スーダン難民からNBA選手へとなったペリカンズの背番号32
昨シーズン、プレイオフを含めてNBA公式戦34試合でプレーしたウェイン・ガブリエル(23)が、ニューオーリンズ・ペリカンズの選手として、古巣を訪れた。
が、16日、18日のポートランド・トレイルブレイザーズとの連戦で出場機会は無かった。
2020年11月30日、身長206センチ、体重93キロのパワーフォワードはペリカンズと年俸162万ドルで契約を交わしたが、今シーズンは5試合でコートに立っただけである。平均プレー時間は3.4秒。
今月4日には、Gリーグのエリー・ベイホークス行きを命じられ、オールスター明けに再度ペリカンズに呼び戻された。
ガブリエルは1997年3月26日、スーダンの首都ハルツームで生を享けた。母国の内戦から逃れるために、生後2週間で3人のきょうだいと共にエジプトに渡る。およそ2年後、国連による難民支援の一環で、ガブリエル一家は英国を経由して米国ニューハンプシャー州に逃れた。
3歳でアメリカの地を踏んだガブリエルは、10歳でバスケットボールと出会う。そして、未来を創ろうと心に決め、翌年から本気でNBA選手を目指した。
高校時代はニューハンプシャー州を代表する選手となり、最終学年時にアメリカ国籍を取得。そしてケンタッキー大に進学した。
2018年、アーリーエントリーしてNBA入りを狙うが、ガブリエルを指名したチームは無かった。同年のサマーリーグに参加し、サクラメント・キングスとの2年契約を勝ち取る。しかしながら、試合出場の機会は与えられず、2020年1月20日にトレードされてブレイザーズの一員となった。
「幼い頃から、毎日、とことん練習したよ。夢を実現するには、日々の努力の積み重ねと、自己を信じることが大事だと両親に教えられた。今、その言葉は正しかったと思う。練習するから自信に繋がるんだ。たとえ上手くいかない日があっても、夢を諦めないで進むことが大事じゃないかな。そうやってここまで来た」
昨季、私のインタビューに応じた際、ガブリエルは自身の歩みをそう語り、「ブレイザーズと契約延長できるようにベストを尽くす」と言った。
言葉通り、試合前に必死で基礎トレーニングを繰り返す彼の姿が印象的だった。
現在、厳しい立場に置かれているガブリエルだが、壁を乗り越えられるだけのメンタルを持っているように見える。ウォーミングアップ時は、白い歯を見せながらペリカンズのメンバーとタッチを交わし、試合終了後は昨シーズンのチームメイトやスタッフたちと挨拶する様に、人柄が滲み出ていた。
間もなく24歳となるガブリエルの今季6試合目はいつ訪れるか。この若者がスーダンの星となることを、心から願う。