JASRACに著作権使用料を払わずに懲役刑
JASRACに所定の著作権使用料を支払わない飲食店経営者が警察に逮捕、起訴され、懲役刑判決(2年)を受けたというニュースがありました。執行猶予付きとは言え、いくらなんでも厳しすぎないかというのが一般的感覚ではないでしょうか。
上記のニュースだけを見るといきなり逮捕されたかのように思えてしまうかもしれませんが、JASRACのプレスリリースによると、この飲食店経営者は民事仮処分による差止めを無視して、2度にわたりカラオケ機器の封印を破棄して無断利用を継続したことから、やむなくJASRACが刑事告訴状を提出したということのようです。
カラオケ歌唱の無許諾利用者に対して懲役刑の有罪判決が下されたのは全国で2例目だそうですが、前回のケースも今回同様に差止めの仮処分を複数回無視したという経緯があったようです。
日本の著作権法では、ほとんどの著作権侵害行為について故意で行なえば刑事罰対象となります。罰則は個人の場合、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金とかなり厳しいものです(CDを万引きするより、CDを違法配信した方が罰則は厳しいのです)。
JASRACに所定の料金を払わないということは、借金を返さないとか、NHKの料金を払わないといった民事上の債務不履行で閉じた話ではなく、(故意の)著作権侵害という刑事罰が関係する話ですので、あまり軽く考えない方がよいでしょう。
まあ、さすがにJASRACもいきなり刑事告訴はしないと思うので警告はしたと思うのですが、飲食店経営者側もまさか本当に刑事告訴するとは思わなかったのか、刑事罰の重さがわかっていなかったのか、刑事罰上等と思っていたのかはよくわかりません(なお、罰金や懲役刑を受けたところで民事上の責任が消えるわけではないので、使用料の支払い自体は必要です)。
日本の知財研究の第一人者である中山信弘東大名誉教授はあるセミナーで「刑事罰は劇薬であってその用法を誤ると、大変な副作用をもたらす」という発言をされています。今回のケースが劇薬の適切な用法だったのかどうかは、細かい事情を知らないので何とも言えないですが、著作権侵害行為は決して軽く考えるべきではないということだけは言えるでしょう。「量刑相場」として、差止めを無視して故意の著作権侵害を続けると執行猶予付きとは言え懲役刑が課されることもあることが明らかになった以上、なおさらです。