ピーチの関西~新潟線就航は、これからのLCC活用の地域活性化モデルになるのか
関西国際空港を拠点とするピーチが、3月1日に関西~新潟線を1日1往復で就航した。運賃は片道4190円~(空港税などの諸経費・支払い手数料などが別途必要)という安さで、近畿圏から新潟への旅行や帰省、単身赴任などの往来が身近になると共に、新たな地域活性化モデルとしても注目されている。
大阪から新潟へは飛行機は高額、鉄道・バスは時間がかかっていた
新潟へは東京からは上越新幹線で約2時間で片道1万円程度で行くことができ、高速バスは片道6~7時間程度かかるが3000円~5000円程度で訪れることができる。しかし、大阪から新潟への交通アクセスは充実していると言えない。最も便利なのは飛行機で、ANA(全日本空輸)、IBEXエアラインズ(ANAとコードシェア便を行っている)、JAL(日本航空)の3社が伊丹空港から合計1日10往復を運航しており、伊丹空港からは約1時間のフライトとなる。
1ヶ月以上前に事前購入型の割引運賃を使えば片道1万3000円~1万5000円程度だが、数日前に購入する場合は片道2万5000円以上になってしまう。出張などビジネスでの利用であれば伊丹~新潟線がベストであるが、旅行や帰省などで気軽に利用するには少し値段が高い。
鉄道利用の場合は、北陸新幹線が金沢まで延伸したことによって、日本海側の北陸本線や信越本線経由は不便になった。現状、大阪から日本海経由(北陸本線・信越本線)においては、特急「サンダーバード」で金沢まで乗車し、その後は北陸新幹線「はくたか」に乗り換えて上越妙高へ向かい、上越妙高からは特急「しらゆき」で新潟駅へ向かうことになる。
だが、本数も限られており、時間的・本数的にも新大阪から東京まで東海道新幹線「のぞみ」、東京から新潟まで上越新幹線「とき」に乗車した方が便利な状況になっている。東京乗り換えのオール新幹線ルートでも片道2万円以上かかる。これまで最も安かったのは高速バス(夜行)で、片道5000円~8000円程度で乗車することができるが、乗車時間は約11時間と長時間になる。
地上交通を含めても片道1万円以下で乗れるピーチの存在
そのような状況の中で、今回ピーチの関西~新潟線が就航したが、LCCは空席連動に応じた運賃となっており、片道4190円~2万3090円(預け手荷物や座席指定などが含まれない「シンプルピーチ」運賃の場合)の設定となっている。ピーチのホームページから空席照会すると、最安値の4190円で買える日も多い。繁忙期の一部で1万円を超えているが、ほとんどの日が1万円以下で購入可能となっている。
空港使用料や支払い手数料が別途必要であるが、片道あたり1000円弱で、大阪市内中心部から関西国際空港までの電車代を含めても、片道あたり6000円~1万円程度となる。なによりも、空席があれば直前でも1万円以下で買える点は大きい(ピーチの場合は2日前までに購入するのがお得になっている)。また、セール運賃が発売されれば、片道1000円台になることも珍しくない。既に販売は終了してしまったが、先日のセールでは片道600円で販売されたが即完売となった。
往復1万円台前半で利用できるようになることで、大阪と新潟を帰省や単身赴任などで行き来する人はもちろん、近畿圏から新潟へ気軽に遊びに行くこともできるようになった。新潟港から佐渡島へ向かう佐渡汽船のジェットフォイルを搭乗券の提示で割引するほか、ピーチの発着時間に合わせて月岡温泉まで往復1000円で利用できる「月岡温泉周遊バス」の運行を開始するなど着地側においても観光客誘致の取り組みを積極的に行なっている。同時に新潟からも大阪や京都へ旅行に出かけやすくなるほか、関西空港で乗り継いで海外へ行くのも容易になるなど、双方向でメリットがあるだろう。
地域活性化モデルになれるのか
3月1日の就航記念セレモニーでピーチの井上慎一CEOは「ピーチの新潟就航が実現し、新潟と関西が劇的に近くなります。飛行時間は他社と同じように1時間ですが、運賃は通常運賃で4290円からで何度でも行ける空飛ぶ電車の魅力を堪能いただければと思います」と挨拶したが、「空飛ぶ電車」という言葉通り、気軽に新潟へ行けることは間違いない。
ピーチがこれまで就航した数多くの路線の中で大成功したのが関西~仙台線。大手航空会社の伊丹~仙台線は割高な運賃設定で、新幹線やバスだと時間を要する区間だったが、ピーチが就航したことで人の流れが大きく変わった。大手航空会社の利用者も減らず、1日3往復にも関わらず常に90%以上の搭乗率を記録している。旅行客や帰省客などだけでなく、この路線ではビジネス出張で利用する人も多い。
仙台ではピーチが目指している「新たな航空需要の創出」を実現し、潜在需要の掘り起こしに成功し、地方創生にも貢献している。新潟でも同様に、搭乗率が高くなり、地方創生に貢献できるようになれば、現在の1日1往復からの増便への期待も膨らむ。増便すれば日帰りも可能となるので、より経済効果が期待できることになる。
3月1日で就航6周年を迎えたピーチは、大都市圏以外(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・沖縄)では、関西国際空港から仙台、松山、長崎、宮崎、鹿児島、石垣へ就航しており、今回の新潟、更に8月には釧路へ就航するなど地方路線を強化している。LCCが地方を活性化させる可能性は高くあるが、地域にも魅力がなければLCCが就航しても経済効果に結びつかないだろう。
搭乗率が低迷すれば撤退の可能性もある。そういった意味でも、受け入れ側となる地方とLCCの双方が協力していきながら、地域の魅力を発信していくことで、認知度を上げていく必要があるだろう。