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産経サイト「街の声の女性、ピースボートスタッフに酷似」を削除

楊井人文弁護士
ピースボート側の抗議文を掲載した産経ニュースサイト(2016年6月17日)

【GoHooレポート6月17日】産経新聞は6月16日夕、ニュースサイトに「TBS番組『街の声』の20代女性が被災地リポートしたピースボートスタッフに酷似していた?!『さくらじゃないか』との声続出」と題する記事を掲載した。しかし、ピースボートが「記事内の女性は当団体スタッフではない」として産経側に訂正を求め、強く抗議。記事は16日夜の時点でアクセスランキング最上位になっていたが、17日午前中に削除された(追記あり)。

ピースボート災害ボランティアセンターの産経新聞者宛て抗議文
ピースボート災害ボランティアセンターの産経新聞者宛て抗議文

問題の記事は、6月15日夕、東京都の舛添要一知事辞任に関連して、東京都内で民放の街頭インタビューに応じた女性が、熊本地震後にリポートしたピースボート災害ボランティアセンターの女性スタッフと酷似している指摘し、ネット上で同様の指摘が相次いでいることを無批判に報じていた。

削除された産経ニュースサイトの記事(2016年6月16日掲載)
削除された産経ニュースサイトの記事(2016年6月16日掲載)

しかし、同センターによると、この女性スタッフは5月以降、現在も熊本の災害支援活動のため現地で活動しており、山本隆代表理事は日本報道検証機構の取材に対し「デマが流布されて、これまでの支援活動に影響が出るのではないかと本人は非常に悔しい思いをして、涙ぐんでいた。削除して済むことではない。非常に怒りを感じるし、残念だ」と話している。

山本氏によると、17日午前中に産経新聞のニュースサイト担当者から連絡があり、執筆記者に確認の上、訂正を出す方向だと言われたという。

17日正午すぎ、産経のニュースサイトには、同センターから抗議があったとの記事が掲載され、抗議文の全文も引用された。

【追記】

産経新聞は17日午後、ピースボート災害ボランティアセンターへの回答文をニュースサイトに掲載した。その中で、同センターへの取材を怠った過ちを認め、「貴団体およびスタッフに多大なご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします」と陳謝した。

これを受け、同センターは、「このような安易な取材姿勢により、すでにインターネット上で拡散されてしまったいわれのない誹謗中傷が当該女性スタッフをひどく傷つけた事実を十分に反省し、二度と同じようなことが繰り返されないよう再発予防を徹底していただきたい」などとするコメントをFacebook上で発表した。

回答書

平成28年6月17日

6月16日に産経ニュースで報じた「TBS番組『街の声』の20代女性がピースボートスタッフに酷似していた?! 『さくらじゃないか』との声続出」の記事に関して、貴団体の抗議に回答いたします。

当該記事は6月16日にインターネット上で話題になっていた事象を記事化したものです。ご指摘通り、記事化する際、TBSおよびテレビ朝日に取材するだけでなく、貴団体にも取材すべきだったにもかかわらず、これを怠っておりました。

貴団体およびスタッフに多大なご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。

取り急ぎ、当該記事は産経ニュースおよび関連サイトから削除しました。代わって貴団体の抗議文を掲載しております。この回答文も全文を産経ニュースに掲載いたします。

産経ニュースサイト2016年6月17日掲載「ピースボート災害ボランティアセンターへの回答書

回答書は、当団体および当該女性スタッフに多大な迷惑をかけたことに対する謝罪と、記事化するに際して当団体への取材を怠っていたことを全面的に認める内容です。

このような安易な取材姿勢により、すでにインターネット上で拡散されてしまったいわれのない誹謗中傷が当該女性スタッフをひどく傷つけた事実を十分に反省し、二度と同じようなことが繰り返されないよう再発予防を徹底していただきたいと考えています。

なお、今回の一連の出来事は、「産経ニュース」の記事により広がったものではありますが、そもそもまったくの事実と反する個人のSNSによるコメントが、さらに事実を確認せず拡散された経緯があります。事実と異なるSNS情報が噂話として広がることで、個人の人権と安全を著しく損なう危険性があることを、全国のネットユーザーの皆様にも理解が広がることを期待しています。

ピースボート災害ボランティアセンターFacebookより(2016年6月17日掲載)

(*1) 見出しが誤解を招く恐れがあるとの指摘を受け、修正しました(「女性は熊本で支援活動中」との文言を削除)。(2016/6/17 18:20)

(*2) 産経新聞のニュースサイトに謝罪文が掲載されたことを追記しました。(2016/6/17 18:50)

(*3) ピースボート災害ボランティアセンターがコメントを発表したため、追記しました。(2016/6/17 19:30)

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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