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なぜセリエA優先のインテルはCL決勝進出も期待できる? 「3冠達成時と同レベル」の声も

中村大晃カルチョ・ライター
2024年2月4日、セリエAユヴェントス戦でのラウタロ・マルティネス(写真:ロイター/アフロ)

セリエAは25節を終え、インテルが首位を快走している。2位ユヴェントスとは勝ち点9差。さらにインテルは消化が1試合少ない。総得点・総失点ともリーグトップと、独走態勢に入った。

今季のインテルにとって、最優先の目標はリーグ優勝だ。達成すればユヴェントスに続き、リーグで2番目の優勝20回を達成する。優勝10回ごとにユニフォームにつけられるステッラ(星)が2つになるのだ。同じミラノを拠点とするミラン(優勝19回)を先んじることができる。

実際、2月16日のサレルニターナ戦でも、シモーネ・インザーギ監督は主力を温存しなかった。ミッドウィークにチャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16ファーストレグを控えているなかでの、リーグ最下位との一戦だったにもかかわらず、だ。

結果、インテルは前半だけで3ゴールをあげ、4-0でサレルニターナを一蹴。後半60分にラウタロ・マルティネスとマルクス・テュラムの前線コンビ、そしてフィールドプレーヤーで最も多くの出場時間を記録しているヘンリク・ムヒタリアンをベンチに下げ、一定時間休ませることにも成功した。

■レジェンドたちもCLで主役になれると期待

ただもちろん、20日のアトレティコ・マドリー戦にも、インテルは全力で臨む姿勢だ。スクデット獲得(セリエA優勝)が最優先とはいえ、望外だった昨季に続く2年連続の決勝進出も期待されている。

19日付の『La Gazzetta dello Sport』紙では、マルコ・マテラッツィ、イバン・コルドバ、フランチェスコ・トルド、ジャンフランコ・ベディンという、4人のレジェンドOBたちが、古巣のCL決勝進出を信じていると話した。

マテラッツィはインテルが最後までいけるという「確信」を口にし、コルドバは現チームへの「楽観」を表した。トルドは「欧州でも偉大な主役となるだけの要素はそろっている」と述べ、ベディンは欧州での躍進も「夢ではなく、現実」として狙えるチームと称賛している。

■なぜ飛躍を期待できるのか

そもそも、繰り返しになるが、インテルは昨季のCLファイナリストだ。決勝トーナメントの組み合わせが有利に働いたことは、マテラッツィも認めている。だが、戦前予想で圧倒的にシティ有利と言われながら、決勝ではジョゼップ・グアルディオラ監督のチームを苦しめた。どちらに転んでもおかしくなかったのは記憶に新しい。

敗れはしたが圧倒的強者のシティ相手に善戦したことで、ベディンはインテルが「完全に開花」したと指摘する。トルドもこの一戦でインテルの選手は「自分たちがベストのレベルにあると理解した」とし、それが今季の成熟ぶりにも見えると話した。

加えて、マテラッツィやコルドバが指摘したように、今季のインテルは新戦力によるチーム全体の底上げが昨季と異なる。左サイドでフェデリコ・ディマルコやアレッサンドロ・バストーニに代わるカルロス・アウグストや、中盤のダヴィデ・フラッテージらは貴重な存在だ。ヤン・ゾマーとバンジャマン・パヴァールが加わった守備陣は高く評価されている。

ラウタロとテュラムは世界有数のコンビとなった。ムヒタリアンとニコロ・バレッラ、指揮者としてタクトを振るうハカン・チャルハノールの中盤は、欧州最高峰との呼び声も高い。そこに加えて厚みも増した。トルドは今季のインテルの選手レベルが2010年の3冠達成時に達したとまで話している。

層に厚みがでれば、マネジメントにも役立つ。今季のインザーギからは、負荷管理への配慮もうかがえる。フラッテージはもっと出場が期待されていたし、前線のレギュラーとマルコ・アルナウトビッチ、アレクシス・サンチェスの差は歴然だ。それでも、総合力を高めたインテルは、スクデットに突き進んでいる。国内でのアドバンテージは、CLで躍進するためのさらなるマネジメントにも有益だ。

そういった好循環で結果も出れば、チームやその周囲の雰囲気は良くなるばかりだろう。マテラッツィは躍進を信じる一因に「グループの団結ぶり」や「(リーグ戦でも常に満員の)サン・シーロの素晴らしい環境」をあげ、「みんなが楽しんでいる」と話した。トルドも同じように結束ぶりを称賛している。コルドバは今のインテルが「美しく、同時に効果的なサッカーをしている」と賛辞を寄せた。

そして、指揮を執るインザーギが、トーナメントを得意にしているのは周知のとおりだ。『Sky Sport』によれば、インテルでの3シーズンで、コッパ・イタリア、スーペルコッパ・イタリアーナ、CLのトーナメントの成績は、24戦17勝4分け3敗(39得点、16失点)。スーペルコッパで3連覇、コッパ・イタリアで2連覇を果たしている。

イタリアの名将アッリーゴ・サッキは、『La Gazzetta dello Sport』紙で、インザーギが「戦術家」から「戦略家」になりつつあると評価。インテルが「守ってカウンター」だけでなく、ハーモニーのある、以前よりも完全なチームになったと称賛した。

■幸運の女神は微笑むのか

もちろん、CLは世界最高レベルの大会であり、その頂点に至る道は極めて険しい。トルドは「運も決め手となり得る」とし、それをうまく引き寄せる必要があると指摘した。

サッキもアトレティコは「難しい相手」であり、ディエゴ・シメオネ監督は「相手を狂わせる」と警鐘を鳴らしている。そのうえで、「強いモチベーション、チームスピリット、インザーギがインテルに与えたプレーから、彼が我々を失望させることはないと確信している」と期待を寄せた。

王者マンチェスター・シティやレアル・マドリーを筆頭に、一部のライバルには及ばないとの見方もあるだろう。だが、インテルが有力候補のひとつなのは間違いない。再び決勝に進み、14年前のような栄光をつかむことはできるか。インザーギ・インテルが3年目のCL決勝トーナメントに臨む。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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