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東京オリンピック・テニス競技、男子シングルスでズベレフが、女子シングルスでベンチッチが金メダル獲得!

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
東京2020オリンピックの女子シングルスで、金メダルを獲得したベンチッチ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ベンチッチが、スイス女子選手として初めて金メダルを獲得!!

 東京2020オリンピック・テニス競技の女子シングルス決勝で、第9シードのベリンダ・ベンチッチ(WTAランキング12位、大会時、以下同、スイス)が、ノーシードで勝ち上がって来たマルケタ・ボンドロウソバ(42位、チェコ)を、7-5、2-6、6-3で破って、見事金メダルを獲得した。

「夢が叶って本当に嬉しい。ここ(東京)で起きたことを言葉で表せない。これまでで最高の栄誉で、今後もこれを超えるようなものはないです。オリンピックで頂点に立てて、本当に嬉しいし感謝しています」

 こう語ったベンチッチは、オリンピック・テニス競技で、スイス女子選手として初めてのゴールドメダリストとなった。

 また、スイス勢としては、1992年バルセロナオリンピック・男子シングルスのマルク・ロセ、2008年北京オリンピック・男子ダブルスのロジャー・フェデラー/スタン・バブリンカに続く、3番目のゴールドメダリストとなった。

「オリンピックに来られて本当に嬉しい。もし、今ここでキャリアが終わってもいいくらい嬉しいです。今回成し遂げたことは誰にも変えられない。この大会で力を貸してくれたみんなに感謝しています」

金メダルを決めた瞬間、喜ぶベンチッチ
金メダルを決めた瞬間、喜ぶベンチッチ写真:ロイター/アフロ

 カウンターパンチャーであるベンチッチは、スピードのあるグランドストロークを深く打ち、特にバックハンドにキレがあった。また、ドライブボレーを駆使してネットにも積極的に出て、オールラウンドプレーを展開した。結局、ベンチッチは、29本のウィナーを決めて、2時間30分におよんだフルセットの激戦の末、ボンドロウソバを振り切った。

 また、ベンチッチは、ビクトリヤ・ゴルビッチ(50位、スイス)と組んだ女子ダブルスで銀メダルを獲得して、東京オリンピックで2つのメダルを獲得した。

「2つのメダルを獲得できるのは本当に素晴らしい。メダルやタイトルだけでなく、永遠に残る思い出を作ることが大切です。ビッキー(ゴルビッチ)と一緒にこの(メダルの)ことを分かち合えるなんて信じられないです」(ベンチッチ)

 東京でオリンピックデビューを飾った24歳のベンチッチは、元ジュニア世界ナンバーワンで、スイスの偉大な先輩であるマルチナ・ヒンギスにも才能を認められていた。2017年春には左手首の手術をして5カ月戦列から離脱したことがあったものの、ついに大きな舞台で結果を残してみせた。

女子ダブルスで銀メダルを獲得したベンチッチ(右)とゴルビッチ
女子ダブルスで銀メダルを獲得したベンチッチ(右)とゴルビッチ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 決勝で敗れたボンドロウソバは、「メダルが取れて嬉しい」と素直に喜んだ。3回戦で、第2シードの大坂なおみ(2位、日本)を破った好調を維持して決勝まで駆け上がり、銀メダルを獲得した。

 3位決定戦では、第4シードのエリナ・スビトリナ(6位、ウクライナ)が、第15シードのエレナ・リバキナ(20位、カザフスタン)を、1-6、7-6(5)、6-4、2時間24分におよんだフルセットの逆転勝ちを収めて、銅メダルを獲得した。テニス競技で、スビトリナは、ウクライナで初のメダリストとなった。

男子シングルスは、ズベレフが初の金メダルを獲得!

 テニス競技の男子シングルスでは、第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ATPランキング5位、大会時、以下同、ドイツ)が、第12シードのカレン・ハチャノフ(25位、ロシアオリンピック委員会)を、6-3、6-1で下して、金メダルを獲得した。

 テニス競技のシングルスで、ズベレフは、ドイツ男子選手として初めてのゴールドメダリストになった。ドイツ勢で、シングルスでの金メダル獲得は、1988年ソウルオリンピック・女子シングルスのシュテフィ・グラフ以来となった。

「オリンピックでの金メダルは、他のタイトルと比較できないです。スポーツで最大のイベントで、比べられないです。とりわけテニスでは。オリンピックの金メダルは、自分にとってこれ以上ないほど価値あるものです。自分のためでだけでなく、ドイツのために戦っているから」

男子シングルスで金メダルを獲得したズベレフ
男子シングルスで金メダルを獲得したズベレフ写真:ロイター/アフロ

 決勝では、ズベレフの79分間の完勝だった。

 ズベレフは、時速210kmを超えるサーブが好調で、サービスエース6本を決め、ファーストサーブでのポイント獲得率は83%に達した。また、サーブからの3球目攻撃がよく決まり、しかも攻めが早く、スピードの乗ったグランドストロークが、ハチャノフサイドに深く入り、27本のウィナーを記録した。

「今は最高の気分です。ゴールドメダリストなんて信じられない。あまりにもかけ離れた話だから、夢にも見たことなかったです」

 24歳のズベレフは、東京でオリンピックデビューを飾ったが、初出場で見事金メダルを獲得し、改めて非凡な才能を証明してみせた。

 決勝で敗れて、銀メダルを獲得したハチャノフは、「金メダルを夢見ていたけど、次のオリンピックで挑戦するよ」と語り、2024年パリオリンピックへの意欲を示した。

メダルを獲得できなかったジョコビッチ。年間ゴールデンスラム達成の夢も断たれた
メダルを獲得できなかったジョコビッチ。年間ゴールデンスラム達成の夢も断たれた写真:ロイター/アフロ

 3位決定戦では、第6シードのパブロ・カレーニョブスタ(11位、スペイン)が、第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)を、6-4、6-7(6)、6-3で倒して、銅メダルを獲得した。

 カレーニョブスタは、2時間47分におよんだフルセットで、6回目のマッチポイントをもぎ取って、ジョコビッチからの大きな勝利を手にした。

 ファイナルセット第3ゲーム直後に、ネットのポールにラケットを叩きつけて壊し、コードバイオレーション(警告)を受けたジョコビッチ。メダルゼロに終わり、年間ゴールデンスラム達成への夢も断たれた。

 悔いはないとジョコビッチは振り返ったが、日本特有の蒸し暑さに苦しめられて疲労が蓄積していき、最終的にミックスダブルスの3位決定戦を右肩のけがで棄権した。もともとジョコビッチ本人の意向ではあったとはいえ、ミックスダブルスへの出場自体に最後まで疑問が残った。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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