Yahoo!ニュース

『麒麟がくる』帰蝶役に抜擢された川口春奈の“挫折”

てれびのスキマライター。テレビっ子
大河ドラマ『麒麟がくる』は本日から放送(公式HPより)

大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)で沢尻エリカの降板を受けて帰蝶(濃姫) 役に抜擢された川口春奈。

彼女にとって、初めての大河ドラマだ。

川口春奈といえば、お笑い好きで有名な女優。

中でも以前からFUJIWARAの原西が好きだと公言していいる。

「♪じゃんがじゃんがじゃんがじゃんが 乳首の席替え~」

といったギャグも、バラエティ番組にゲスト出演した際に躊躇なく全力で披露したりもした。

先日ゲスト出演した『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ)でも、その笑いどころと屈託ない笑いっぷりが印象的だった。

『しゃべくり007』(日本テレビ)に高橋一生と出演すれば、高橋へ「アイスコーヒーを持ってくる時に自前の革のスリーブを付けてる」「ロールキャベツ風にお餅をキャベツに包んでトマトソース掛けたんですって」などと「シティ派」イジりし、大きな笑いを取っていた。

まったく気取らない女優だ。

本人も「つねにナチュラルでいたいです。自分はウソもつけないですし、まっすぐに生きることしかできないので」(「ライブドアニュース」2018年3月23日 )、「等身大でいたいんですよね。もちろんメイクやファッションでかっこよく見せたいというのはあるんですが、気持ちの部分ではナチュラルでいたい。(略)人間らしくて愛嬌があるというか、そんな人になりたいんです。うそのない人が私自身も好きだし、色気ってそういう所からふとにじみ出ると素敵だなと思うから」(「美的.com」2019年7月28日)と「ナチュラルさ」へのこだわりを繰り返し語っている。

視聴率低迷

順風満帆にキャリアを積んできたように見える彼女だが、決して平坦な道のりではなかった。

川口は「シティ派」とは対極の長崎県の五島列島の福江島出身だ。

中学生になると雑誌『ニコラ』でモデルデビュー。福岡経由で船に乗り、9時間以上かけて上京して仕事をしていた。

仕事も増え、その移動に限界を感じ、中学3年のとき、東京に引っ越した。

上京すると女優デビュー。順調にキャリアを重ねてきた川口に2013年末、挫折が訪れた。

TBSで放送された連続ドラマ『夫のカノジョ』の視聴率が低迷し、放送回数も短縮されてしまったのだ。

翌年放送された『アナザースカイ』(14年3月14日放送)で川口はその時の心境をこう振り返る。

「『気にしない、気にしない』とは言ってましたけど、めちゃめちゃ気にしてたし。みんななんかフォローしてくれるのが逆に悲しかったりとか……」

ゴールデンタイムに放送しているにもかかわらず、視聴率は3.0%と最低記録を更新。当時のブログには、すべて視聴率で判断されてしまうことが「悲しい」と綴られている。

「観てくれている人 応援してくれる人たちだけのために 頑張ればいいんだ 誰からどう思われようが 関係ない!! ただただ頑張ってるだけです」と。

当時のことを「悔しかった」と正直に心情を吐露する川口。それでも「見てくれてる人はゼロではないと信じて」がんばってはいたが、やはり傷つき不安になった。そして「あぁ、なんかやってけるかな自分っていう風に初めて本気で思った」という。

そういう経験をしている女優は強い。

年明けに放送された『教場』(フジテレビ)でもイメージを一新するショートカットで木村拓哉と堂々と対峙し、鮮烈な印象を与えていた。

『麒麟がくる』で演じる帰蝶(濃姫) は、主人公・明智光秀(長谷川博己)と姻戚関係にあり、幼いころからの付き合いがあり、政略結婚で織田信長(染谷将太)の正妻になるという重要な役どころ。しかも、“代役”ということもあり、周囲から様々な“雑音”が入ってくるだろう。

昨年の大晦日に更新された彼女のInstagramにはこう綴られている。

「職業柄、日々いろんな声が聞こえてきますが、全く私には刺さりません。

私にしか出来ないこと、私にしかないストロングポイント。大切な人の言葉に耳を傾けて自分を信じてやるのみです」

出典:川口春奈 Instagram 2019年12月31日

そのナチュラルな逞しさは、まさに帰蝶を演じるに相応しい。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

てれびのスキマの最近の記事