北條選手が公約通り「1軍から来た選手に負けない活躍」で5打点!阪神ファームは貯金10です。
きのう29日から1軍はセ・パ交流戦が始まりました。まずソフトバンクを甲子園に迎えた阪神ですが、メッセンジャー投手の力投を援護できず惜敗。相手よりも多い8安打プラス四球を7つも貰っていただけに…悔しいですねえ。その点、同じ29日の鳴尾浜ではファームが相手・広島の出鼻をくじく速攻!余裕で逃げ切りました。
これが今季ちょうど50試合で、28勝18敗4分けと貯金が10になっています。24日に16年ぶり3試合連続完封勝利を挙げたあと、遠征の中日3連戦の間にまた「○○年ぶり」がありました。まず25日に勝って3年ぶりの貯金9となり、26日も勝って今度は2010年9月15日以来8年ぶりの貯金10。27日は負けたので1つ後退したものの、きのう29日の勝利で再び10に戻したわけです。ちなみに8年前はリーグ優勝でしたよ。はい。
なお、きょう30日は早朝から本降りの雨になったため朝8時半に中止が発表されました。先発は、高橋建投手コーチから「雨男です」と予告があった望月惇志投手で、「彼もずっと1軍を想定して投げてくれているので、1軍のぬかるんだマウンドを考えて投げるでしょう」と高橋コーチが話していたものの、ぬかるみでは済まなかったようで残念。次は遠征のソフトバンク戦になるみたいですね。
今季50試合目は速攻で快勝!
では30日のウエスタン・広島戦の詳細をご紹介しましょう。この日は1軍から伊藤隼太選手、板山祐太郎選手、熊谷敬宥選手の3人が参戦しました。伊藤隼選手と熊谷選手は3打席目を終えたところで交代したけれど、板山選手は5回に3打席目が回ってきてもそのまま守備に。三振、三振、二飛、おまけに守備でエラーもあったので、追加の4打席目だったのでしょうか?そこでヒットを打って甲子園へ移動しました。そのあたりの話はのちほど。
打線が1回から4点を取り、2回も4点!その8点で終わったものの、北條史也選手はタイムリー二塁打と3ランで計5打点です。先発の馬場皐輔投手は6回で92球を投げ、3安打1失点(自責0)で毎回の9三振を奪いました。相変わらず13.846と高い奪三振率ですね。そのあとは呂彦青投手が2安打ながらソロ2本で2失点。でも最初に書いた通り、余裕の勝利ですね。
《ウエスタン公式戦》5月29日
阪神-広島 12回戦 (鳴尾浜)
広島 000 010 101 = 3
阪神 440 000 00X = 8
◆バッテリー
【阪神】○馬場(3勝1敗)-S呂(1敗1S)/ 坂本-小宮山(7回~)
【広島】●塹江(1勝4敗)(2回)-平岡(3回)-飯田(2回)-中田(1回) / 中村奨
◆本塁打 神:北條4号3ラン(塹江)
広:坂倉1号ソロ、メヒア2号ソロ(呂)
◆二塁打 神:西岡、北條
◆盗塁 神:伊藤隼(1)、陽川(5) 広:桑原(6)
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率
1]中左:高山 (4-3-0 / 1-0 / 0 / 0) .364
2]指:西岡 (2-2-1 / 0-0 / 0 / 0) .267
〃打指:荒木 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .212
〃打指:小豆 (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .250
3]左:伊藤隼 (1-0-1 / 0-1 / 1 / 0) .333
〃中:島田 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .243
4]二:板山 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 1) .280
〃二:森越 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .200
5]三遊:北條 (4-2-5 / 0-0 / 0 / 0) .238
6]一:陽川 (4-1-1 / 2-0 / 1 / 0) .212
7]右:俊介 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .211
〃右:緒方 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .206
8]遊:熊谷 (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .212
〃三:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .237
9]捕:坂本 (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .290
〃捕:小宮山 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .300
※小豆=小豆畑
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
馬場 6回 92球 (3-9-1 / 1-0 / 2.08) 149
呂 3回 41球 (2-3-1 / 2-2 / 4.50) 143
《試合経過》※敬称略
まず打線は1回、ショート内野安打で出た高山が西岡の左中間へのタイムリー二塁打で生還!あっという間に先制します。送球の間に西岡は三塁へ、伊藤隼が四球を選び板山の三振で二盗を決めて1死二、三塁。5番・北條がボールスリーからの4球目(143キロ)を左翼線へ2点タイムリー二塁打!さらに陽川が左前タイムリーと4安打で4得点です。
2回も先頭の坂本が左前打、高山と西岡が中前打と3連打で無死満塁。次の伊藤隼が左犠飛で1点を加え、2死後に北條が今度は初球(149キロ)をセンターバックスクリーンへ放り込んでいます。ちょうど1週間ぶりの第4号が3ラン!この回も4安打で4点が入り、広島の先発・塹江から2回で8点を取りました。
ただし、2人目の平岡からは4回に高山が右前打しただけ。6回から登板した飯田からも7回に代打・小豆畑が四球を選び、4打席目を迎えた板山が右前打を放ったものの、追加点はなし。そして8回も中田の前に三者凡退で終わっています。
一方の投手陣。先発の馬場は1回が2死から1四球与えただけ。2回は1死から6番・岩本に左前打されるも、アウトは3つとも三振で無失点。3回は庄司をセカンドの送球エラーで出しましたが後続を断ち、4回は三者凡退。しかし5回、1死から右前打された8番・中村奨を自身の牽制が悪送球となって三塁まで進めてしまい、続く桑原の右前タイムリーを許しました。桑原に二盗を決められたあとはしっかり抑え、6回は三者凡退で締めて交代。
7回からは呂と小宮山のバッテリーで、その7回は先頭を三振に仕留めたあと7番・坂倉に0-2と追い込んでからの4球目、138キロの真っすぐをセンターへ…。バックスクリーンにあたる今季1号ソロを浴びました。そこからは簡単にアウト2つを取り、8回は1四球のみで無失点。ところが9回にも先頭のメヒアに、今度は1ボールからの変化球をセフトへソロホームラン。残り3人はピシャリと抑えただけにもったいないですね。
「1軍でもいけそうな感じは出てきたかな」
試合後の話は矢野燿大監督から。まず馬場投手についてです。「全体的に見て先発の責任というか、イニングとか失点も含めてしっかり投げ切れた、続けてできたっていうのは、また一段上がったと思うし。その中でももちろん課題はまだあるからね。この調子を続けていきながら、1軍に上がっても“これで大丈夫”と自信を持っていけるようにやっていってくれたらなと思う」
いつも言われる、1軍で通用するかどうかという点は?「まあまあ、それなりにやっていけそうな感じは出てきていると。調子自体はこの前の方がよかったけど、ゲームを壊すようなことはないかな。あとランナー出てからの課題ってのは、きょうも盗まれて何本か走られているのがあるように、タイミングが同じになったり、ワンパターンの感じでポンと投げていっているのがあるので。そういうところで、1個の盗塁から自分の投げるタイミングがずれたり、ボールになってリズムが壊れることもあるからね」
続けて「そこはまあ課題だと思うけど、全体的には勝負できる、1軍でもいけそうな感じは出てきたかな。あとはまだわからんけどね、打席にも立っていないし。やっぱりセ・リーグではそういうことが1軍に行けば当たり前なんで。まだやることはあると思う」と矢野監督は言っていました。
もっと真っすぐを投げてほしい、という方向性は変わらず?「俺の中ではもっと(真っすぐで押して)いってもいいと思っているんやけど、それでもやっぱりアイツが自信あるのは変化球で、それを生かすため、プロで長くやるため、先発として3巡目からを抑えるためってのを考えると、押していかないと引けない。ある程度のスピードが出て三十の中盤から技巧派に変わることはできても、今からかわしていたら魅力がないし」
もちろん「できないヤツには言わないでしょ?その球があるピッチャーだから。そこはもっと、今よりももっと意識してもいいんじゃないかなと思っている」とつけ加えています。できるからこその注文ですね。
70%超えのストライク率を評価
次いで高橋投手コーチにも馬場投手の話を聞きました。なおこの日は馬場投手と呂投手2人で、1試合を賄う予定だったそうです。そして「馬場は目安にしていた5回が終わったところで80球だったので、もう1回となった。92球というのは予定通りですね」と高橋コーチ。
投球を振り返って「抑揚、緩急、よかったですね。ストレートは、ここってとこで力入れて三振を取っていたし、監督から“力強い真っすぐを”と要求されている中、そういうのも見せられて、よかったのではないかな」と評しています。148キロ、149キロで三振を奪う場面が印象的だったと伝えたら、高橋コーチも「あえて意識して力強い球で三振を取りにいっているのが現れていましたね。フワッとしていないんですよね。しっかり(指に)かかっているので、ボールの強さをバッターも感じたでしょう」とのこと。
「こちらも継続してほしいと伝えているし、本人も1軍のキャンプで自分のパフォーマンスができなかったけど、ここへ来て力強さが出せていって、プロでやっていけるという思いも出てきたのでは。それとフォアボールが少ないでしょう?きょうが1つで、前も1つだけ。ストライク率が前回も今回も70%を超えています。ストライクで勝負できる1つの証拠でもありますね。崩れにくいっていうところを見せてくれている」
今を投げることが大事、と馬場投手
では馬場投手本人のコメントです。この日は「ストレートを多めに投げた感じです。ストレートにこだわりました。なるべく低め、低めにと。一発もあるので、外の低め、内の低めのストレートを大事に」というピッチングだったようです。
「ストレートでファウルを取ったり、カウントを取れると2ストライクに持っていきやすい。自分のペースになる。そこが課題。そこを突き詰めていかないと、変化球が生きないので。次もその課題と向き合っていくのが大事だと。外のストレートのストライク率が増えたかなと思います」
1軍でもいけそうな感じが出てきたという矢野監督の話にも「まずは次の試合で投げるのを意識しています。変に先を見ず、与えられたチャンスを確実にして、ケガをしないように」と馬場投手。地に足をつけて結果を残し、そしていつかは…ということでしょうね。「今を投げることが一番大事なので」という、最後のフレーズがとても心に残りました。
球のキレが出てきた呂投手
また呂投手は、2本のソロについて「1本目は2ストライクだったので少し真ん中に入ってしまって…失投でした。2本目は1ボールで、相手がいいバッターとわかっていたので変化球でストライクを取りにいったところで打たれました。チェンジアップです」と振り返っています。
矢野監督が「点取られたけど、ちょっとずつキレは出てきているかなと思う。球のスピードも、変化にしてもキレているというようなものが増えてきた。今後もなるべく球数やイニングを投げさせたいなと思う。順調に来ている。あとは細かいコントロールだけど、まずはちょっと力が出始めたかな。楽しみ」と言っていたことを伝えると「ブルペンで調子はよかったです。試合での感覚はこれからつかめるようにしていきたい」と呂投手。
3イニング投げると、短い時とは違う取り組みができるかと聞いたら「1イニングの場合は、その日ベストのボールを投げますが、長くなると悪かったボールも悪いなりに、どうやって修正するかをテーマにやっています」と答え、最後に先発したいですね?と言うと「はい、投げたいです」と原田通訳も一緒に笑顔を返してくれました。
見事な2安打!と北條選手を絶賛
今度は野手について、またまた矢野監督の談話をご紹介します。まず北條史也選手には「北條は内容もずっといい。率が3割あるとかじゃないんだけど内容がずっといいし、今だったら1軍でもしっかり勝負できていけるようなバッティングが多い。きょうなんて本当に見事!3ボールから一発で仕留めて、次も真っすぐをワンスイングでホームランにした。しかも飛んでいるのがセンター方向っていうのは、いい打ち方やし。最近センターから少し逆方向だったり、そういうところに北條らしいヒットが出始めているから」と絶賛。
「この状態を、上からチャンスもらえるまで何とか。何とかというか、これが当たり前っていうレベルにまでね、なっていくべきやと思う。北條は前から言っているけど、練習を見ていても一切“抜く”ってことをしないヤツだから。そういうのが結果として出てくれたら俺らも嬉しいし、きょうは本当に素晴らしい。最後のスピーチにしても、あれで喜んで帰ってくれる人が増えただろうし、北條のファンじゃない人でも“北條を応援したいな”と思ってくれるんだったら最高にありがたいし。よかったんじゃないかな」
さらに「アイツも一生懸命、右の方に打ったりセンターへ打ったり足の上げ方も打球の方向の意識もあって、きょうみたいな一発で仕留めるぞと強く振る時はああいうふうにね。いい意味で意外性というか、はまればホームランっていうがあるのも、北條にとってプラスになる。まあでも一番は広角に、しぶといバッティングっていうのが北條だと思うから。続けていってほしい」と、とびきりのエールです。
板山は最後に打ててよかった
次に、3安打の高山俊選手に、矢野監督は「俊ももう、ここではやっぱり当たり前というか、ある程度ね。最後も、アイツの中で意気込んで左ピッチャーを打ちにいった。結果は出なかったけど、貪欲にもう1本打ちにいくっていう姿勢が出ていた。全部は打てないものだけど、でもここでは全部ヒットを打つんだというくらいで、ちょうどいいと思う」と、ファームにいる間は全打席ヒットという気持ちで臨めとの指令です。
そして最後に聞いてみました。板山選手の4打席目は追加ですか?「追加というか、アイツもあのままじゃ帰れんでしょ。本人の気持ちとしてね、上ですぐ結果が出るように。何のために来てるかって1軍のための準備だから、内容がなく終わってしまうと不安のまま試合に入っちゃうんで、最後に1本出てホッとしていると思うし。またフラットな気持ちで、1軍でチャンスをもらえた時も打席に向かえると思うんで、いい1本やった」
そこで囲み取材終了となったのですが、ちょうど通りかかったのが岡崎太一選手でした。すると矢野監督が「太一の温存だけがね、申し訳なかった」とニヤリ。いえいえ、と笑いながら歩いていく岡崎選手に「もしかして代走もありかなと、ちょっと期待したんですけど」と言ったら「板山のとこで代走にいくつもりでした(笑)」と。いい返しをありがとうございます!
「早く1軍に上がってインタビューを受けたい」
お待たせしました。締めは北條選手です。1回の2点タイムリー二塁打も、2回の3ランもファーストストライク!「そうですね。朝の練習前から、真っすぐの速いピッチャーなので振り負けないというか、一発で仕留めるっていうのが、ミーティングでありました。それができてよかったと思います」。打球方向に関しては「センターに打ったこと、あんまりないんで。きょう(のホームラン)は自分でもビックリしています」とのこと。
どのように準備を?「前のバッターの時や、ベンチとかネクストで、変化球でストライクが取れるな、甘いボールは取れていないな、そういうのを見て狙い球を決めるって感じでやっています」。それは矢野監督の影響?「超積極的をテーマにやっている中で、それができるには準備をしっかりしないと、という話もありました。そこから、よりしっかりしようと思って」
今なら1軍で勝負できる、と矢野監督が絶賛でしたよ。「この、いい調子を維持していかないと。急に呼ばれたりすることもあるので、その時に調子が悪かったり結果が出ていなかったら、違う選手が行くことになる。維持していきたいです」
なお試合終了時に、新井良太コーチからマイクを手渡された北條選手が担当したヒーロースピーチは以下の通り。
「お疲れ様でした。きょうも平日にもかかわらず、多くのファンの皆様に来ていただいて、ありがとうございます。ちょっと暑くなってきたので、僕たちもそうですがファンの皆様も、しっかり水分補給をして熱中症には気をつけてください。きょう試合に臨む前のテーマとして、1軍からお手伝いが来ていたので、それに負けないくらいの活躍をしようと決めていました。それができたので本当によかったです。早く1軍に上がってインタビューを受けたいと思います!ありがとうございました」
きょうもナイススピーチだった、矢野監督も褒めていたと告げたら「ほんまっすか?きょうは、なんか…学校でやる“きょうの感想”みたいでしたね」と笑う北條選手。夏休みの絵日記のようだと思ったんですが、なるほど学校で帰る前にやる『終わりの時間』とか『ホームルーム』の雰囲気かも。さあ次も期待していますよ。あ、次は1軍でのヒーローインタビューがいいですね。
<掲載写真は筆者撮影>