Yahoo!ニュース

サンウルブズのジェイミー・ジョセフヘッドコーチ会見から、何を読み解くか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
フランス遠征中のジョセフヘッドコーチ。(写真:アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦するサンウルブズは、12月4日、発足3年目となるシーズンの一部スコッドを発表。日本代表の指揮も執るジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ、渡瀬裕司CEOが会見した。

 会見では、ジョセフが今秋の日本代表ツアーなどを踏まえ今後の方針を明かした。その言葉からは何が読み取れるか。過去2年で通算3勝も「5位以内を目指す」というチームを展望する。

 以下、会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

渡瀬

'''「今年7月までのシーズン終了時の記者会見などで、色々な方に『来季の抱負を』と聞かれました。『3年目は勝負の年』と申し上げたと思います。準備に向け、一致団結してやってまいりました。本気で、1つでも多く勝つために、競技場を満員にするためにどうするか.

これに、組織として取り組んでいきたいと思います。'''

『GO BEYOND 5』。チーム、ビジネスともこれを柱にやっていきたい。

 2019年(ワールドカップ日本大会)以降も見据え、活動していく。5年でチャンピオンを目指す。そのなかで、素晴らしいラグビーパークも作りたい。

 話したいことはいっぱいあるんですが、こうしたコンセプトの中でやっていきたいと思っています。ジェイミーが選手をしっかりと選び、しっかりとしたチーム作りをすると思っています。一丸となって、素晴らしいシーズンにしていきたいと思っています」

ジェイミー

「2018年のサンウルブズを率いることがいまから待ち遠しいです。そして、今後5年間のスローガンが出ましたが、ここに至るまでいろんなコーチが率いてきました。選手もいろいろと学ぶところがあったと思いますが、それを培ってくれたのはマーク・ハメット、フィロ・ティアティア(過去2シーズンのヘッドコーチ)です。それを踏まえて向かうという意味では、我々コーチングスタッフはいいポジションにいる。

 私たちのスローガンは『GO FOR TOP5 IN2018』。シンプルに、私たちが目指したいことそのものを表している。先ほど申し上げた通り、いろんなことを学んだ。怪我、疲労、移動の多さなどでプレッシャーがかかるとより勝つのが難しくなる状況を見てきた。これからはもっと強い顔ぶれが必要だと思いました。

 世界のラグビーで戦う上では、プロフェッショナルな集団がそれなりの時間を集めて一緒にやっていくのは難しい。そんななか短い時間でいかに戦えるか、ということを鑑みて選んだ選手の顔触れは、過去よりかなり強い顔ぶれだと思います。

 とはいえ、強い選手を選んだからと言って勝てるとは限らない。経験、実践が必要です。2013年、別のチーム(ハイランダーズ)を率いた時、オールブラックスがたくさんいても勝てないことを経験しました。それも考えながら、選んだサンウルブズのメンバーを発表します」

(以下メンバーを読み上げる)

――2018年のサンウルブズでは、日本代表のキッキングラグビーを継続されるのか、強化する点はどこか。

ジョセフ

「最初にキッキングラグビーとよく言われはしますが、これまで私が指導してきたラグビーはバランスを取ったプレーだと考えています。スーパーラグビーを見ていると、優勝したクルセイダーズ、ハイランダーズとその時、一番キックを多用したチームが優勝していてる。キッキングゲームは有効だが、ただそれをやるだけではなく、考えながらやらなければいけない。

 チーム、スコッドによってキッキングゲーム(の種類)が違う。そんななかどんなゲームをするか、日本にとってトータルバランスのいいラグビーをしたい。

 伸ばすべき部分はセットプレーとディフェンス。日本代表は、先日終わったばかりの欧州遠征ではこのエリアを改善してくれている。サンウルブズでもそれを生かしたいと思っています」

――今回初スコッドのリーチ マイケル選手、姫野和樹選手、レメキ ロマノ ラヴァ選手への期待は。

ジョセフ

「リーチは代表ではキープレーヤーですが、サンウルブズではクオリティの高い選手の1人として期待しています。

 彼らが力を発揮できそうなエリアを埋めていく、という存在になって欲しい。過去のコーチング経験を踏まえ今回のスコッドを組みまいたが、いままでできなかったことができるようになると思っています。サンウルブズの戦いは半年近くで、移動ばかりで休む時間がない。そんななか、この(1人の)選手がシーズンを通して戦うかと言えば、そうではない。いろいろな選手に出てもらいながら、かつ同じことを繰り返さずにやる。そういった戦いができてくる」

――代表とのリンクを強める方針。今回は日本代表にどれくらいのメリット。

ジョセフ

「ご指摘もあった通り、これだけの人数の代表選手が入っていることが期待を物語っていると思うのですが、このチームは(代表と非代表の?)バランスも見ている。どうなるかだと思います。いまいただいた質問は、いいご質問です。ラグビー的な観点からすると日本代表とサンウルブズとの一貫性を求めていきたいが、チーム(サンウルブズ)のコーチからすると、違う環境を持つことができるとも捉えられる。戦う環境やチームそのものが、(日本代表とサンウルブズでは)違う。

 では、どのぐらい(サンウルブズでの)代表強化を期待するか。いまの時点では、わからないと申し上げたいのですが、チャレンジだと思うのは、いかに2つのチームでハイパフォーマンスの環境を選手に与えられるか。その環境とは何か。素晴らしいチームのカルチャーがあって、学び、楽しめる環境、周りが応援したいと思えるようないいラグビーのできる環境です。これが私を含めたコーチ陣の課題であると思いますが、選手と一緒になって作るものと思っています」

――きょうリリースされた選手は26人。追加スコッドの招集発表については。

ジョセフ

「いまアプローチしている選手にはサンウルブズと異なる契約形態の選手がいます。彼らはみな会社員です。そういったわけで、まだ発表ができていない選手、ポジションがあります。ただ、裏を返せばきょう発表された選手は契約が済んでいるということ」

――キャンプのスタート、どういうプレシーズンを。

ジョセフ

「トップリーグ終了した1月末から活動を開始したい。選手に数週間のオフを与え、ラグビーから離れ、リフレッシュして、プレシーズンの活動に全力で臨んでもらいたい。そのまま開幕に備えてもらいたいと思っています」

――ジョージア代表のジャバ・ブレグバゼ選手について。

ジョセフ

「まず最初に、私は彼のラグビーが好き。彼はいいラグビー選手で経験がある。イングランドでプロ選手をしていて、昨今はアベイラブル(獲得可能)だということで契約した。先ほど申し上げたが、課題はセットピース、ラインアウト。その部分を引っ張っていける選手を求めています。彼はジョージア代表のその部分でリーダーだった。ジョージア代表はセットも強い。彼からそれを学べると思いました。最初のシーズンに堀江選手(レベルズ在籍時を指してか)がそうだったように、日本の選手には競争性の激しいなかでいかに学んでいくか、過酷ななかいかにリコンディショニングしていけるか、本番でいかにフィットした状態で臨むか…。そういったことを学んで欲しいです」

――トップリーグ在籍の外国出身選手は、2019年のワールドカップ日本大会までに代表資格を得られるのか。

渡瀬

「間に合う選手は(問題なく)間に合います。ただ、それだけで選んでいるわけではない。全体的なバランスを見て選考しています」

――選手のローテーションについて。

ジョセフ

「スーパーラグビーのどのチームにも、それぞれのローテーションの形があります。今季は、パフォーマンスベースにと考えています。トップ5は達成すべきゴール。そのなかで、プレーヤーに休みが必要な選手、どうもプレーがよくないという選手などがいれば、そこへ代わりの選手が入る」

 ジョセフヘッドコーチは会見中、一部で「蹴りすぎでは」と批判される攻撃スタイルについて「バランス」を取った結果だと強調。確かに11月25日の日本代表対フランス代表戦(敵地ナンテール・Uアリーナで23―23と引き分け)ではキックの分量は減ったものの、それはフランス代表の防御システムを鑑みての判断からだ。基本的な攻撃陣形などは、ややキックの多かった18日のトンガ代表戦(トゥールーズのスタッド・アーネスト・ワロンで39―6と勝利)と同じと見られる。

 サンウルブズは2勝に終わった昨季、当時「チームジャパン2019総監督」の立場だったジョセフの意向で各選手に休暇を付与。取材を総合すると、一部主力候補の休養もしくは個別トレーニング期間は2016年度のトップリーグ期間中に個別共有されていた可能性が高い。

 おかげで多くの日本代表候補がスーパーラグビーを経験できたが、固定メンバーでも時間をかけ強めるはずのコンビネーションはその時々でリセットされたか。今季もローテーション制が採用されるとあって、前年度の反省がどう生かされるかに注目が集まる。その点について、ジョセフは「パフォーマンスベース」。レギュラー候補をできる限り重用する意向か。

 なお、ジョセフが強化ポイントに挙げる「ディフェンス」については、今秋の日本代表ツアーでジョン・プラムツリーコーチが新システムを搭載。もっともプラムツリーは来季のスーパーラグビーではニュージーランドのハリケーンズに帯同。日本代表で得られた財産をどうサンウルブズに繋げるか、フォーカスが当たることとなろう。

 初年度に最下位だったチームが発足3年目に5位入りすれば、きっと世界は驚くだろう。過去2年の蓄積を、どう白星に転化させるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事