小山怜央四段、フリークラスからC級2組に昇級! NHK杯で谷川浩司17世名人に勝ち、規定の成績に到達
8月11日。第74回NHK杯将棋トーナメント▲小山怜央四段-△谷川浩司17世名人戦が放映されました。棋譜は公式ページをご覧ください。
結果は79手で小山四段の勝利。3回戦進出を決めました。
小山四段は棋士編入試験に合格して2023年4月に棋士となり、フリークラスに編入しました。
本局の勝利で直近30局の成績が20勝10敗(勝率0.666)となり、規定の成績に到達して、フリークラスからC級2組への昇級を決めました。
本局の収録日(7月15日)には日本将棋連盟からリリースが出されました。小山四段は次のようにコメントしています。
小山「(昇級は)1つの大きな目標でしたし、ほっとしています。1年半くらいの期間でしたが、昇級できなければ引退という中で非常に長く感じました」
小山四段は来年2025年度から順位戦C級2組に参加します。
対照的な経歴
谷川17世名人が奨励会を抜けて四段に昇段し、棋士になったのは14歳8か月。藤井聡太現七冠、加藤一二三現九段に次いで史上3位の年少記録です。
数々の輝かしい実績を誇る谷川17世名人。NHK杯は1985年度、23歳の若さで初優勝を飾っています。
小山さんは中学3年のとき、奨励会試験を受験。残念ながら不合格となります。以後はアマチュア棋界で活躍。高校生のときには谷川現17世名人に多面指しで指導を受けたこともあるそうです。
小山さんは大学4年のとき、アマチュア名人戦で優勝。奨励会三段リーグの編入試験を受けたものの、ここでもまた不合格となります。
小山さんが棋士編入試験に合格し、棋士になったのは29歳のとき。谷川17世名人とは対照的な経歴といえそうです。
小山四段はNHK杯は今期が初めての参加となります。予選では高崎一生七段、渡辺正和六段、石田直裕五段を破って、本戦出場を決めました。
NHK杯は予選を抜けて本戦に進むまでも大変ですが、小山四段はここで一気に3勝を挙げて、フリークラス脱出に近づいたわけです。
小山四段は本戦1回戦で大石直嗣七段に勝利。2回戦でシードの谷川17世名人と当たりました。
谷川「(小山四段は)棋譜もかなり調べましたけれども、時間の短い将棋が特に勝率が高いようですし、また粘り強さというのもあると感じました。できるだけ早い段階でなんとか前例から離れてですね、中終盤のねじり合いの熱戦が指せればというふうに思っております」
小山「谷川17世名人は私が将棋を始めたときからもう、トップで活躍されてた方なので。そういう先生と対戦できるということは本当に貴重な機会で、もうドキドキしております。一応私なりに準備はしてきたつもりなので、力を出し切れるようにがんばりたいと思います」
小山四段、快勝
本局は小山四段先手。後手の谷川17世名人が一手損角換わりを選び、相早繰り銀から攻め合いになりました。
谷川「あまり経験のない形で。しかもちょっと、角を4四に引いた手がかなり突っ張った手で」
50手目。谷川17世名人は攻めの銀を前へと進めていきます。
小山「いや実は△6六銀って出てくるのを、けっこう普通の手なんですけど、うっかりしてしまって。いきなり、ちょっとつらくなったなと思って。ちょっと悲観してました」
谷川「△6六銀出たあたりはまずまずかなとは思ってたんですけれども」
51手目。小山四段は手裏剣のように谷川陣に歩を打ち捨て、形を乱します。そのあとで自陣に手を戻す複雑な組み合わせ。難しい中盤で力を見せた場面でした。
谷川「▲6二歩、いったん効かされて。こちらもいやな形になりましたので。ちょっとどういう方針でいくかわからなかったですね。本譜はちょっと本当に、いちばんわるい順を選んでしまいました」
谷川17世名人は攻めに出ます。対して小山四段は的確に対応し、リードを奪いました。
終盤、勝勢を築いた小山四段は、「光速の寄せ」で知られる谷川17世名人のお株を奪うような鋭い手を連発。一気に谷川玉を受けなしに追い込みました。
谷川「考えがまとまらなくなってしまって。時間を使った割には、ほとんど読みに内容がなくって。(競り合う)終盤戦にならなかったのが残念ですね」
79手目。小山四段はタダで取られるところに王手で銀を打ちます。この銀を取っても取らなくても、谷川玉は詰み。谷川17世名人が投了して、小山四段の快勝となりました。
小山「フリークラス棋士として入って。そこからの一つの大きな目標だったので、それはとても嬉しいですね」