日本人初の米大学アメフト選手、庄島が公式戦デビュー
Text & Photos by: KIYOSHI MIO/All-American Sports
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のアメリカン・フットボール(アメフト部)に所属する庄島“ジオ”辰尭が、9月10日にカリフォルニア州パサディナで行われたUNLV(ネバダ大学ラスベガス校)戦に途中出場。アメフトでは日本人初となるNCAA(全米大学体育協会)のFBS(1部上位校)の公式戦でプレーした選手となった。
アメリカで最も人気のあるスポーツ、アメフト。プロリーグのNFLはアメリカ4大スポーツの中で唯一、日本人選手が誕生していない。アメリカ国内では、大学のアメフトはNFLに匹敵するほどの人気を誇り、プロ入り1年目から活躍する選手も多いほどにレベルも高い。これまでに日系アメリカ人で、大学アメフトでプレーした選手は数名いるが、日本生まれで日本国籍を持つ選手がプレーしたという記録はなく、庄島が初めてとなる。UCLAのスポーツ・ニュースを専門に扱う「ブルーイン・レポート」も公式ツイッターで、『ジオ庄島はNCAA1部でプレーした初の日本人選手となった』と伝えている。
東京都渋谷区で生まれた庄島は9歳のときに家族と共にロサンゼルス郊外へ移住。高校に入学した14歳のときに初めてアメフトをプレーしたが、「何人でプレーするのかも分からなかった」そうで、「試合のときはタイムアウト中にフィールドへ水を持っていくのが仕事でした」と言うほどのチームのお荷物的存在だった。
しかし、そこからメキメキと力を伸ばし、高校卒業直後にはU-19の日本代表に選抜。2年制短期大学のサンタモニカ・カレッジではキャプテンも務めて、チームをリーグ2連覇に導いた。
短大を卒業した1年前にUCLAへ編入したが、昨季は練習要員として経験を積み、今季は見事にロースターの座を勝ち取った。
身長190センチ、体重130キロの庄島のポジションはセンター。アメフトのプレーはセンターがクォーターバック(QB)にボールを渡すことから始まる。QBにボールを託した後は、襲い掛かってくる相手ディフェンスからQBを守ったり、ボールを持って走るランニングバックのための走路を確保したりと、縁の下の力持ち的な働きをする。
庄島は控えセンターで、UNLVとの試合でも出番が回ってきたのは42対21と大量リードを奪った試合終了間際。試合最後の3プレーを任されたに過ぎず、野球に例えれば10点リードの9回に守備固めに入った感じだ。
だが、どんな形であれ、日本人選手が試合に出たこと自体が偉業であり、日本アメフト界の金字塔なのだ。控えの立場であっても、大学フットボールの名門校であるUCLAのロースターに入ったことだけでも大きな評価を与えたい。
もちろん、庄島本人は満足しておらず、「試合に出られたことは嬉しいですし、誇りに思っていますが、フィールドに出た立ったことで課題が見つかりました」と最初に反省の言葉を口にした。「これからも努力を怠らずに、もっと信頼されて、フィールドを支配できる選手になりたい」とさらなる進化を誓う。
高校時代にウォーターボーイから日本代表入りするまで大きな成長を遂げた庄島ならば、UCLAでも大事な場面で使われるようになり、最終的にはスタメンの座を奪う日が来ることを期待したい。
これまでの庄島“ジオ”辰尭のストーリー
「素人」から名門大学へ登りつめた日本人選手庄島の挑戦 vol.1
「素人」から名門大学へ登りつめた日本人選手庄島の挑戦 vol.2
「素人」から名門大学へ登りつめた日本人選手庄島の挑戦 vol.3
「素人」から名門大学へ登りつめた日本人選手庄島の挑戦 vol.4
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試合後のインタビュー動画