど高普及率の傾向にある。金銭的な余裕が生じるに連れて、世帯主自身、あるいは配偶者や子供にスマートフォンを持たせようとする考え、あるいは要望を叶えられる余裕が出てくるのだろう。見方を変えれば、スマートフォンは従来型携帯電話と比べてコストが大きいため、金銭的な余裕が無いと保有が難しいとの推論が導き出される。単身世帯の950~1200万円未満が有意に下げているのは、統計上のぶれが生じているようだ(該当世帯数は18世帯のみ)。
携帯電話は従来型携帯電話からスマートフォンへの移行が進んでいる。しかし単純な通話やシンプルなインターネットアクセス機能で十分とする使い方、需要(コストパフォーマンス的な意味合いも含め)ならば、従来型携帯電話は今なおベストな端末に違いはない。また子供の防犯用携帯電話としても、従来型携帯電話は重宝されている。
今後もスマートフォンへの移行は進み、普及率も年々底上げされていく。一方で従来型携帯電話の普及率は漸減を示すことになるが、一定数は維持されるに違いない。
■関連記事:
【TCA発表値ベースだと153.6%…複数データを基にした携帯電話の普及率推移(最新)】
【20年強にわたる携帯電話普及率の実情をさぐる(先進諸国編)(2023年公開版)】
※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2022年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。