盛山文科大臣が旧統一教会の関連団体から受けていた選挙応援 信者である関係者からの証言 どうみるべきか
旧統一教会への解散命令請求が、文部科学省により行われているなかで、トップである盛山正仁文科大臣が、過去に旧統一教会の関連団体から選挙応援を受けていたという驚くべき内容が報じられています。
推薦状を受け取っていた写真まで出てきています。しかも、この情報は、信者である関係者からもたらされています。この事態を私たちはどのように受け止めればよいのでしょうか。旧統一教会の元信者の目線から読み解きます。
野党からの厳しい追及に「うすうす思い出してきた」と答弁
この一件は、朝日新聞の記事が端緒になっています。そのなかで盛山大臣は次のように回答しています。
「2021年10月の選挙に際して、お尋ねの団体に選挙支援を依頼した事実はありませんし、事務所に活動報告があったことも確認できませんでした」
盛山文科相、旧統一教会系から選挙支援 21年衆院選 関係者が証言 (朝日新聞)
しかしその後、野党からの厳しい追及もあり、7日の衆議院予算委員会での質疑応答では、自らが推薦状を手にした写真を前に「うすうす思い出してきた」と答えるなど、盛山大臣は厳しい立場に追いやられてきています。去就が今後、どうなるかも注目されています。
これまでにない旧統一教会側の行動
非常に興味深いのは、旧統一教会側のこれまでにない行動です。
かけ放題プランで電話数百件 旧統一教会信者が語る文科相の選挙支援 (朝日新聞)
朝日新聞の取材に、選挙支援をしたという女性信者が赤裸々に選挙活動の実態を語っていますが、これまでは自民党の議員を裏で教団の信者らが応援してきたことは、元信者の側から出てきていました。
それが一転、今回の情報は旧統一教会の側から出てきています。表と裏の両方からこの事実が出てきたことで、教団の信者らが関連団体を通じて組織的な選挙応援してきたことは、ほぼ確定したといえます。
何より考えるべきは、信者が取材をうけた先が朝日新聞だということです。
なぜサタン視してきた朝日新聞の取材に答えたのか
これまで教団は、朝日新聞を”旧統一教会批判の急先鋒にたつ、サタン(悪魔)の手先となる報道機関”としてとらえてきました。
筆者自身も信者時代「アベル」という教団の上司からは「朝日新聞の背後には共産党がいて影で操っていて、教団への批判を繰り返している」と教えられてきました。それゆえ当時は、朝日新聞の言葉を聞くだけで、強い敵対感情を抱いたものです。
しかし今回、一転してサタン視していた報道機関に、信者である関係者が答えています。ここに教団側の思惑がみえてくる思いがします。
教団側の許可がなくてはできないはずの行動
旧統一教会では、より神の立場に近い「アベル」の指示を受けて組織的に行動するのを基本としています。
筆者が末端の出家信者だった当時、アイスクリームをお店に買いにいくのにも「買いにいってもよいですか」と「アベル」に尋ねての許可が必要でした。今は、それほど徹底した信者への管理状況ではないかもしれませんが、今回のような重要事項に関しては、教団側の許可なくてはできないはずです。信者個人が勝手に教団の意向を無視して行動することは、サタン(自己中心)的行動とされて、許されないことだからです。
現時点で旧統一教会や関連団体からの抗議が、朝日新聞や信者である関係者に出ているという話は聞いていませんので、教団側が黙認や許可をしている状況だと思います。
ここからは推測の域を出ませんが、サタン視していた新聞社に重要情報を与える状況をみるに、さすがに高額献金や霊感商法の問題を受けて、教団側の姿勢が少し変わってきた。あるいは旧統一教会との断絶をしている自民党を敵とみて、敵の敵は味方の発想もあるかもしれません。
いずれにしても、今回の信者の側からの盛山大臣と教団とのつながりをリークしたことについては、教団側の何かしらの意図を感じます。
なぜこのタイミングで「信者からの告発がなされたのか」
次に、なぜこのタイミングで「信者からの告発がなされたのか」です。
理由は幾つかあると思いますが、一つには文部科学省が行っている旧統一教会の解散命令請求阻止を狙ったことが考えられます。
しかしこれに対しては、先の記事においてコメントもしましたが、現在、解散命令請求は陳述書や証拠資料なども裁判所に提出されて、その判断は司法の場に委ねられています。
それに(当時)永岡桂子文部科学大臣により22年11月に旧統一教会への1回目の質問権を行使して以来、文化庁は数多くの被害者へのヒアリングを行ってきています。そうした旧統一教会への毅然とした姿勢を見てきているので、万が一、ここで大臣が変わったとしても、解散命令への対応には特段の影響はないと考えています。
もしトップとのつながりを暴くことで、刻々と解散命令に近づく状況を阻止したい思いがあるとすれば、残念ですがその思惑は、はずれているといえます。
被害者救済特例法成立の影響も
昨年12月に旧統一教会問題の被害救済を念頭においた、被害者救済特例法が成立したことで、より教団は追い詰められる状況になっています。これを念頭において、文科省のトップに不都合な事実の刃を突きつけたことも考えられます。
この特例法は、法テラスの拡充を図っているので、法務省の所管になるのではないかと思いますが、同法では「指定宗教法人による財産の処分及び管理の特例」も定められており、文部科学省の役割は大きいといえますので、その点も考慮した可能性もあります。
いずれにしても、こうした敵対行動を教団側の信者から裁判外で示されることにより、文科省がより一丸となって、解散命令にむけての動きをしていくことが考えられますので、逆効果になったのではないかと思っています。
教団との関係が薄いと思われてきた盛山大臣がこの状況ということは
朝日新聞の記事では「選挙期間中は、教団信者でもある世界平和連合の会員10~20人が連日、盛山氏の事務所名で有権者に電話で投票を呼びかけた」としており、これまで教団との関係が薄いと思われてきた盛山大臣がこの状況です。
これまで関係が深いといわれてきた議員らは、教団の関連団体を通じて、非常に強い選挙応援などがあったのかが、自(おの)ずとわかるというものです。
戦々恐々とする、過去、教団との関係をもってきた自民党議員
今回の出来事をみて思うことは、これまで教団側から選挙応援を受けてきたにもかかわらず関係断絶をする自民党の議員らへの暴露に、舵を切ってきたのではないかということです。
すでに多くの自民党の議員は裏金問題にさらされていますが、旧統一教会との関係に関する自主点検のアンケートに正確に答えなかった議員は、今後、教団側からの暴露という新たな事態に直面する二重苦にさらされることになると思います。
何より、今回の信者側からのリークにより、教団は知り得た秘匿情報を墓場までもっていくことはせず、教団にとって有利な方向に情報を使う。とても信頼をおいて共に行動するには値しない団体と思った議員もいるのではないでしょうか。
今後も教団側の信者を通じて様々な情報は出てくると思います。すべてが後手後手に回る前に、議員の側からしっかりと過去の事実を公表することが得策です。
何より、不都合な真実を握られている議員らを教団の呪縛から解き放ってあげられるよう、野党側もどんどん厳しい追及をして、不都合な真実を明らかにしていく。それこそが、過去に甚大な被害を生み出した旧統一教会問題を放置し続けた、ケジメをつけさせることにもつながります。