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ワールドカップ・サモア代表戦後の日本代表・山田章仁、技ありトライと退場を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
大会きっての名トライを創出。「日本人は痒い所(相手の急所)に手が届く」が持論。(写真:アフロ)

ラグビー日本代表は10月3日、4年に1度あるワールドカップのイングランド大会の予選プールB・サモア代表戦に挑んだ(ミルトンキーンズ・スタジアムmk)。結果は26―5で勝利。最大のハイライトは前半終了間際、ウイングの山田章仁によるトライだった。

敵陣ゴール前の連続攻撃のさなか。右タッチライン際でプロップ畠山健介から丁寧なパスを受け取ると、サモア代表のウイングであるアレサナ・ツイランギ副将と1対1になった。公式記録では山田より「4センチ、21キロ」も大きな相手を前に、一度、立ち止まり、身体の軸を回転させる。強烈なタックルに打って出るツイランギを置き去りにした。フルバックの五郎丸歩副将のコンバージョン成功もあり、日本代表は20―0でハーフタイムを迎えた。

この日の山田は、キックの捕球やカウンターアタックでもスキルを発揮した。守備でも献身的にタックルしたが、後半16分、相手に突き刺さる際に頭を強く打った。身動きのとれぬままタンカで運ばれ、周囲を心配させた。

もっとも、試合後は身なりを整え取材エリアに登場した。エディー・ジョーンズヘッドコーチは「軽症。あとは脳震盪のプロトコル(提示された安静期間。国際ルールでは7日間の休養が義務付けられている)に従うだけ」と、11日のアメリカ代表戦(グロスター・キングスホルムスタジアム)には出場可能との見方を出した。

30歳の山田は国内屈指の花形選手。高く飛び上がったり、相手の目の前で回転したりと、慶應義塾大学時代から奇抜な走りでファンの喝さいを浴びてきた。2010年度にホンダから三洋電機(11年度からパナソニックに名称変更)に加入すると、日本最高峰のトップリーグで3度の優勝。いずれの折も短期決戦のプレーオフでMVPに輝いていた。初出場のワールドカップは「発表会」と捉え、「トライを取りたい。結果が全てなので」と意気込んでいた。

以下、サモア代表戦後の山田の一問一答の一部。

――きょうはどう戦おうとしていたか。

「フィジカルが激しい相手に、最初から負けないように仕掛けて行こうと。いいスタートが切れたと思います」

――(当方質問)まず前半初頭、グラウンド中盤右。フッカー堀江翔太副将が相手守備網の裏へ低い弾道のキックを蹴ります。それを追いかけた山田選手は、カバーに入ったフルバックのティム・ナナイウィリアムズ選手をタッチラインの外へ。キックチェイスで、チャンスメイクをしました。

「(堀江副将と)お互いコミュニケーションを取れたプレーだと思いますね」

――(当方質問)右奥へのキック。多かった気がします。チームとしての狙いはあったのですか。

「ありましたね。フミさん(スクラムハーフ田中史朗)、翔太から、そこは狙って行こうという話がありました」

――(当方質問)山田選手の対面であるツイランギ選手の背後を突く、と。

「相手が大きい分、クイックなムーブで狙って行こうみたいなことは、考えてました。

しっかり準備したことが結果に繋がったと思います」

――(当方質問)前半3分。中盤からカウンターアタックを仕掛け、次々と相手をかわしていきました。

「本当は最後の1人も抜きたかった(トライラインまで走り切りたかった)んですけど、まぁ、よかったかなと思います。チームに勢いをつけたかったので」

――トライシーンは、どうだったのですか。 

「(連続攻撃の途中で)チャンスが来そうな匂いはしていた。フミさん、翔太を中心に、皆とコミュニケーションは取るようにしていましたね」

――(当方質問)ツイランギと1対1になった瞬間、しばし、立ち止まってから回転しましたね。

「ちょっと、(球をもらった場所から)トライラインまで距離があった。外に勝負したら(ツイランギの腕力で)タッチラインの外に押し出されるかな、と。で、向こうが前に出てきたところ、上手く身体を使えましたね」

――ぶつかる手前で、おそらくつま先を軸に身体で弧を描くように直進。あの場面でよく思いついた。

「あれは、身体の反応です」

――(当方質問)あのトライ。一生、語り継がれるでしょう。

「ああいうトライを準備して、練習してきたので、こういう発表会で出せて嬉しいですね」

――大会を通じて、見事なタックルを重ねています。

「まぁ、この大会に限らずですけど、しっかりやっていきたい。特にワールドカップは、どうしても勝ちたい試合ですから、(より)身体を張りたいな、と」

――倒れる直前は、相手の身体と地面の挟み撃ちになりやすい「逆ヘッド」でタックル。その前から、ふらついてたようにも映りました。

「ふらついてたイメージはないんですけど…。多分、疲れてたんですかね。(退場する前は)多分、(頭は)打ってなかったです」

――(当方質問)改めて、頭を打った瞬間は。

「僕のなかでは一瞬だったという意識なのですが、後で聞いたら…(数分、試合が止まった)。頭はちょっと、打った感じがありましたね」

――大丈夫だったのか。

「まぁ、タンカに乗った時は皆の会話も聞こえましたし」

――勝利の実感はありますか。

「終わった時は医務室にいたんで、皆と喜びを分かち合いたいなとは思いましたけど」

――(当方質問)あなた1人では決められないのでしょうが、次は、大丈夫ですか。

「どうなんですかね。僕的には大丈夫なんですけど。チェックは色々しまして、問題はないということでした」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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