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『ハヤブサ消防団』で写真の“謎の女”役の小林涼子。2年・9クールに渡りドラマ連続出演の密かな快挙

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)テレビ朝日

最終回を前にカルト教団の“聖母”と明かされる

 夏ドラマが相次ぎクライマックスに入っていくが、謎が次々に明かされていき、いよいよ最終回を迎えるのが『ハヤブサ消防団』。

 都会の生活に疲れたミステリー作家・三馬太郎(中村倫也)が移住した山間の集落・ハヤブサ地区で起こった連続放火事件。太郎の推理により、消防団の1人が放火犯と判明した後、遺体で発見される。

 一方、集落には太郎とつき合う立木彩(川口春奈)が入信していたカルト教団・アビゲイル騎士団の信者たちが、大挙して押し寄せてきた。

 そんな中、最後までベールに包まれていたのが、太郎が物置きで見つけた昔のアルバムで1枚の写真に写る美女だった。シャクナゲの花を持ち微笑む姿は、古いポートレートでも他の写真とは異なるオーラを放っていて。

 その女性は、かつてハヤブサ地区に住み、男に捨てられて身投げした女性の娘・山原展子らしいとわかった。だが、消息は不明。太郎が遭難しかけた山の中で見掛けた老女の家で、神棚にも山原展子の写真があった。

 そして前回の8話で、展子は教団で“聖母アビゲイル”として崇められた存在と明かされる。

 この謎の美女を演じているのは小林涼子だ。7話まで写真の他は太郎の夢に少し出てきただけだったが、8話では太郎が教団の教本を読む中で、イメージ的なシーンに登場。聖母とされるのもうなずける神々しさを放っていた。

 実は小林はこの2年以上、地上波の連続ドラマに出演し続けている。この『ハヤブサ消防団』で9クール連続となった。いずれも脇役やゲストではあるが、これだけ続くのはあまり例のないことだ。

10代でブレイク寸前も20代で美形が不利に?

 小林は1989年生まれの33歳。ひとつ上に新垣結衣、戸田恵梨香、吉高由里子、堀北真希(引退)、同い年に多部未華子らがいる黄金世代だ。彼女自身、10代の頃には名作コミックが原作の『砂時計』、嵐の大野智が主演した『魔王』でヒロインを演じるなど、ネクストブレイクの呼び声が高かった。

 20代になってモデル系事務所から移籍したが、レギュラー出演は少なくなっていった。小林は当時を振り返り、「うまくいくと思っていた分、『何でだろう?』と考える日々が続いて辛かった」と話している。

 小顔で瞳が大きい端正な美形も10代の頃から目を引き、最近でも今田美桜と似ているとの声がネットで上がっている(映画『わたしの幸せな結婚』では、今田が演じるヒロインに愛情を注いできた使用人の役で共演)。

 だが、脇役でビジュアルが良すぎると、視聴者は必要以上にチラチラ気になるので、レギュラーでキャスティングしにくいという面もあったようだ。

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『ハンオシ』『ゴシップ』『王様に捧ぐ薬指』などに相次いで

 それでも地道にゲスト出演などを続けていくうち、30代に入ると『姉ちゃんの恋人』での有村架純とつき合う林遣都の昔の彼女役などで印象を残すように。2021年7月クールから連続出演が始まった。

2021年7月期 『ザ・ハイスクール ヒーローズ』、『来世ではちゃんとします2』

2021年10月期 『婚姻届に判を捺しただけですが』

2022年1月期 『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』

2022年4月期 『花嫁未満エスケープ』、『正直不動産』

2022年7月期 『復讐の未亡人』、『ロマンス暴風域』

2022年10月期 『永遠の昨日』、『真相は耳の中』

2023年1月期 『ダ・カーポしませんか?』、『花嫁未満エスケープ完結編』、『ワタシってサバサバしてるから』

2023年4月期 『王様に捧ぐ薬指』

2023年7月期 『ハヤブサ消防団』

 この他に単発ドラマ、BSや配信ドラマなどもあり、本日放送のテレビ愛知開局40周年ドラマ『秀吉、スタートアップ企業で働く』にも出演している。全話通じたレギュラーは少ないが、様々な役に対応できる演技力が買われてのことだろう。出演のたびに「あの美女は?」とSNSで話題に上がるようにもなった。

元カノ役がハマりルックスもまた活きる

 特に、『姉ちゃんの恋人』のような元カノ的な役はハマる。『ゴシップ』では溝端淳平が演じたネットニュース編集部員の元カノの新聞記者、『王様に捧ぐ薬指』では山田涼介が演じた御曹司が高校時代に想いを寄せていた同級生役だった。

 こうした元カノ系の役について、小林自身は「エモくて美化されているけど、改めてつき合いたいかというと、そうでもない(笑)。そんなポジションが私に向いているのかなと、ちょっと思っています」と話していた。

 『王様に捧ぐ薬指』は山田が橋本環奈と契約結婚したストーリーで、当初は“本当に好きな女性”という立ち位置。橋本と比べても……という説得力に足る小林のルックスもあってのキャスティングだった。

 『ハヤブサ消防団』でも、写真だけで“謎の美女”として焼き付くのは小林ならでは。キャリアを重ねる中で、美形がまた活きるポジションが見出された。

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

脇役から遅咲きブレイクへの期待

 2022年の『復讐の未亡人』で共演した松本若菜は、この作品が38歳での連続ドラマ初主演。彼女も2019年から2021年にかけて、2クールを除いてほぼ毎期、連続ドラマに出演していた。

 大河ドラマ『麒麟がくる』での幼少期の徳川家康の母役や『私の家政夫ナギサさん』でのナギサさん(大森南朋)の元同僚役などで、ゲストや脇役ながら存在感を発揮。遅咲きブレイクに繋げている。

 小林涼子もこのまま印象を残し続ければ、もともと正統派タイプだけに、30代半ばで再びヒロイン級の役を担うこともあると思える。

 とりあえず『ハヤブサ消防団』では、“聖母”がどこまで山原展子の実像だったのか、まだ疑問が残る。最終回では真の姿が描かれた回想シーンに期待したい。

小林涼子インタビュー前編

小林涼子インタビュー後編

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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