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WBCミドル級チャンプ、29カ月ぶりのカムバック

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Amanda Westcott/SHOWTIME

 WBCミドル級王者のジャーモール・チャーロが29カ月ぶりにカムバックし、10回判定勝ちを収めた。スコアは100-90、99-91、98-92であった。

 対戦相手に選ばれたのは、この日の興行でメインを務めたWBCスーパーミドル級暫定王者のデビッド・ベナビデスの実兄、ホセ・ベナビデス・ジュニア。元WBA暫定スーパーライト級王者である。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 今回のジャーモール・チャーロとホセ・ベナビデス・ジュニア戦は、163パウンド契約だった。しかし、前日計量でチャーロの体重は166.4パウンド。ベナビデスは161.2パウンドであった。

 両陣営が試合決行に合意したものの、サイズの差は如何ともし難かった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 チャーロは体重差を生かし、334発のジャブを放って35%の116発をヒット。279発のパワーパンチを繰り出し、そのうち46%の127発を当て、自身の戦績を32戦全勝22KOとした。

 再起後、チャーロは言った。

 「俺はもっと強くなって戻ってくる、それだけは覚えておいてくれ。ラウンドを重ねる度に、これまでに経験したすべてについて考えた。神が力を与えてくれたんだ」

 そして、こんな言葉も吐いた。

 「過去を乗り越えられて幸せだ。己の可能性を自分に示せた」

 チャーロは暴行容疑で逮捕・起訴されたり、メンタルを病んだりしたからこそ、ブランクを作らねばならなかった。その挙句に体重オーバーとは、評価できる筈もない。

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 一方、敗者は語った。

 「チャーロは良いファイターだ。言い訳はしない。自分は戦うためにリングに上がった。彼は俺が後退すると言ったが、下がらずに前進を続けた。今夜はベストの男が勝った。それがボクシングだ。

 ジャッジの採点よりも接戦だと感じた。結局のところ、俺は負けた。彼がオーバーした体重が、勝敗と関係があるか否かは分からない。俺は全力を尽くしたよ」

Amanda Westcott/SHOWTIME
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 WBCミドル級のベルトを保持しながら、タイトルマッチにはせず、ミドル級リミットである160パウンド+3パウンドの契約も守れなかったチャーロ。確かに彼は勝者となったが、終盤にはかなり動きが鈍っていた。手放しで喜べる復帰ではない。

 むしろ、体重超過の相手を受け入れ、「言い訳はしない」と語った敗者に男らしさを感じた。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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