OpenAIの特許を分析する(5):ChatGPTの基本特許を目指したが
OpenAIがOpenAI Opco LLC名義で出願した特許の解説シリーズの5回目です。今回は、US11983488B1 "Systems and methods for language model-based text editing"(言語モデルベースのテキスト編集のシステムと方法)です。出願日は2023年3月14日、登録日は2024年5月14日(優先審査(Track One)請求)、PCT出願(PCT/US2023/075857)および分割出願(18/631,505)の存在が確認されています。米国外への出願は現時点では確認できていません。
発明のタイトルが示すように、以前の記事で解説したUS11886826B1 ”Systems and methods for language model-based text insertion”(言語モデルベースのテキスト挿入のシステムと方法)と類似した特許です(「編集」か「挿入」かの違い)。両者は出願日が同一で、図面も同一、明細書の記載もほぼ同一ですが、ファミリー特許ではなく独立した特許です(分割原出願や優先権基礎出願を共通にしていることはありません)。
この発明は、11886826と同様に、LLM(大規模言語モデル)をベースにチャット式のUIを実装する方法に関するものです。ChatGPTの基本特許(を目指した出願)とも言えます。なお、LLMの内部構造についてはほとんど触れておらず、あくまでもブラックボックスとして扱っています。
ポイントはLLMの出力に基づいて入力テキストを編集(変更)することです。タイトル画像を見るとわかりやすいですが、「GPT-3についてのポエムを書いて」というプロンプトでポエムのテキストを生成し、「GPT-3が自分で言ってるかのように書き直して」「GPT-3からのレターのように書き直して」といって指令に基づいてポエムを書き直して行きます。これで特許化できたら大変ですが、実際にはかなり限定した特許になっています。一般的にOpenAIの特許はもっと早目に出願しておけばもっと広範囲で権利化できたのにと思わせるものが多いのですが、おそらく、初期にはできるだけ技術をオープンに解放する組織ポリシーだったものが、最近になってやはり特許は押さえておこうという方向性に急変したことによるのではないかと思います。
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