「ペヤング」まるか食品の謎商標登録について
「ペヤング」でおなじみのまるか食品が姉妹商品「ペヨング ソース焼きそば」を販売開始して話題になっています(参照記事)。著名なブランドネームを生かしたバズマーケティングとしては面白い試みですね。
当然「ペヨング」の商標登録出願を行なっているのだろうと思って調べてみると、「ペヨング」に加えて「ペユング」の商標登録出願が行なわれていました。今後「ペユング」という商品も出す予定なのか、新商品の名称を「ペヨング」にするか「ペユング」にするかぎりぎりまで確定しなかったので両方を出願したのか、それとも、類似範囲をできるだけ広く押さえるためなのか、はよくわかりません。商標権は類似範囲まで及ぶのですが、「ペヨング」には類似しないが「ペユング」には類似する商標も理論上はあり得ないわけではないので念には念を入れてということかもしれません。
さらに、この件を調べたときに、ついでに発見したのですが、まるか食品は1973年に「ペヤング」に加えて「ペアング」の商標登録出願も行なっていました。「ペヤング」と同日出願で指定商品も同一です。更新料も支払われており権利は現在も存続しています。「ペアング」という名称の商品が販売された形跡は少なくともネット上では見つかりません。
「ペヤング」の由来はペア+ヤングであるそうなので(参照Wikipediaエントリー)、商品名表記を「ペヤング」にするか「ペアング」にするか、ぎりぎりまでもめていたので両方出願することにしたのかもしれませんが、「ペアング」の更新料を払っていることを考えると、類似商標の権利範囲をできるだけ広く押さえるために「ペアング」も登録しておいたと見た方が自然でしょう(そう考えると「ペヨング」と「ペユング」も同じ意図である可能性が高そうです)。
なお、「ペヤング」も「ペアング」も野菜ジュースを指定商品に加えていますが、実際にそういう製品が出た形跡は見つかりません、そういう計画はあるということなんでしょう(焼きそばにジュースが合うのはわかります)。
ところで、商標は先願主義なので、類似商標が既に登録されている場合には登録できませんが、その既登録商標が自分のものである場合には登録可能です(商標法4条1項11号)。
特許の場合は、自分自身による公開を理由に(6ヶ月の猶予期間が過ぎれば)自分の出願の新規性・進歩性が否定されてしまうことがありますが、商標の場合はそんなことはありません。ゆえに、重要度が高い商標の場合には、いろいろなバージョン(英語、カナ、ロゴ、デザイン、表記違い等)で出願しておき、権利範囲をできるだけ広くしておくことは有効です(全部一度に出願する必要はなくビジネスの重要性の増大にしたがって段階的に増やしていくことも考えられます)。
なお、まったくの余談ですが、自己の登録かどうかのチェックは、名称+住所で行なわれますので、引っ越した時に商標登録の住所変更をしておかないと、それと類似の商標登録出願を自分でした際に、"他人"の商標登録と類似と判断されて拒絶理由通知が打たれます("商標あるある"です)。この場合には、商標登録の住所変更届けを出してから、その旨審査官に意見書で応答すればまったく問題ありません。