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仮想シミュレーション。V3帝京大学に勝つチームを編成。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
(写真:つのだよしお/アフロ)

 このほど約9年ぶりにラグビー日本代表のヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズは、「必ずや若い世代を発掘しなくては」。昨秋のワールドカップフランス大会時のメンバーにベテランや中堅が多かったのを受けて発言した。 

写真:ロイター/アフロ

 好素材に高い基準をシェアするのが、ジョーンズの狙いなのだろう。クロスボーダーマッチ不出場のクラブから選手を招いた今年2月の候補キャンプへは、9名の大学生が参加していた。

 そのひとりは高本とむ。帝京大学の4年生で、リコーブラックラムズ東京加入が決まっている快速ウイングだ。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 猛練習で鳴らす所属先にあって、3年目から全体の流れとは別にスピードトレーニング、ウェイトトレーニングを自らに課した。その心はこうだ。

「自分がどれだけ頑張れるかで将来の結果、その次の試合の結果が変わってくるとわかっていたので、しんどくても頑張れましたね。言ってみたら、自分の身体が商売道具なので」

 今年度の学生ラグビーシーンでは、2017年まで9連覇の同大が3連覇を達成。自らを追い込める選手たちが有形、無形の強さを醸し、落ち着いた試合運びで他校を圧倒した。

今年もやります

 本欄では昨年2月、昨季、大学日本一になった帝京大学を倒す仮想チームを編成している。

仮想シミュレーション。大学日本一の帝京大学にどう勝つか。【ラグビー雑記帳】

 前述のジョーンズが過去にした下記発言をもとに、「打倒帝京大学」のプランとそれに見合った選手を編んだ格好だ。

「分析というものは、何かその試合だけのスペシャルプレーのようなものを編み出すことではありません。相手が勝つ方法を三つ挙げて、それを無にするにはどうすべきか、次に相手の弱みを突くにはどうすればいいのかを考えることです」

(『ラグビーマガジン別冊盛夏号2010 ラグビークリニックVol.22』(ベースボール・マガジン社)の「世界一の視点! ワールドカップ優勝コンビのラグビー塾」より)

今回は、2023年度の帝京大学へ挑む仮想スコッドを作った。選考の過程はこうだ。

1、帝京大学の予想先発メンバーの特徴(強み、弱み)を分析する。
2、上記を踏まえ、「相手の強みを消し、相手の弱みを突く」ための計画を練る。
3、他大学から「2」を遂行しうる登録メンバー23名を編成する。
※3=外国人枠は現行ルールにのっとりオン・ザ・ピッチ3名

 ちなみに前提を述べれば、1年間ないしは長い年月をかけて錬成したチームに、同じカテゴリーの選手からなる混成チームが勝つことはまずありえない。

 ラグビーがチームスポーツであり、コンタクトの多さと相まって偶発性が少なく、スクラム、ラインアウトをはじめとした各種プレーで子細なすり合わせが求められるからだ。

 もし「打倒、帝京大学」に相応しいスコッドが編めたとしても、「少なくとも1年以上はこのメンバーで活動する」「練習相手となる控えメンバーにも主力組に近い勤勉さ、強靭さが求められる」「帝京大学と同格の練習環境を与える」といった条件を満たさなければ勝つのはかなり難しい。

1、同大学の予想先発メンバーの特徴(強み、弱み)を分析する。

強み

A、コンタクトの強さ(突進、タックル、2人目の援護)
B、スクラム
C、両ウイングの決定力と技能

A、コンタクトの強さ(突進、タックル、2人目の援護)

本橋拓馬、尹礼温の両ロック、日本代表スコッド入りのフランカー青木恵斗らが序盤から圧をかけ、相手に疲れの出た終盤にフランカーの奥井章仁副将が「帝京は足、止まってない!」と仲間を鼓舞。畳みかける。

B、スクラム

 最前列中央のフッカーには江良颯主将が位置。強靭なうえに駆け引きに長ける。2月10日には、入団したクボタスピアーズ船橋・東京ベイの一員としてニュージーランドはチーフスとの「クロスボーダーラグビー2024」に出場。ここでも押した。

C、両ウイングの決定力と技能

 前述の高本が強さと速さでトライを奪う。相方の小村真也は、運動量やスキルで好チャンスメイク。ハイボールの競り合いにも強い。

弱み

A、フロントスリーの攻防

 原則的に弱みのないチームであるのを前提に、弱みと見られる点を挙げるとすれば攻めの組み立てか。

 スタンドオフの井上陽公らフロントスリーはロングキックを長所に味方フォワードを活かしてはいたが、前年度からの試合経験が限られたとあり好連係を見せる場面は限られた。

 決勝では明治大学が、仕掛けながらの揺さぶりでスコア。少機を掴んでいる。

2、「相手の強みを消し、相手の弱みを突く」ための計画を練る。

 強みの「A」のコンタクトでは向こうの重さへ鋭さ、低さ、個々の強さの合わせ技で対抗。特に防御で圧をかけ、その流れで強みの「C」を発揮しづらくさせる。弱みの「A」を鑑みれば、防御に加え細やかな展開とそれを実現できるキャラクターも欲しい。

 巨漢揃いのチームを倒す常套手段として、スペースへ蹴り続けるプランも共有したい。それは、強み「B」のスクラムを自陣ゴール前で発生させないためでもある。

3、「2」を遂行しうる登録メンバー23名を編成する。

 昨季のナンバーエイトに入った立正大学のユアン・ウィルソンは今季故障で欠場していたとあり、似た働きの期待されるハーダス・ロスマンを登用した。

 フォワードではリザーブの枚数も増やした。向こうの圧力に対抗するためだ。右プロップのタモエフォラウを交替させるタイミングで、大型ウイングのハインリッヒ・フルックスを投じる。

 フランカーの三木皓正はタックル、インサイドセンターの廣瀬雄也は連係攻撃とロングキックで試合を引き締める。

写真:つのだよしお/アフロ

写真:つのだよしお/アフロ

 筑波大学のナンバーエイトだった谷山隼大は、空中戦の強さ、キック力、タックルの激しさを加味してバックスリーに入れる。

写真:松尾/アフロスポーツ

1,山本敦輝(同志社大学4年)
2,佐藤健次(早稲田大学3年)
3,ヴェア・タモエフォラウ(京都産業大学4年)
4,山本嶺二郎(明治大学4年)
5,ソロモネ・フナキ(京都産業大学3年)
6,木戸大士郎(明治大学3年)
7,三木皓正(京都産業大学4年)
8,ハーダス・ロスマン(拓殖大学1年)
9,土永旭(京都産業大学3年)
10,伊藤耕太郎(明治大学4年)
11,海老澤琥珀(明治大学1年)
12,廣瀬雄也(明治大学4年)
13,野中健吾(早稲田大学2年)
14,矢崎由高(早稲田大学1年)
15,谷山隼大(筑波大学4年)
16,平生翔大(関西学院大学3年)
17,中山律希(明治大学4年)
18,為房慶次朗(明治大学4年)
19,梁川賢吉(筑波大学4年)
20,小林典大(関西学院大学2年)
21,パトリック・ヴァカタ(天理大学3年)
22,宮尾昌典(早稲田大学3年)
23,ハインリッヒ・フルックス(立正大学2年)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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