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BALMUDAスマホ ビジネス的には意外にも成功?

山口健太ITジャーナリスト
丸みを帯びた形状が特徴のBALMUDA Phone(筆者撮影)

11月26日発売の「BALMUDA Phone(バルミューダフォン)」は、最近のAndroidスマホとしては異例の大反響となっています。スマホとしてはさまざまな意見があるものの、ビジネス的にはすでにある程度成功しているというのは意外な点かもしれません。

スマホの販売チャネルには大きく分けて「キャリア市場」と「オープン(SIMフリー)市場」の2種類があります。日本では前者の携帯キャリアによる販売が多く、2021年4〜9月では全体の83%をキャリア経由が占めています(MM総研調べ)。

バルミューダの端末事業では2021年12月期に約27億円の売上を見込んでおり、単純計算で1台10万円とすると2万7000台になります。先ほどの比率に当てはめると、通信事業者として独占的に取り扱うソフトバンクが2万3000台、バルミューダが自社で4000台を売る計算になります。

携帯キャリアはメーカーからまとまった台数の端末を仕入れるので、メーカーとしては売上の見通しを立てやすいといえます。また、SIMフリー市場で売れるのは4万円以下の格安機種が多く、10万円を超える機種はなかなか売れません。これを加味すると、売上見込みのほとんどはソフトバンク経由かもしれません。

スマホが好きな人からは「メーカーにもっとSIMフリーで売ってほしい」との声も聞かれますが、実際にはさまざまな困難があります。バルミューダは家電製品の販路を持っていると思われるものの、そこでスマホを売れるかどうかは別問題です。

サポートも問題です。ボタンを押せば使える家電製品とは異なり、スマホにはハードやソフト、ネットワークが絡んだ多種多様なトラブルが起こります。販売台数を増やせば初心者の比率が高まり、やがて「パスワードを忘れた」といった類の質問がサポートの窓口を埋め尽くすことになります。

その点、キャリアは全国に数千店の販売網を構築しており、膨大な数のスタッフが販売やサポートといった泥臭い仕事を引き受けてくれます。新規参入するメーカーにとっては、キャリア採用が決まった時点である程度は成功したといえるわけです。

品質の面でも、キャリアが採用したスマホは一定の評価をクリアしている安心感があります。日本のキャリアは要求水準が高いことで知られており、海外メーカーの中には「日本のキャリアが採用した」ことを売りに海外市場に展開しているところもあります。

注目ポイントは「キャリア採用が続くか」

最近のソフトバンクは5G端末のラインナップを拡大しています。OPPO、Xiaomiといった勢いのある中国メーカーを採用したかと思えば、高級カメラメーカーのライカと組んでみたり、グーグルのPixelシリーズを継続的に投入したりと、手を広げています。

ソフトバンクの榛葉淳副社長は、グーグルやバルミューダとの取り組みを紹介した9月の発表会で、「スマホ以外の商材についてもパートナーとともにソフトバンクブランドで提供していく」と語っています。

ソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 COO コンシューマ事業統括の榛葉淳氏(ソフトバンクの新サービス発表会動画より)
ソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 COO コンシューマ事業統括の榛葉淳氏(ソフトバンクの新サービス発表会動画より)

もしバルミューダフォンが売れなければソフトバンクは在庫を抱えることになりますが、端末などを含むソフトバンクの「物販等売上」は1年間に5600億円という規模であり、失敗してもダメージは限定的、当たれば大きいといったところでしょうか。

ただし、大手メーカーのスマホであっても、売れ行きが伸びなければ後継機の採用が続かない場合もあります。バルミューダの話を聞く限りでは、長期的にキャリアと関係を築いていく手応えは得ているようですが、今後のモデルでもキャリア採用があるか引き続き注目したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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