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GP優勝者よりも9位の自国ホープに。韓国は宇野昌磨のGP優勝をどう報じているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
宇野昌磨(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

日本の宇野昌磨が、グランプリ(GP)シリーズ第2戦カナダ大会で優勝した。

宇野にとっては五輪シーズンのGPシリーズ初戦で昨年のスケートアメリカ以来3度目のGP優勝。それも出場者唯一の300点超えの優勝となったが、お隣・韓国の反応が興味深い。

先日のGPシリーズ第1戦ロシア大会では羽生結弦の演技について詳しく報じられていたのに対し、今回の宇野の結果に関してはあまり大きく取り上げられていないのだ。

メインや見出しに名前が入った記事はなく、「一方、一位は301.10点の宇野昌磨だった」(『ジョイニュース24』)といった一行報道がほとんどで、演技について触れる媒体はほとんどなかった。

過去発言に失望の声が上がったことも

もっとも、そもそも韓国では宇野に対する関心は高いとは言えない。

今年2月に平昌五輪のテストイベントとして開催された四大陸選手権で宇野が銅メダルに輝いた際も、大会が韓国で行われたにもかかわらず記事は少なかった。

2015年には、四大陸選手権でのインタビュー動画がきっかけとなって注目を集めたこともあったが、残念ながら当時は宇野の発言に失望の声が上がるばかりだった。

(参考記事:韓国ファンがこんなにも宇野昌磨に厳しい理由

韓国で宇野に対する関心が上がらない一因には、羽生の人気と知名度が先行してしまっていることがあるかもしれない。

というのも、羽生は韓国でファンサイトまでつくられており、「ウセンキョルヒョン」という別名まで付けられるほど支持を集めている。

事実、今年4月の世界選手権で宇野が銀メダルを獲得した際も、優勝した羽生にばかりスポットライトが当たっていた。

両選手の実績も関係しているだろうが、韓国で羽生はキム・ヨナと共通点があるとして親しまれているだけに、羽生にばかり目が行っていることも無理はないかもしれない。

(参考記事:韓国から見た羽生結弦とキム・ヨナの3つの共通点

「羽生に似ている」韓国選手が話題をさらった

ただ、それにしても今大会は、宇野に関する報道があまりに目立っていない。最近は少なからず宇野に対する注目度も上がってきていただけに、なおさらそう感じてしまう。

例えば、昨年までは韓国の大手検索サイト『NAVER』で「宇野昌磨」と検索しても、羽生も掲載されている「人物情報」にその名は出なかったが、現在は受賞歴に生年月日まで掲載されているのだ。宇野が韓国でも知られる土壌は整いつつある。

それでも今回のGPシリーズ第2戦で宇野が脚光を浴びなかったのは、今大会で韓国のチャ・ジュンファンがシニアデビューを果たしたことが関係しているだろう。

昨年のジュニアグランプリシリーズ・ファイナルで3位に入り、韓国男子として初めて表彰台に登ったチャ・ジュンファンは、羽生を指導するブライアン・オーサーに師事していることでも話題を呼んでいる。

(参考記事:羽生結弦の師ブライアン・オーサーがチャ・ジュンファンを「羽生に似ている」と絶賛する理由

そんな自国の有望株の存在によって、宇野の存在が霞んでしまったということもあり得るだろう。

実際、今大会でチャ・ジュンファンは9位に終わったが、韓国では「ほろ苦いシニア・デビュー、チャ・ジュンファン9位で終わる」(『ノーカットニュース』)、「意欲が溢れすぎたか…チャ・ジュンファン、残念なデビュー戦」(『世界日報』)などと、宇野よりも結果を残せなかったチャ・ジュンファンのほうに重きを置いて報道されている。

いずれにしても、日本・韓国どちらの選手にとっても、平昌五輪に向けた重要な大会となるGPシリーズ。

大会は12月に日本で開かれるグランプリシリーズ・ファイナルまで続くが、この大会の結果によって、宇野に対する韓国の評価はどう変わるだろうか。羽生や自国のホープもさることながら五輪開催国として、成長著しい19歳に今からもっと注目しておいたほうが良いと思うのだが…。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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