ジダンの扉を叩く者。アクラフがレアル・マドリーのサイドバック競争に名乗り。
レアル・マドリーの熾烈なポジション争いは、ディフェンスラインにまで波及している。
チャンピオンズリーグ3連覇という偉業を成し遂げたレアル・マドリーにおいて、最終ラインは確立されていた。ダニ・カルバハル、ラファエル・ヴァラン、セルヒオ・ラモス、マルセロの4選手に対するジネディーヌ・ジダン監督の信頼は厚かった。
だが、いま、その「ジダンの扉」を叩こうとする選手が出てきている。ボルシア・ドルトムントにレンタル加入中のアクラフ・ハキミである。
■マドリーのカンテラーノ
モロッコにルーツを持つアクラフはマドリードのヘタフェで生まれた。2006年にマドリーのカンテラに入団すると、みるみる力をつけていき、順調にステップアップしていった。
アクラフたちはマドリーのカンテラの「黄金世代」だった。16-17シーズン、グティ監督(現アルメリア)が率いた高校生年代相当のフベニルAはリーグ戦、王者決定戦、カップ戦で優勝して3冠を達成。アクラフ、オスカル・ロドリゲス、ルカ・ジダンとタレントが揃っていた。
そして、アクラフは2017年10月のエスパニョール戦でにトップデビューを飾る。その試合後、ジダン監督は「デビュー戦とは思えない出来だった」と舌を巻いた。
しかし、実は2016-17シーズン開幕前にアクラフは移籍に迫っていた。出場機会を積む目的で、アラベスにレンタル放出される予定だったのだ。だがフロレンティーノ・ペレス会長が移籍金固定額3000万ユーロ(約36億円)でダニーロのマンチェスター・シティへの売却を決め、状況が一変。アクラフの移籍にブレーキがかかった。
■カルバハルとの競争
一旦はマドリーに残留した。それでも期待していたほどのチャンスには恵まれず、アクラフは2018年夏にボルシア・ドルトムントにレンタルで移籍する。ドイツで迎えたセカンドシーズン、今季は公式戦42試合出場9得点10アシストを記録している。ドルトムント移籍後、右サイドバック、左サイドバック、右サイドハーフ、左サイドハーフと複数ポジションをこなせるようになり、プレーの幅を広げた。
アクラフのように、新天地をドイツに求めて成功したのがカルバハルだ。カルバハルは2012年夏にレヴァークーゼンに移籍。2012-13シーズン、公式戦36試合出場1得点8アシストを記録した。2013年夏にマドリーが買い戻しオプションを行使し、650万ユーロ(約7億円)が支払われて復帰が決定した。
ただ、現在、他ならぬカルバハルがアクラフ復帰の障害になろうとしている。2013年夏にマドリーに戻って以降、カルバハルは不動の右サイドバックとなってきた。ダニーロ、アルバロ・オドリオソラ(バイエルン・ミュンヘンにレンタル中)がカルバハルの競争相手に選ばれた。だが定位置を奪える者はいなかった。
「試合を通じて、スプリントを繰り返せるのが、アクラフの特徴だ。ほかの選手のパフォーマンスが落ち始めたところで、そういった能力を維持できる。アスリートタイプのプレーヤーで、即戦力になれる選手だ」
育成年代でアクラフを指導したルイス・ミゲル・ラミスは太鼓判を押す。
マドリーは28歳のカルバハルの後釜を見つけなければいけない。今季、フェデリコ・バルベルデの台頭で、世代交代の流れができた。決断の時が迫っている。