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デビュー4登板目のルーキーが惜しくも逃した2つの記録。「マダックス」と「奪三振も与四球もゼロの完投」

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェイコブ・ニックス(サンディエゴ・パドレス) Aug 10, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月28日、ジェイコブ・ニックス(サンディエゴ・パドレス)は完封まで2アウトに迫りながら、ネルソン・クルーズ(シアトル・マリナーズ)に本塁打を打たれ、そこでマウンドを降りた。

 ニックスは22歳。メジャーデビューから1ヵ月経っておらず、この日が4登板目だった。リードが2点から1点に減ったことからすれば、交代に異論を唱えるつもりはない。代わって登板したカービー・イェーツが2人を討ち取り、ニックスは2勝目を手にした。

 だが、ニックスは79球しか投げていなかった。また、クルーズに続く2人を計6打席ともアウトにしていた。しかも、パドレスの地区最下位はほぼ確定している。この試合に勝つことは、それほど重要ではなかった。

 1点を失った時点で、ニックスの「マダックス」、先発投手による100球未満の完封(9イニング以上)は潰えた。けれども、そのまま投げていれば「奪三振も与四球もゼロの完投」という可能性はあった。

 先日、「マダックスより多くの「マダックス」を記録する投手は出てくるのか」で書いたように、今シーズンは2人が「マダックス」を記録している。一方、ベースボール・リファレンスで調べたところ、21世紀に入ってから――正確には1995年以降――の「奪三振も与四球もゼロの完投」は、2006年5月1日のジョエル・ピネイロと2014年7月1日のリック・ポーセロ(現ボストン・レッドソックス)しかいない。ニックスは、ポーセロ以来の「8イニング以上を投げて奪三振も与四球もゼロ」となった。

 奪三振がないことをどう評価するかはさておき、珍しい記録であることは間違いない。ちなみに、ポーセロは「マダックス」と「奪三振も与四球もゼロの完投」を同時に記録した。ピネイロは2点を失って106球を費やしたが、ポーセロは無失点のまま95球で試合を終わらせた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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