豪雨のかたち 短時型と長時型
南北に走る「降水バンド」
なぜ、こんなにも動かないのだろう?
台風18号が愛知県知多半島に上陸した9日午後、関東地方には三浦半島から栃木県にかけ、すーっと北へ伸びる、線状の雨雲ができ始めました。雨雲は強弱を繰り返しながら、10日にかけ停滞し、栃木・茨城県に記録的な豪雨被害を引き起こしたのです。
このような線状の降水帯(降水バンド rainbands)は梅雨から秋雨シーズンにかけ、全国で発生し、豪雨原因の筆頭に挙げられる現象です。今回の豪雨では降水バンドが形成されたことよりも、なぜ24時間にもわたり停滞し続けたのか?この思いがとても強いです。
雨雲の動きを止めた高気圧
左図は10日午前3時の天気図です。本州は低気圧と台風17号にはさまれた格好で、ちょうど関東付近で南寄りの風と東寄りの風がぶつかり、線状の雲域が発生しています。
発達した雨雲ほど動きが遅くなる、停滞する傾向が強まります。それでも数時間もすると移動したり、消滅することが多く、今回のように長時間にわたり線状の雨雲が動かなかった例は珍しい。北海道の北にある優勢な高気圧(ブロッキング)が大気の流れを固定したため、雨雲が長く居座ったのでしょう。低気圧や前線に目が行きがちですが、高気圧の存在もまた大きいのです。
豪雨のかたち「短時間型」と「長時間型」
豪雨災害を引き起こす雨の降り方には2つのパターンあります。
ひとつは短時間に猛烈な雨が降る「短時間型」です。昨年8月の広島豪雨では広島市安佐北区三入(ミイリ)で3時間に217.5ミリもの雨が降りました。8月、一か月に降る雨量がわずか3時間で降ってしまったのです。
もうひとつは、今回の栃木県や宮城県のように、雨が数日間にわたり降り続ける「長時間型」です。栃木県日光市今市では約4日間で636ミリ、宮城県丸森町筆甫(ヒッポ)は約6日間で573ミリを記録し、一年間に降る雨量の約3割から4割に達しました。
つい、豪雨というと猛烈な雨をイメージしてしまいますが、時間をかけて進行する豪雨もあるのです。とくに、今回のように上流の山間部で大量の雨が降った場合、河川の増水、氾らんの危険性が非常に高くなります。降り続く雨の怖さを思い返しました。
【参考資料】
気象庁予報部:大雨と雷及び突風に関する関東甲信地方気象情報第6号,平成27年9月10日23時34分
仙台管区気象台:大雨と高波に関する東北地方気象情報第10号,平成27年9月11日15時54分
気象庁:8月20日の三入地域気象観測所(広島県)の降水量について,平成26年8月20日