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【麻薬探知犬】のように【コロナ探知犬】本格始動か...フィンランドの空港では活躍中

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
タイのコロナ探知犬(写真:ロイター/アフロ)

空港にいけば、「麻薬探知犬」が働いています。犬好きの筆者は、「人のために働いてくれて、ありがとう」と思いながら、遠くから麻薬探知犬を眺めています。犬は人より、嗅覚が優れているので、このように使役犬として働くことができます。

そして、フィンランド・ヘルシンキのヴァンター国際空港で、「コロナ探知犬」を使った実証実験が行われています。

以前、英国で「コロナ探知犬」訓練開始 なぜ犬に能力や適性があるのか解剖学と行動学から解説という記事を書きました。それよりさらに世界では、「コロナ探知犬」が進化しているので、その話を今日は、解説します。

フィンランドの「コロナ探知犬」とは?

Covid-sniffing dogs deployed at Helsinki airport より

この実験は、フィンランド国外からの飛行機で到着した乗客で、参加に同意した渡航者だけに行われています。渡航者と犬が直接接触することはないので、犬が人の新型コロナウイルスに感染する確率も低くなります。

では、どうやって、検査をするのかというと、渡航者が検査用の布で首などの汗が出ているようなところの皮膚を拭き取り、専用カップにこれを入れます。カップは犬が待機する別の部屋に運ばれ、カップ内の布に付着した検体を嗅がせるというシステムです。

コロナ探知犬は、新型コロナウイルスを検知すると、吠えたり、足を掻いたりなどのサインを示すそうです。

この実験で陽性となった渡航者は、専用窓口に移動してPCR検査を受けることとなっています。ヴァンター国際空港のウェブサイトによれば、ヘルシンキ大学獣医学部で実施された予備テストでは、コロナ探知犬がほぼ100%の精度で新型コロナウイルスの感染者を嗅ぎ分けたと発表しています。

米国のコロナ探知犬

一方、米国でもコロナ探知犬がPCR検査などに取って代わるかもしれない、実験結果が出ました。

それでは、米ペンシルベニア大学獣医学部の研究チームのもので、犬にもコロナ感染者の有無を探知できる能力があることを明らかにしました。

4月14日付けで学術誌「PLOS ONE」に、実験の結果が発表されました。論文によりますと、この実験の最初に、研究者たちは、合成物質である独特の香りを認識するように犬たちを訓練しました。新型コロナウイルス陽性者の尿や唾液には、それと特定できるにおいがあるとのことです。このすべての実験でウイルスは不活性化されています。そのため、実験で、犬が新型コロナウイルスに感染する心配はほとんどありません。

次に研究者たちは、ウイルスを含む汗が付着したTシャツをコロナ探知犬が嗅ぎ分けられるかどうか実験中だそうです(新型コロナウイルスは汗を介して人や動物に感染しないことが複数の研究で明らかになっています)。

この犬たちが平均96%の精度で新型コロナウイルスの陽性サンプルを特定できました。

タイのコロナ探知犬

タイのコロナ探知犬
タイのコロナ探知犬写真:ロイター/アフロ

さらにタイでも、探知犬の研究が進んでいます。ロイターによりますと、タイでは4月以降、新型コロナ感染者が4倍、死者も7倍に達しているといいます。

新型コロナの患者は無症状であっても、汗とともに揮発性有機化合物を分泌していることがチュラロンコン大学の研究で明らかになった。その匂いを犬が嗅ぎ分けるという。

プロジェクトの関係者はこう語る。

「この犬たちは90%を超えるとても高い成功率で、迅速に感染者を特定する。またその測定にかかる時間が極めて短い。どのサンプルが感染しているか、教えてくれる。この早いペースで、感染者を特定することができる。これは感染の抑制に大いに役立つ」

タイで「コロナ探知犬」デビュー、無症状でも特定の化学物質をかぎ分け

つまり、タイでもフィンランドや米国でも同じように、コロナ探知犬は、高い確率で新型コロナ感染者がわかるということです。

まとめ

麻薬探知犬
麻薬探知犬写真:ロイター/アフロ

筆者は、コロナ探知犬ではありませんが、病気に特有のニオイがあることは、臨床経験上知っています。それは、古代ギリシャの医師・ヒポクラテスの時代から言われてきました。たとえば、猫の慢性腎不全の子は、吐く息に、嫌なニオイがするので、血液検査をして確かめます。

一般的には、コレラ患者の便は甘ったるいニオイ、糖尿病の患者の汗などには、ケトン体で甘酸っぱく、果物が腐ったようなニオイがします。

PCR検査は、鼻や口腔のぬぐい液の採取が必須で、結果が判明するまでに数時間か数日かかることもあります。汗に含まれる感染者のにおいを探知できるよう「コロナ探知犬」ならば、すばやく感染者を嗅ぎ分けることができます。

いま世界は、新型コロナウイルスのパンデミックになっています。人の良きパートナーである犬に、どこの国でも「コロナ探知犬」として助けてもらう時が来たのかもしれませんね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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