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適応障害という診断名に、さほど大きな意味はありません。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


今日は、「適応障害という診断名に、さほど大きな意味はありません」というお話をします。

私は、心理カウンセラーをしていますが、精神医学に詳しいということもあって、私のカウンセリングルームに通われてらっしゃる方の半数近くは、同時にクリニックにも通われています。

適応障害は、ストレスから発症する心の病です。
適応障害になると、情緒面で言えば、うつうつとした気分、不安でいっぱい、イライラなどの怒り感情が沸いてくる、いてもたってもいられない焦りの気持ち、理由もなく緊張する、等が表れます。行動面で言えば、暴飲暴食をする、仕事や家事が手につかない、無断欠勤をするようになる、車で無謀な運転をする、些細なことで人と喧嘩する、等が表れます。また、適応障害は、情緒面や行動面だけではなく、身体面にも症状が出ることが多いです。心臓がドキドキしたり、変な汗をかくようになったり、手が震えたり、めまいを覚えたり、頭痛や腹痛がしたり、等です。

ときどき、私のルームには、病院の先生から「適応障害といわれました」と仰るクライアントがご来室されますが、実は、適応障害という診断名に、さほど意味はありません。「意味はないってことはないだろう」と思われるかもしれませんが、本当です、意味はありません。精神医療の特徴です。他の科ではそんなことは考えられません。精神科以外の他の科では、しっかりと診断をして、それから治療にあたるので、診断名に意味がないことはないです。でも、精神科では診断名そのものには意味がないことが多いのです。

精神・神経科、心療内科では、会社に行けなくなった人のことを「会社に適応できなくなったのだから、適応障害だろう」ということで、暫定的に適応障害という診断名をつけることがありますし、学校に行けなくなった人のことを「学校に適応できなくなったのだから適応障害だろう」ということで、暫定的に適応障害という診断名をつけることがあります。

だから、同じ適応障害と言われたクライアントでも、皆さん、飲んでいる薬は違っていたりします。それが普通です。私は、診断名だけではよくわからないので、クライアントが飲んでいる薬を見せてもらうようにしています。そうすれば、適応障害と診断した医者がどのような見立てでクライアントを治療しようとしているか、概ね見当がつきます。

同じ適応障害と言われたクライアントでも、抗精神病薬を飲んでいる方もいれば、抗うつ薬を飲んでいる方もいれば、抗不安薬を飲んでいる方もいれば、ただ睡眠導入剤だけ飲んでいる方もいるということです。

私にとって、クライアントがどのような薬を飲み、症状がどのように変化しているのか、という情報は極めて重要です。

適応障害は、ストレスから離れると症状が落ち着くものです。会社がストレスで適応障害になった方は、会社を休めば、会社を辞めれば、症状が消失するものです。よって、適応障害と診断されたにも関わらず、会社を休んでも会社を辞めても症状が消失しない方がいらっしゃいましたら、それは適応障害ではない可能性が高いということになります。

ストレスがなくなっても、症状が消失しなかったら、診断名は、適応障害から、統合失調症とかうつ病とか双極性障害とかに名称が変わっていくことが多いです。これは、最初の診断が間違っていたという意味ではなく、最初は、医者でもよくわからない…ということです。

そいう、ストレスから離れて、薬を飲んで、数カ月経たないと、どうして症状を発症させたのか、よくわからないのです。だから、取り敢えず「適応障害という診断名をつける」という行為が行われるのです。

適応障害の方は、ストレスから離れると、少なくとも半年と経たず、症状を消失させることが多いです。でも、またストレスの感じる職場に戻ると、再び、適応障害を発症させてしまいます。よって適応障害の方には、ストレスから離れる、ストレスを浴びないようにする、もしくはストレスをストレスとも感じない強靭な心、もしくはしなやかな心を持つことが必要となります。

私は決して薬否定派のカウンセラーではないのですが、適応障害は、お薬だけでは良くなりません。お薬はその場しのぎ、あくまでも対症療法的な治療法であり、根本解決は、環境の改善もしくは性格改善となります。

お薬を飲んでも良くならない、適応障害かもしれない…と仰る方は、1度精神医学に詳しいカウンセラーの許を訪ねてみてはどうでしょうか? 私の印象ですが、お薬だけで良くなる方は2割ぐらいです。残り8割の方は、環境を改善されるか、自らの性格を改善させなければ、病気の症状からは、脱することが出来ないと思います。

というわけで、今日は以上です。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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