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203センチのシューター橋本晃佑 宇都宮の窮地に示した成長と代表への期待

大島和人スポーツライター
笑顔で取材に応じる橋本晃佑 写真=B.LEAGUE

主力不在のピンチだった宇都宮

10月19日(土)と20日(日)のシーホース三河戦を前に、宇都宮ブレックスは大ピンチに見舞われていた。インサイドの主力を担っている選手たちが、立て続けに不在となったからだ。

まずジェフ・ギブス、竹内公輔が負傷で欠場。シャブリック・ランドルフも家庭の事情でアメリカに帰国していたため、コートに立てるインサイドの主力級がライアン・ロシターのみとなっていた。

ロシターとコンビを組み、穴を埋めたのが橋本晃佑だった。彼は栃木県日光市生まれの26歳で、203cm・107kgのビッグマン。チーム内の競争は厳しく、昨季から1試合平均のプレータイムは10分前後の状態が続いている。また2017年5月には左膝前十字靭帯を断裂する重傷を負い、約10ヶ月にわたる欠場も強いられた。

三河は2018-19シーズンのB1得点王ダバンテ・ガードナーや、元日本代表の帰化選手・桜木ジェイアールが在籍するチーム。アウトサイドも含めた個々の得点力はB1最強レベルだ。しかしそんな強敵を相手に橋本は2試合合計で65分近くコートに立ち、連勝に貢献した。

チームを救った橋本の働き

彼は19日の試合では11得点を挙げ、リバウンドも7つ獲得した。20日の試合も81-81と同点だった第4クォーター残り1分13秒に3ポイントシュートを決めるなど、15得点・8リバウンドを記録。2日連続でヒーローインタビューに呼ばれる活躍だった。得意の3ポイントシュートは2日合計で8本放ち、そのうち6本を成功させている。

橋本はチームの狙いと自身のプレーを、20日の試合後にこう振り返っていた。

「外国籍選手がライアン(ロシター)しかいない中で、スペースを広く取ってオフェンスを展開する狙いだった。僕に(桜木)ジェイアール選手とかがついていたとき、スクリーンに行くと相手がスイッチするので、そういうところを使うオフェンスをやっていた。昨日から3ポイントは調子がよかったし自信もあったので、思い切り打ちました。疲れももちろんありますけど、2つ勝てて充実感しか無いです」

桜木、ミッケル・グラッドネスと元NBAプレイヤーとマッチアップした守備についてはこう振り返る。

「まず良いポジションでボールを持たれないプレーをやった。常に相手の位置を把握して、ポストアップされそうだったら自分から当たりに行った。なるべく外でもらわせる意識でした。簡単に持たれて一発というのはなかったと思うし、そこは出来たと思います」

指揮官も「彼の自信になる」

安齋竜三ヘッドコーチは橋本の成長をこう述べる。

「メンタル的にかなり成長してきている。(若手中心の日本代表チームで臨んだ)ジョーンズカップから自信を持って帰ってきた。こんなプレータイムがあったことは、ウチに来て初めてかもしれないけれど、最後まで集中力を持てたことは彼の自信になると思う」

彼は三河戦で、アウトサイドとの連携から外に開く「ピック&ポップ」から高確率で3Pシュートを決めていた。ストレッチ4(外のスペースを作り活かすパワーフォワード)らしいプレーは、他の日本人ビッグマンが持っていない強みだ。一方でインサイドに好プレイヤーが揃う宇都宮の中で、昨季から3番(スモールフォワード)で起用されることも多い。

橋本に求められるのは3番、4番の両ポジションをこなす万能性だ。「フリーになりにくい3番で3Pシュートを決め切る」「4番ポジションとして外国籍選手を守れる」選手となれれば、彼は宇都宮だけでなく代表からも必要とされる選手になるだろう。

代表入りに向けた課題は?

安齋HCは橋本にこのようなリクエストを出す。

「怪我人を戻ってきて、プレータイムが少しずつ減ってきた中でも、今日みたいなプレーを安定的に出して欲しい。それが4番でも3番でも……となっていけば、日本代表にああいう身長の選手が必要だし、そうなっていけるのではないかとは感じました」

日本代表の3番は渡邉雄太(メンフィス・グリズリーズ)、4番は八村塁(ワシントン・ウィザーズ)の定位置だ。橋本が東京オリンピックの舞台に立つならやはりフットワーク、フィジカル、判断力のすべてで一層の向上が必要になる。

また宇都宮で彼が競争しなければいけない竹内公輔は現役日本代表で、外国籍選手とのマッチアップを過去15年にわたって繰り広げてきた猛者だ。

橋本がいきなりそういったレベルに飛躍するという期待は過大だ。しかし彼は三河戦で「チャンスを得て結果を出す」「手応えを得る」という最初のプロセスを経験した。それは未来に向けて“小さいけれど大きな一歩”だ。

東京オリンピックへの抱負を尋ねたら、地に足のついた答えが返ってきた。

「出たいと気持ちはありますけど、まずはブレックスで優勝して、自分がチームに貢献した上でその先に(オリンピックが)あると思っている」

栃木県のファンにとって、地元出身者の活躍は喜びに違いない。加えて三河戦の活躍は2020年とその先に向けた、国際舞台における橋本の可能性を感じさせるものだった。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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