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「『時間がない』はただの言い訳」。女優&フィギュアスケーターの本田望結が初のホラーで見せたもの

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

子役から続けている女優にフィギュアスケーターとしても注目される本田望結。初のホラーとなる映画『きさらぎ駅』が公開された。都市伝説をベースにした作品。この世に存在しないはずの駅に居合わす女子高生を演じ、今まで経験なかったスタイルの演技を学んだという。両立のうえに大学受験も目指す彼女が、どんな毎日を過ごしているかも語ってくれた。

毎日お風呂に2時間浸かるのが体に良いのかも

――高校生になってからも、身長が伸びたそうで。

本田 そうですね。今、164cmです。

――フィギュアスケーターとしては、影響するものですか?

本田 身長が伸びるのは仕方ないことで、さらに体が大きく使えるとポジティブに考えています。

――ゴールデンウィークには『プリンスアイスワールド』に出演されました。

本田 アイスショーはお客様と一緒に楽しむ特別な空間なので、私は大好きです。6日間、皆さんと過ごせたことは本当に幸せでした。

――競技とは違っても、練習は同じくらいして臨むわけですか?

本田 そうですね。練習はできるときは毎日しています。1回1時間の枠があって、お仕事の前に滑ったり、お仕事が終わってから行ったりしています。

――滑れないときも、他のトレーニングはしているんですよね?

本田 体幹のバランスを鍛えたり、外を走ったりします。体がなまらないようにしていて、走ることは大好きです。

――テレビで「お風呂に毎日2時間入る」という話が出てましたが、それも必要なこと?

本田 昔からお風呂も大好きで、もしかしたら体に良い影響が出ているかもしれません。トレーナーの先生にも「シャワーだけでなく、湯船に浸かることが大事」と言われているので。2時間は入りすぎだと思いますけど(笑)、私は余裕で浸かれちゃいます。

――何かしながら浸かっているんですか?

本田 台本を確認したり、勉強したり、お風呂ではいろいろなことをします。映画1本観たりもしますね。

台本があるとウキウキして長い台詞ほど好きです

――『きさらぎ駅』で映画には久々の本格的な出演となりました。

本田 久々だからどう、という感覚は一切ないです。他の作品はやっていましたし、いただいたお仕事を一生懸命やろうと、ずっと思っています。

――子どもの頃からやっていても、台本が来るとワクワクしたりはしますか?

本田 台本は大好きで、手元にあるとウキウキします(笑)。お芝居をしている時間が楽しいので、台詞を覚えるのも好きです。

――長台詞があると、大変ではあるでしょうけど。

本田 長ければ長いほど好きです(笑)。小さい頃からそうでした。

――ホラーにはあまり縁はなかったですよね?

本田 『きさらぎ駅』が初めてでした。

――観てはいましたか?

本田 目を隠しながら観ますけど(笑)、ちょっと怖いお話は好きです。『エスター』という映画が二重人格のような不思議なお話で面白くて、指の間からチラチラ観ました(笑)。

不自然に感じる間がホラーでは大切で

――そこまで怖がりでもないんですね。

本田 いえ、怖がりです。暗いところやおばけが苦手なんです。おばけを見たことはありませんけど(笑)。

――『きさらぎ駅』ではトンネルでのシーンがありました。

本田 本当だったら、すごく怖かったと思いますけど、お芝居に入っていると、怖さは全然ありませんでした。

――さすが女優さんですね。望結さんが演じた宮崎明日香は、この世に存在しない駅に居合わせた女子高生で、いろいろ想像しながら臨んだ感じですか?

本田 お芝居というより、ホラーならではの間の取り方がポイントでした。カメラさんとの息の合わせ方を重視していて。

――「ホラーならではの間」というのは……。

本田 普通の作品だと、たとえば驚かされて叫ぶまで1秒もかからないので、それを自然に見せるのがお芝居なんです。ホラーだと、まず私が驚いたところを撮って、カメラが驚かせたものに向いて、また戻ったところで叫ぶ。演じる側からすると不自然に感じる間なんです。でも、ホラーではその間がすごく大切になっていて。

――主演の恒松祐里さんが、監督から「ホラーは数学」と言われたと話していました。

本田 初めはすぐ驚きたくなって、耐えて耐えて、カメラが来たら叫ぶのは難しく感じました。普通の作品では勉強できない、新しい経験でした。

カメラがどう動くかで演技が変わりました

――電車で寝過ごして、気がついたら見知らぬ駅という状況について、当然ながら経験はない中で考えたことはありました?

本田 いつの間にか異世界にいたわけですよね。明日香ちゃんの経緯は描かれていませんけど、電車で寝過ごさないように気をつけようと思いました(笑)。私はいつもアラームをかけずに寝ていても、降りる駅に到着すると自然に目が覚めます。

――劇中では緊迫したシーンが続きます。

本田 現場でも常に緊張感はありました。お芝居について注意を受けることはほぼなかったんですけど、カメラさんと息が合わないとOKが出なくて。普段だとカメラは意識せず、むしろないつもりでお芝居をしているのが、今回はカメラしか意識してないくらいでした。カメラがどう動くかで私の演技も変わってくる。そこが難しいところでもあり、ホラーならではの楽しさでした。

――追い掛けられるシーンも多かったですね。

本田 常に走っていて、息が切れているシーンも多くて、アクションのようでした。

――そこはアスリートとしてはお手のもの?

本田 でも、明日香ちゃんはアスリートではないので。本田望結を消して演技をしていました。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

一度でも逃げたら元には戻れませんから

――明日香の人物像としては、「自分に恥じる行為はするな」という母親の言いつけを守るところが軸でしたか?

本田 しっかりした高校生ですけど、登場人物の中で一番年下なんですね。今回はホラーというだけでなく、人間の裏の顔、裏切りや絆というものも描かれていて。大人が子どもを裏切る。子どもが大人を助ける。そういうところもあるので、明日香ちゃんが大人っぽくなりすぎないことはすごく意識しました。大人対子どもという形が大事でしたから。

――それは演出以前に、望結さんが考えたことですか?

本田 考えていましたし、監督とも意見がほぼ一致していたので、役柄的にはスッと入れました。

――極限状態で自分が逃げるより、人を助けようとするのが立派でした。

本田 自分に恥じないように誰かを守る。そうすると、やっぱり大人っぽく演じたくなりますけど、まだ高校生なので、一番ビックリしているところも出したくて。ところどころ強がっているように見せたりもしました。

――望結さんも『踊る!さんま御殿!!』で、「逃げ道の先は行き止まり」という座右の銘を挙げていました。あれはどこで見つけた言葉なんですか?

本田 自分で作りました。誰でも逃げたくなるときはあると思いますけど、一度でも逃げたら、元の道に戻ってくるのはとても大変なはず。その先は行き止まりなので逃げない、というのは常に自分に言い聞かせていることです。

――逃げたら行き止まりだった経験をしたわけではなくて?

本田 いろいろ映画やドラマを観たり、本を読んだりして学びました。ポエムみたいなものを書くのが好きなので、自分の言葉は大事にしています。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

こなす感覚だと上手くいかなくて

――インスタのプロフィールには「二兎を追う者だけが二兎を得る」という言葉が入ってます。

本田 これは結構有名な言葉です。調べたら、いろいろな記事が出てきます。

――それが望結さんに響いたと。

本田 そうですね。わがままですけど、お芝居にフィギュアと自分がやりたいことは両方、嫌いになるまで続けていきたいので。

――そのうえで大学受験もする予定とか。

本田 フィギュアスケートは大学に行かないと続けられないと思うので、受験勉強をしています。どんな形であれ、大学に行かない選択肢はありません。

――いわゆるキャンパスライフに憧れがあるわけではなくて。

本田 そういうのもいいと思います。大学生ならではの生活は送りたいです。

――1日24時間の中で女優もフィギュアも勉強も……というのが、本当にすごいと思います。

本田 時間はないように見えて、絶対にあるので。「ない」というのは言い訳をしているだけ。私の個人的な考えですけど、自分がやりたいことなら、どんな短い時間でもやろうと思えるし、逆に思えないなら、やりたくないことなのかなと。私はやりたいことがたくさんあるから、時間も見つけられます。

――無理に睡眠時間を削ったりしているわけではなくて。

本田 寝ることは大事なので、睡眠時間は取るようにしています。

――女優の仕事ももっと増やしたいと思っていますか?

本田 もっとというより、いただいた作品をひとつひとつ丁寧に演じることが大事だと思います。たくさん作品をやらせていただいたとしても、こなすような感覚だったら、たぶん上手くいかなくて、観てくださる方に届かない。それは小さい頃から、ずっと感じています。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

撮影中に雨が降ったのも異世界らしくて

――最近、自分で観て刺激を受けた作品はありますか?

本田 『ウエスト・サイド・ストーリー』は映画館で観て、すごかったです。ぜひあの曲でフィギュアスケートをしたいなと思いました。映画は大好きなので、話題になっている作品はほぼ全部観ます。

――好きな映画の傾向はないですか?

本田 お芝居の勉強ということもあるので、いろいろなジャンルを観ますね。キュンキュン系もコメディも好きです。ホラーはちょっと怖いなと思いながらも観ちゃいます(笑)。

――『きさらぎ駅』は試写で観て、どう感じました?

本田 ポスターや予告でも怖さは出てますけど、決して観られないような怖さではなくて。ビックリしたりドキッとするようなシーンも、ホラーの怖さというより、リアルな人間の怖さのように思いました。ホラーが苦手な方もぜひ挑戦していただけたら。

――明日香はイメージ通りになっていましたか?

本田 皆さんとの掛け合いのシーンでも、監督がおっしゃっていたことが当たっていました。私たちが求めてしまいがちな自然な演技は、やっぱりホラーでは必要なかったですし、出来上がって改めてホラーの深さがわかりました。

――現場でのことを思い出したりも?

本田 撮影中、雨が降ってきたことがあって。普通は繋がりもあって、中止や延期になることが多いんですけど、監督が「異世界だし、いいんじゃない?」とそのまま撮ったのを覚えています。出来上がりでも、ちゃんと雨のシーンになっていました。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

小さい頃から24歳で結婚するのが夢です

――女優もフィギュアもやりつつ、望結さんの理想の人生というのは、どんなものですか?

本田 お嫁さんになりたいです(笑)。人生で大きなことといえば、やっぱり結婚かなと。母が24歳で結婚しているので、私も小さい頃から24歳で結婚したいという夢はずっと持っています。

――理想の家庭像まであったり?

本田 まだピンときませんけど、両親がすごく仲良くて、兄妹みんなで「あんな夫婦になりたいね」と話しています。

――どんなときにご両親の仲の良さを感じますか?

本田 いつもです(笑)。手も繋ぎますし、母が作った料理を父は誰よりもおいしそうに食べるので、見ているだけで幸せな気持ちになります(笑)。

――それにしても、理想の話で望結さんから真っ先に結婚が出たのは意外でした(笑)。

本田 お仕事やスケートに関してはタイミングもありますし、いつ何が起こるかわからないので、「何年後のこの大会で」とかはあまり考えていません。私はそんな実力のある選手ではないですから。試合に出られるなら、お芝居をやらせていただけるなら最善を尽くして、諦めずに毎日生きていきます。

野球の試合速報でモチベーションを上げます

――好きでやっていることとはいえ、女優とフィギュアを両立させるための支えとか、エネルギー源みたいなものはないですか?

本田 野球が大好きなので、試合速報を見るのは日課にしています。選手の皆さんが頑張っている姿を見ると、自分のモチベーションも上がります。だから、撮影の合間にも速報を見てニヤニヤしていています(笑)。

――メジャーリーグはどうですか? 望結さんも二刀流の大谷翔平選手にシンパシーは感じるのでは?

本田 私は二刀流なんて全然言えませんけど、大谷選手は誰もがすごいと認めるアスリートで、速報は気になって見ていますね。

――しかし、支えになるもので野球が出たのも意外でした(笑)。

本田 小さいところに詰まっている幸せを見つけられるかどうかで、毎日の充実度が変わってくると思います。

オスカープロモーション提供
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Profile

本田望結(ほんだ・みゆ)

2004年6月1日生まれ、京都府出身。

小1でドラマ『家政婦のミタ』などに出演して注目される。主な出演作はドラマ・映画『コドモ警察』、ドラマ『探偵少女アリサの事件簿』、『バイプレイヤーズ』、『陰陽師』、『どうせもう逃げられない』、映画『ポプラの秋』、『母と暮せば』など。映画『きさらぎ駅』が公開中。

『きさらぎ駅』

全国ロードショー公開中

監督/永江二朗 脚本/宮本武史 出演/恒松祐里、本田望結、莉子、芹澤興人、佐藤江梨子ほか

公式HP

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会

『きさらぎ駅』主演・恒松祐里インタビュー

『きさらぎ駅』出演・莉子インタビュー

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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