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PTAや自治会の仕事を断れずに悩むなか、追い詰められた母親は

大塚玲子ライター
どこのPTAでも起きうる事件かもしれません(写真:アフロ)

 先日、兵庫県に住むある母親が、PTAの仕事に悩むなかで小学生の娘を殺害してしまうというショックな事件がありました。

 「本当にPTAのせいと言えるのか?」と思った方もいるでしょう。筆者も初めてなら、そう思いました。今回敢えて取り上げたのは、以前にも友人から近い話を聞いていたためです。

亡くなった妻の話です。PTAは、とくに専業主婦に対して参加強制が多かったようです。うつ病になったときも、妻はPTAの仕事を断れずに悩んでました。年度末は自治会のイベントなども重なり、耐えられずに自殺しました

出典:(拙著『PTAをけっこうラクにたのしくする本』p18より)

 この話を聞いたときは正直なところ、ご本人はもう亡くなっているので、「夫である彼には、そう感じられた」という話かな、というふうに思っていました。

 しかし、今回は母親本人が話したことでしょうから、第三者の想像ではありません。そう考えると、この事件や、友人の妻の件のほかにも、表には出ないだけで、追い詰められた母親が自分や家族の命を絶ってしまうような事件は起きているのかもしれません。

 「ストレスで自殺や他殺事件が起きるなんて、どれほどひどいPTAだったのか」と思われるかもしれませんが、このようなことは、実はどこのPTAでも起きうる話とも考えられます。誰でも精神的に弱っているときは、普段なら流せるようなことも、耐え難く感じるものです。

 PTAの難しいところは、誰かが強く「やれ」と命じているわけではなくても、「やらないと許されない雰囲気」が強いことです。「母親なら、やって当然」「PTA活動をしないのは、悪い母親」という風潮があるからです(父親ではなく、母親)。

 同時に母親たちのほうも、「いい母親でいなければならない」という無意識の思い込みに強く縛られているため、嫌でも辛くても「やらない」と断ることができず、その仕組みを下支えし続けてしまうところがあります。

 「できません」とすら言えない人たちを守るためにも、声をあげられる人からあげていくしかないように思います。「もっと別のやり方をしよう」と働きかけるなり、強制がひどいPTAを「やめます」と拒絶するなりしないと、この形は変わらなそうです。

 「卒業まで逃げ切ろう」「波風を立てまい」という人しかいないと、またこういった悲しい事件は、起きると思います。

 亡くなった娘さんを思うとやりきれませんが、せめて息子さんが必要な心理的サポートを受けられるよう、周囲の方にお願いしたいです。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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