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エンジェルスが獲得した野手2人、グリチックとクロンは「打者天国」を離れても打てるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ランダール・グリチック Jul 8, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月30日、ロサンゼルス・エンジェルスは、マイナーリーガーの2投手と交換に、コロラド・ロッキーズから外野手のランダール・グリチックと一塁手のC.J.クロン(と金銭)を獲得した。

 彼らは、右打者、ドラフト1巡目にエンジェルスから指名されてプロ入り、通算200本塁打まで20本未満、シーズン30本塁打以上は1度、今オフにFA、といったところが共通する。

 グリチックは、2009年のドラフト全体24位。その次の25位は、マイク・トラウトだ。エンジェルスは、フランシスコ・ロドリゲスマーク・テシェーラの退団に伴い、これらの指名権を得た。メジャーデビュー前のトレードにより、グリチックはセントルイス・カーディナルスへ移籍した。

 クロンは、2011年の全体17位。アンソニー・レンドーンタイラー・アンダーソンは、この年の全体6位と20位だ。それぞれ、ワシントン・ナショナルズとコロラド・ロッキーズに指名された。2014年5月にメジャーデビューしたクロンは、2018年2月のトレードでタンパベイ・レイズへ。交換要員のPTBNL(後日決定選手)として、翌月にレイズからエンジェルスへ移ったのは、メジャーデビュー前のルイス・レンヒーフォだった。

 グリチックは、昨シーズンからロッキーズでプレーしてきた。クロンは、2021年からだ。グリチックのホームとアウェーのOPSは、2022年が.851/.583、2023年は.945/.782。クロンは、2021年が1.073/.734、2022年が.955/.619、2023年は.816/.740。いずれも、ロッキーズの本拠地、「打者天国」のクアーズ・フィールドの数値がアウェーを凌いでいる。出塁率も同様だ。

 今シーズンのクロンを除くと、ホームとアウェーのOPSは150ポイント以上の差がある(.001=1ポイントとして表記)。今シーズンのクロンは、ホームの数値がそう高くないのも、そこまで差が大きくない理由の一つだろう。

 もっとも、シーズン30本塁打以上を記録したのは、2人とも、ロッキーズ時代ではない。グリチックは2019年にトロント・ブルージェイズで31本、クロンは2018年にレイズで30本のホームランを打っている。

 また、今シーズンのテイラー・ウォードのスタッツ(シーズン全体)とグリチックのスタッツ(アウェーのみ)を比べると、出塁率は.335と.338、OPSは.756と.782だ。出塁率はほとんど差がなく、OPSはアウェーのグリチックのほうが高い。クロンの場合、アウェーの出塁率.280はエンジェルスの一塁手全体より低いものの、OPS.740は勝る。

 グリチックもクロンも、「打者天国」を離れ、シーズン全体のスタッツは低下する可能性が低くない。それでも、2人の加入は、エンジェルスにとってプラスになり得る。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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