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【2025年の鉄道】運賃値上げが相次ぐ一年、サービスの向上はどうなる? 万博アクセスへの期待も

小林拓矢フリーライター
万博を意識して導入されたOsaka Metro中央線400系(写真:イメージマート)

 昨年は年末に、JR東日本が運賃値上げを申請、2026年3月に新運賃にするという話が出てきた。しかし運賃値上げは近年のトレンドであり、物価高にともなう必要経費の増大や、鉄道従業員の賃上げなどの原資としては必要であり、地域によっては利用者が今後増える見込みもない中で、値上げの話が出てくる状況は今年も続くだろう。

鉄道各社の相次ぐ運賃値上げ

 山陽電気鉄道や神戸電鉄・能勢電鉄は1月19日、広島電鉄や沖縄都市モノレールは2月1日、JR九州や道南いさりび鉄道は4月1日に運賃を値上げする予定になっている。

 JR東日本は大きな鉄道会社だから値上げに足かけ3年もかかるのであり、それほど規模の大きくない鉄道会社では、国土交通省や各地の運輸局に申請してから半年程度で値上げになってしまうのである。

 この傾向は今年も続くだろう。

 鉄道会社では稼げる路線が稼げない路線を助け、また多角化経営ゆえに鉄道以外の部門が鉄道を助けるという構図が長年続いていたものの、路線や部門ごとの収支が厳しく問われるようになり、また第三セクターや中小私鉄では多角化経営ができないところもある。

 それゆえに鉄道運賃や特急等の料金が値上げ、というのは仕方がないことである。

 JR東日本では都市部鉄道の利用者にそれなりに負担してもらうという考えで、「東京山手線内」「電車特定区間」といった運賃区分をなくすことにする。都市部の鉄道はいままで安すぎたというのがJR東日本の考えである。

山手線内は運賃が格安となっている
山手線内は運賃が格安となっている写真:イメージマート

 JR東日本は終電繰り上げによるメンテナンス時間の確保や、保守作業の機械化などの経営努力をしてきた。さらにその上、鉄道の本数削減などサービス水準を落とすということまでも行っている。

 それはどこの鉄道会社も同じである。

運賃値上げは、サービスの維持に必要

 以前、東急電鉄が運賃を値上げしたとき、駅の設備や美観の維持、鉄道サービスの持続のための値上げということで、鉄道利用者から肯定的な評価をされたことがある。東急電鉄はサービス水準の高い会社であり、また値上げ前の東急電鉄の運賃は安い傾向のある都市部私鉄でも安いほうであり、さらには東急沿線の住民は経済的に豊かな層が中心であるため、大反発は起こらなかった。

東急電鉄はサービスのよさで値上げへの反発が起こりにくかった
東急電鉄はサービスのよさで値上げへの反発が起こりにくかった写真:イメージマート

 JR東日本の場合は、定期券の割引率が高い上に、かつ都市部の安い運賃の体系を変えるということで反発が起きているということだ。

 終電の繰り上げは広く受け入れられたものの、鉄道の本数削減には反発が強く、いまの運賃体系のまま運行にかかる経費を削減するなら、これ以上都市部の列車本数を減らす、すなわち人を詰め込むだけ詰め込むという、あまり感心しない方法を採用するしかなくなってしまう。

 こういう事態を避けるための値上げではある。

 どこの鉄道事業者も、乗客がいるならそれなりに本数を走らせたいと考え、さらには多くの人に乗ってもらいたいと考えるはずである。乗りにくいような列車ダイヤを提供することや、少ない車両に詰め込むといったことは、どこもやりたくないはずである。

 私たちが快適に鉄道を利用できるようにするために、一定の値上げはやむを得ないことである。

 この一年は、さまざまな鉄道事業者が運賃・料金値上げに向けて動くことだろう。

 いっぽうで、サービス水準を下げるということはあってはならない。

 その意味では、3月ダイヤ改正で本格的に導入される、中央線グリーン車への期待は高い。

万博アクセス鉄道への期待

 1月19日には、Osaka Metro中央線でコスモスクエア~夢洲間が開業する。万博の開催にともない、Osaka Metro中央線だけではなく、関西圏へのアクセスも注目される。

 3月15日ダイヤ改正では万博関連の動きが多い。

 JR東海は、早朝時間帯に多くの下り「のぞみ」を運行し、万博に行こうとする人を運べるだけ運ぼうとしている。

 JR九州は、朝6時00分鹿児島中央発、9時59分新大阪着の「さくら」を週末中心に運行する。

 JR西日本では、新大阪から桜島まで直通する「エキスポライナー」を設定し、新幹線からのアクセス客を受ける。桜島からはバスによるアクセスとなる。

 近鉄では、2月22日のダイヤ改正で名阪特急を増発する。

 万博があるゆえに鉄道輸送が向上するということを期待したい。こういうことがないと鉄道関連はよくならない、という実情はあるのだが。

 利用者への負担増はあるものの、サービスの水準を維持し、さらに万博を機に鉄道サービスの向上が期待できる2025年になってほしい。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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