対日批判を強めた韓国の文在寅大統領が「100年」を連発して強調した理由
韓国で独立運動「3.1運動」を記念する式典が3月1日に行われ、文在寅大統領は演説で「日本を高強度に批判」(『聨合ニュース』)した。
平昌五輪で強調していた平和ムードとは対照的な強硬姿勢を感じさせるだけに、日韓関係がさらに冷え込まないか心配になってくるが、その一方で『中央日報』が興味深い記事を掲載していた。
“100年”を5回も強調
「文大統領、“大韓民国建国100周年”を強調…“100年”5回登場」という見出しの記事だ。というのも文大統領は前出の演説でこう述べている。
「新しい国民主権の歴史が大韓民国建国100周年に向かって再び書かれ始めた」
『中央日報』の記事では「記念辞では“大韓民国建国100周年”、“100年の時間”、“臨時政府樹立100年”など“100年”という単語が計5回登場した」と紹介している。文大統領は、韓国臨時政府が樹立した1919年を韓国の建国年として強調したわけだ。
来年2019年が韓国の建国100周年になるという話だが、この見解は日本と大きく異なっている。
日本の外務省ホームページに記載されている韓国の「略史」には、「1948年大韓民国成立」と明記されているのだ。
韓国が建国したのはいつ?
そもそも韓国国内でも、韓国の建国年については意見が分かれている。
結果的に廃止となったが、国定の歴史教科書が韓国建国年を「1948年」と定めたときなどは、大きな社会問題になったこともあった。
(参考記事:韓国の歴史教科書が「大韓民国樹立」を“1948年”に確定し、大混乱!! 一体何が問題なのか?)
ちなみに、前の大統領である朴槿恵は、文大統領とは意見が異なる。朴前大統領は2016年8月15日の演説で「今日は71周年となる光復節であり、建国68周年を迎えた歴史的な日」と述べていた。
先日、懲役30年を求刑されて話題にもなったが、朴前大統領は韓国の建国を1948年としていたわけだ。
(参考記事:逮捕から6カ月過ぎても容疑を否認…朴槿恵が韓国の裁判に“絶望”している理由)
つまるところ、韓国が建国された年に対しては、韓国国内にも“1919年派”と“1948年派”が存在することになる。日本では「韓国は政権が変わると合意も変わる」などと皮肉るが、歴史も時の大統領の見解によって変わっているのが現状なのである。
文大統領の人気は高く…来年が建国100周年に
『中央日報』は現状を以下のように説明している。
「金大中、盧武鉉政権までは1948年を基準にした光復節(8月15日)が建国日だった。 金大中政権は1998年に“建国50年ぶりに国難に陥った”として、“第2建国委”を設立したりもした。
進歩陣営を中心に、徐々に“1919年の臨時政府樹立が建国”という主張が強まった。そして2008年の李明博政権時代、光復会と民主党議員たちが加わり、建国60周年という用語を使用しないように圧迫した。建国節は以後、保守と進歩陣営の争点になった」
こういった事情があるだけに、政権によって建国年が変化するわけだが、現状のまま行けば来年は韓国建国100周年になりそうだ。
文在寅大統領は今現在もそれなりに高い支持率をマークしており、支持者たちが大統領の誕生日を祝って地下鉄の駅に広告を出すほどでもある。
(参考記事:文在寅大統領への「誕生日お祝い広告」は是か非か…支持者たちが自腹を切って各地に掲載)
そういった支持基盤を追い風にしながら、「100年」を強調した文在寅大統領。いずれにしても、韓国国内では建国年をめぐっても再び議論が起こりそうだ。果たして来年が韓国の建国100周年になるのか。注目してみたい。