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激戦区の北海道から名門大とカーリング名門大が横浜へ殴り込み。北海道カーリング選手権。

竹田聡一郎スポーツライター
左から鈴木、瀬川、森、中村、敦賀 (C)北海道カーリング協会

 12月17日から12月22日まで、妹背牛町カーリングホールにて「第44回北海道カーリング選手権大会兼アルバータ杯カーリング大会」(以下北海道選手権)が行われた。

 勝者は2月2日に開幕する日本選手権(横浜BUNTAI)への出場権を得るこの大会だが、男子のクオリファイチームはMSCわっかない、北海道大学、札幌国際大学、チーム北見だった。

 ラウンドロビン(総当たりの予選)を見る限り、経験や戦術ではチーム北見、実戦の多さで札幌国際大学、勢いではMSCわっかないというプレーオフの展望だったが、ページシステムで決勝に進んだのは北海道大学だった。

 ラウンドロビンでは笠井隼稀をリードスキップに据え、セカンド林莉生、サード大原玄嗣、フォース菊地夏。フィフスの畑良太が状況に応じてセカンドやサードに入るという布陣だったが、林がプレーオフからゼミ参加のために帰札。プレーオフと決勝の2試合は、笠井ー畑ー大原ー菊地で戦った。

 しかしメンバーが変わってもノックアウトステージに進んでも、ベースとなるカーリングは変わらなかった。大原が「練習でできること以上のことはできないので、いつも通り目の前のことを処理していくだけ」と自身とチームに向けて繰り返しながらプレーしたことを明かしてくれたが、難しいショットや最先端の戦術というよりも、いい意味で背伸びしないシンプルショットを重ねることに集中した。

 その結果、プレーオフのMSCわっかない戦では終盤に最大5点のリードを追い付かれるも最終エンドにしっかりシングルポイントを記録。決勝では10エンドで同点にされながらも後攻を持ったエキストラエンドで勝利するなど、常にゲームを客観視しリスク管理を徹底。北海道選手権初出場で初優勝の快挙を達成した。

 大会後、日本選手権に向けての抱負をそれぞれ語った。

 フィニッシュを担当する菊地は「あんまり緊張しません」と“マシーン”の異名を持つ強心臓の選手だ。「フォースはメンタルなので、言われたところに言われた(石の曲がり)幅で投げたい」とサラリと語った。

 畑良太は北海道ツアーの配信などで実況を担当していることでも知られている。「口だけではなく、実際にカーリングできるぞというところをお見せできれば」と笑う。

 チームの頭脳であるスキップの笠井は「幅、作戦などすべてのことで集中を切らさずに10エンド戦いたい」と日本選手権を見据えた。もちろん日本選手権は全5選手が初出場だ。北大生の大きな挑戦は続く。

左から畑、菊地、笠井、大原。札幌のリーグ戦では「Logbook」というチーム名で最上位のAリーグに所属し、北海道銀行やフォルティウスなどの強豪と渡り合う。 (C)北海道カーリング協会
左から畑、菊地、笠井、大原。札幌のリーグ戦では「Logbook」というチーム名で最上位のAリーグに所属し、北海道銀行やフォルティウスなどの強豪と渡り合う。 (C)北海道カーリング協会

 女子も新たなチームが横浜へ駒を進めた。札幌国際大学だ。

 2014年にOGである吉村紗也香(現フォルティウス)が優勝しているが、5人の1年生、リードバイスの鈴木凛、セカンドの瀬川琴佳、サードの中村碧音、スキップの敦賀心羽子、フィフスの森夢香という今回のメンバーでは初出場で初優勝。全員10代の若いチームだ。

 決勝で対戦したLOCOSOLARE.S(ロコ・ステラ)とはラウンドロビンとプレーオフで連敗を喫し、いずれも前半から複数失点を記録していた。

 決勝では「前半で離されないようにしようという目標を立てていた」と言う敦賀の目論見どおり、ゲームプラン、エンドプランを明確にすることでチームから迷いが消え、フロントエンドからミスが減り、優位な形を作った。アイスの状態を確かめながらブランクエンドを続け、チャンスが来た第3エンドに2点。第4エンドにも2点をスティールで奪った。

「基本的なショットの精度も良かったし、各選手が最低限何をすべきかしっかり理解して試合に入れていた」とは土居誉享コーチの談話だ。

 逆にLOCOSOLARE.Sのスキップ・佐々木穂香が「自分たちのミスをしっかり拾われて、チャンスも来たけれどそれを活かせなかった」と悔やんだようにショットに繋がりを欠いた。

 いずれにしても出色は敦賀のラストロックだった。2点を獲った第3エンドのアングルテイク、第4エンドのカム・アラウンド、大量失点をセーブした第5エンドのヒットロールとカム・アラウンドなど、前半から中盤にかけて多種のショットを決め続けた。ショット率は90%を超えていただろう。

 叔父は長野五輪代表の敦賀信人、兄はコンサドーレの敦賀爽太というカーラー一族の最終兵器とも呼ばれ、高校生時代からミックスダブルス日本選手権でベスト8入り、日本ジュニア準優勝などの結果を残し札幌国際大に進学。今大会で初の日本選手権出場を決めたほか、今季は日本代表として来年1月にイタリア・トリノで行われる冬季ワールドユニバーシティゲームズのメンバーにも選出されているプロスペクトだ。

 その敦賀のショットと最大限に活かすための中村、瀬川のスイープ、鈴木のコールが決勝で噛み合っての優勝だった。

「予選はセットアップがうまくいかず難しいショットを心羽子に残してしまったけれど、決勝では修正できた。スイープでもしっかりジャッジできて貢献できたと思う」(瀬川)

「始まる前は緊張もあったのですが、チームメイトを信じてやりたいことができた」(中村)

 日本選手権には鈴木は青森から、瀬川は岩手からいずれも東北代表としてそれぞれ出場経験がある。

「いろんなチームがレベルアップして出場してくるけれど、強いチームだからといってビビらずに自分たちらしく楽しく試合ができれば」(鈴木)

「上のレベルになるとちょっとでもミスが出たらそこを突かれる。練習からコミュニケーションをとっていきたい」(瀬川)

 中村、敦賀、森は初の挑戦となる。

「心羽子に苦しいショットを残さないように、スイーパーとしては琴佳と凛としっかりアイスの状況を確認しながら、夢香とコーチも含めてみんなで協力してプレーできれば」(中村)

「北海道以外のリンクに行ったことがないので横浜に行くのが楽しみ。裏でみんなを支えながら楽しみたい」(森)

「今日の決勝で出せたことを日本選手権でも最初から出せるように、明るく元気に1年生らしく挑戦者として恐れずにトップチームに食らいついていきたい」(敦賀)

 札幌国際大学は2月2日の16時に開始されるオープニングカードで中部電力と、北海道大学は翌3日の9時開始の試合でSC軽井沢クラブと、それぞれ初戦を迎える。

 昨年、激戦区の北海道大会を制した男子のLOCO SOLARE(ロコ・ドラーゴ)は3位、女子の北海道銀行は準優勝。一昨年は男子の北見協会(KiT CURLING CLUB)が準優勝。北海道選手権を制したチームの躍進が目立つ。今季の北海道を制した両チームは続くことができるのか。舞台は横浜へ移される。

敦賀心羽子(つるが・こはね)、2005年9月21日生まれ。札幌清田高校出身。叔父の影響でカーリングをはじめ、まだジュニア世代から国内トップチームに挑む。趣味は音楽鑑賞。 (C)北海道カーリング協会
敦賀心羽子(つるが・こはね)、2005年9月21日生まれ。札幌清田高校出身。叔父の影響でカーリングをはじめ、まだジュニア世代から国内トップチームに挑む。趣味は音楽鑑賞。 (C)北海道カーリング協会

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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