デビュー2戦目圧勝の天心 なぜKO勝利に繋がらなかったのか
18日、東京・有明アリーナでボクシング東洋太平洋スーパーバンタム級8位の那須川天心(25=帝拳)が、バンタム級王者ルイス・グスマン(メキシコ)とフェザー級(55.7キロ以下契約)8回戦を行った。
試合の展開
デビュー2戦目に臨む天心、入場前にもかかわらず、名前がコールされただけで客席から大歓声が沸き起こった。
ガウンを脱ぎ、驚いたのは上半身。明らかに前回の試合より筋肉が盛り上がり、ボクサー仕様になっていた。
試合開始のゴングが鳴ると、天心は素早いジャブをつき様子を見る。
緩やかな立ち上がりになると思った瞬間、グスマンの右に対しカウンターを打ち込み、初回からいきなりダウンを奪った。
あまりの急展開に会場も騒然となった。
早期決着を予感させたが、グスマンも負けじと応戦。プロで12戦戦っているだけあって、立て直すまでにそう時間はかからなかった。
しかし、天心が再びペースを掴み、7回にもカウンターでダウンを奪った。
8回にはKO寸前まで追い込んだが、グスマンも意地を見せた。勝敗は判定までもつれこみ、ジャッジ3者とも80-70をつける採点で、天心の勝利となった。
KOを逃した理由
天心は試合後のインタビューで「ダウンが取れて、進化してる姿は見せられたとは思う。でも、やっぱり最後がうまくいかない。成長している姿を皆さんに見せることができたと思う」と話している。
KO勝利は逃したものの、デビュー2戦目としては十分すぎる内容だ。スピードやタイミングなど、すでに世界ランカークラスの実力を持っている。
今後の課題があるとすれば、パンチが当たった後の追撃だ。
天心はディフェンス能力が高いため、相手のパンチに瞬時に反応できる。反面、相手を追い込んでも、反撃されればすぐディフェンスにまわってしまう。
私も過去、同じような状況で相手を追い込みきれなかったことがある。KOに繋げるにはリスクを取ってでも、近距離で攻撃に徹する必要がある。
短いラウンドなら自分の得意な距離で戦い抜けるが、ボクシングは長丁場だ。得意な中間距離だけでなく、接近戦での打ち合いなど引き出しは多い方が良い。
今後経験を積んでいけば、より幅広いボクシングが展開できるだろう。
今後の期待
長くキックボクシングで戦ってきたため、完全にボクシングに慣れるまではまだ時間がかかる。
しかし、驚くべきスピードで進化しているのは確かだ。
天心は試合後「僕も絶対にチャンピオンなるんで、みんなも自分のチャンピオンベルトを見つけて、必ずチャンピオンになってください。どんどん強くなってくんで、これからも注目してくれたら嬉しいですし、これからも期待してください」と会場のファンに語った。
筆者も取材のため、日頃から試合会場を訪れているが、この日は子供や女性の声援が多く聞かれた。
客層も普段と違い若い世代が多く、天心の影響力の高さを感じた。
3戦目は来年1月頃の予定だ。まだプロで2戦ではあるが、これほど今後が楽しみな選手はいない。
成長の過程も楽しみながら、世界で活躍する選手になって欲しい。