ブルーボトルコーヒー中目黒カフェ誕生秘話、通りをはさんで10年お互いを見つめていた2人の男
サードウェーブコーヒーの雄、ブルーボトルコーヒーが日本に上陸して、早2年。1号店の清澄白河から始まったブルーボトルコーヒーの出店もすでに5店舗目になります。今回、オープンするのはブルーボトルコーヒー中目黒カフェ。場所は駒沢通りの中目黒と祐天寺の中間ぐらいの少し中目黒寄りの場所、正直駅からそれほど近い場所ではありません。
しかし、今回この中目黒カフェオープンに当たって、このオープンを巡る人たちの愛情がその新店舗の建物そのものからスタートしていたという話聞き、オープンを控えたブルーボトルコーヒー中目黒カフェにお邪魔してきました。
先に種明かしをしてしまうと、この建物、実は私の友人のご実家が営まれていた工場で「今度!実家の工場がブルーボトルコーヒーになるんだよ」とあまりにも面白いことを言うので、それは話をとにかく聞かせてくださいとなったわけです。
この日、ブルーボトルコーヒー中目黒カフェの2階にあるオフィスに集まっていただいたのは、今回の中目黒カフェオープンのキーマン4人。
- ブルーボトルコーヒージャパン取締役 井川沙紀さん
- スキーマ建築計画 長坂常さん
- 家主である大槻電機製作所の大槻正夫さん
- そして実は影のキーマンである家主ご子息の大槻幸夫さん
そして、この日のインタビューは私も何度もインタビューをしたことがあるのですが、過去に類を見ないものになったのです。なんていうんでしょうかこれ、同窓会で「実はおれお前のことが、、、」みたいな感じなんですよ。
長坂常さん「ぼくは98年ぐらいからこの辺に住んでいて、この建物にずっと目をつけていたんです。2007年から10年ぐらいは、この建物の向かいにオフィスを構えていて、毎日いい建物だなあって眺めていて、、、ほらこの斜めの屋根もいいし、屋上への階段がすごくいいでしょ。ホント毎日見てたんです」
大槻正夫さん「うちがこの工場を建てたときは変な屋根で教会でも立つんじゃないかって言われてねえ。で、私も長坂さんのオフィスができたときにすごく気になっててねえ。あの人たちはどういうお仕事している人たちなんだろうかって。ずらっとアップルのパソコンが並んでいて、よく見てたんだよね」
大槻幸夫さん「この工場は私が知人と起業した際のオフィスとして使ってたこともあった時期もあるんです。去年ぐらいから工場を操業停止した後の、この建物について父と話すようになっていたんです。なので、井川さんに清澄白河の店舗でお会いした際に、中目黒でご検討の際にはぜひご連絡をと話してみたんですよ。そしたら話がどんどんあっという間にまとまっていって、すごくびっくりです」
井川沙紀さん「中目黒はずっとブルーボトルコーヒーを出したかった場所で、いろいろと見ていたんです。でも、どれもあまり決め手がなかったんです。そしたら大槻さんの物件のお話を聞かせてもらって、年末にCEOのブライアンが来た時に建物を見てもらったんです。すると見るなり、即決でものすごく気に入ってしまって、ビューティフルだ!とにかくここだ!って一瞬で決まっちゃったんですよ」
なお、ジェームスにはオープニングレセプションの時に少しお話をうかがったのですが、「この建物最高だろ!」って何度もおっしゃってました。
井川沙紀さん「それでもう中目黒はここだ!と決まってしまったので、ブルーボトルコーヒー1号店から設計をお願いしている長坂さんに次はここですよって話をしに行ったら、その建物すげえ知ってる。あそこいいでしょ!ってこの展開なんなんですかって感じで(笑)」
長坂常さん「びっくりしたのはこっちであの毎日見ていて、いつか借りたいって思ってた物件の設計をまさかやるとは思わないでしょ。もう大好きで片思いしてた建物だから、設計してても楽しくて、うまく中二階も半地下も作れたしよかったですよ」
大槻正夫さん「今度、設計をしてくださるのはこの方ですって紹介されて、話してみたら、あのお向かいにずっといた人って言うでしょ。びっくりしちゃって。そして、工場をこんな風にカフェにしてくれてすごいことだなあって」
大槻幸夫さん「ここって、もう最近は家族とごく近い人たちしか入らなくなっていたんですよ。そこにね、こんなにたくさんの人が来てくれて、ホント感無量です」
みなさんのお話をうかがって、表のブルーボトルコーヒーの看板を見ると、なんかもう何年後かにここにこのカフェができることがあらかじめ決まっていたのかのように、ものぴったりと看板がはまって、しっくりきているんです。この土地の縁みたいなものがここにこの人たちを自然と集めたんじゃないって気持ちにもなってくるほどなんです。
長坂常さん「ブルーボトルコーヒーの店舗の設計をするときはこれまではテーマがあったり、イメージをつたえるためのいろんな写真がジェームスから送られてくるんです。でも今回はとにかくこの建物をジェームスも見ていて気に入っていて、ぼくも大好きな建物だし、ジェームスと下見のときに雑談している間に勝手にプランが固まっていったんですよね」
井川沙紀さん「そこは少し笑い話があって、長坂さんがラフを送ってきてくれて、すぐにジェームスにも見せたら『あの写真の通りだね!』って言うんです。それで私は『え!?』ってなったんです。よくよく話を聞いてみると、ジェームスは写真を長坂さんに送る準備はしたんだけど、実際はメールは下書きのままで送ってなかったんです(笑)。でも、そのぐらいにみんなの中でこの新しいお店のイメージがとっくに統一されていたんだと思うんです」
ブルーボトルコーヒー1号店である清澄白河にはコーヒー豆の製造拠点という役割がありました。そこから4号店まではいわゆる店舗。しかしこの5号店である中目黒カフェにはこれまでの店舗とは違う役割が期待されています。
井川沙紀さん「中目黒の店舗は最初からコーヒー好きを育てる場所として考えられていました。だから、トレーニングルーム(中二階)とかワークショップとかギャラリーにも使えるスペース(半地下)というのが設計には必須条件でした。他の店舗ではそこまでじっくりできないかもしれないですが、ここならバリスタといっしょに好きな豆を発見するというようなコーヒーのことで困ったらここにくれば解決するようなラボ的な拠点にしていきたいんです」
私が中目黒カフェの店舗を実際に見て、実はいちばんびっくりしたのが席数です。これだけの広さの店舗でありながら、なんと8席。でも、お話を聞くと席数を少なくしている理由も納得です。
井川沙紀さん「コーヒー好きの人がわざわざくる出向いてくださるような場所にしたいので、あえてちょっと駅から外れたところを狙っていたんです。地域の人にも愛してもらえるお店にしたいから、住宅街の中で駅から少し歩いてくれるこの距離がちょうどよかったんです」
10年近い時間、通りを挟んで見つめあっていた2人がブルーボトルコーヒーという縁で結ばれた結果が、このブルーボトルコーヒー中目黒カフェです。
コーヒーカルチャーの拠点という未来を託されたお店がこんな経緯で生まれたこと、話を聞いてみないとわからないですよね。ここは、ただの中目黒のおしゃれカフェとして消費されるようなお店じゃないんですよ。
ひょっとするとオープンしたら(しばらくは)混雑してしまうからしれませんが、順番待ちをしているときにこのブルーボトルコーヒー中目黒カフェの誕生秘話でも読んでいただければ幸いです。
ブルーボトルコーヒー中目黒カフェ
住所:東京都目黒区中目黒3-23-16
営業時間:8時~19時
ブルーボトルコーヒーオンラインストア