NHKテレビが1番、新聞2番…メディアへの信頼度をさぐる(2023年度版)
多様なメディアに囲まれた日常生活。各メディアからの情報を人々はどこまで信頼しているのか。主要メディアへの信頼度の実情を財団法人新聞通信調査会が2023年10月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の報告書から確認する。
主要メディアとしてNHKテレビ、新聞、民放テレビ、ラジオ、インターネット、雑誌を提示し、それぞれのメディアの情報をどの程度信頼しているかについて、「全面的に信頼…100点」「まったく信頼していない…0点」「普通…50点」の基準のもとに点数をつけてもらったところ、平均点がもっとも高かったのはNHKテレビで、67.0点となった。
情報に関して信頼されているか否かの点では、NHKテレビが今なお高い信頼を受けているのが分かる。
NHKテレビに続く新聞は66.5点とおおよそ同じ値。そして民放テレビが61.8点と続く。同じテレビでも民放テレビはNHKテレビと比べて5.2点も低い値にとどまっており、情報の信頼性における両者の違いを改めて実感させられる。
NHKテレビ、新聞、民放テレビの後にはラジオ、インターネット、雑誌と続くが、インターネットと雑誌は50点未満。50点が「普通」の基準なので、インターネットと雑誌は情報全般に関して信頼されていないことになる。
これを属性別に見たのが次のグラフ。おおよそ順位に違いはないが、各属性における特徴が表れる形となった。
年齢が上になるに連れて各メディアへの信頼度もおおよそ増加するが、雑誌やインターネットは逆に減少する。そのため、テレビや新聞との差が大きく開くことになる。高齢層はテレビや新聞を「信奉」と表現してよいほどに信頼し、インターネットや雑誌を軽んじる傾向があることが複数の調査結果から知られているが、それが裏付けられる形となっている。
他方若年層はNHK・民放問わずテレビの値がいくぶん低めで(18~19歳は逆に高いが)、インターネットへの信頼度が高い。
最後に経年別。今調査は2008年度開始のため、都合16回分の動向が確認できる。
東日本大震災が発生した2011年3月以降初となる調査は2011年度分(2011年9月実施)だが、その際のラジオの値が有意に増加しており、震災報道でラジオが権威を回復したことが分かる。またNHKテレビも同様の動きを示している。他方民放テレビ、インターネット、雑誌は大きな減少が見受けられ、震災報道により信頼度を落としてしまっていることが分かる。
中期的な動きを見ると、一時的な踊り場を見せるメディアもあるが、いずれのメディアも信頼度を漸減している。NHKテレビは新聞と競る形で値を落とし、2019年度から2020年度にかけては新聞と順位が入れ替わる事態となった。2021年度以降は再びNHKテレビの方が新聞よりも高い値を示し続けている。
民放テレビは2018年度で大きく持ち直したがそこで息切れ。それ以降はほぼ横ばいの流れとなっている。
インターネットと雑誌は大きな減少の動きの中にあった。インターネットに関しては一連の「フェイクニュース」報道がインターネットの責にあるとの印象が強かったことを思わせる動きではある。もっとも両者ともここ数年では底打ちの気配が感じられる。
今件の信頼度のうちインターネットや雑誌は、玉石混淆な全体の状態を評価したものと考えられる。インターネットの情報すべてが信頼度の上で低いとの認識は、実態とはズレがあることを指摘しておく。ある特定の車種の自動車に大きな欠陥が見つかったとしても、自動車全体が欠陥品ではないのと同じである。
何しろ信頼度の高いNHKテレビや新聞社ですら、それぞれの媒体で提供している内容と同じ情報を、インターネット経由でも配信しているのだから。
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※メディアに関する世論調査
直近分となる第16回は2023年7月21日から8月20日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は2871人。有効回答者の属性は男性1377人・女性1494人、18~19歳53人・20代225人・30代324人・40代454人・50代515人・60代506人・70代以上794人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。
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