Yahoo!ニュース

松井大輔もパクも超えた! Jリーグ経由欧州行きの元ガンバ大阪ファン・ウィジョの「その後」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

かつてJリーグのガンバ大阪で活躍した韓国人ストライカーが、フランス1部リーグのリーグ・アンにおけるアジア人最多得点記録を更新した。

仏リーグ・アジア最多得点者に

ジロンダン・ボルドーに所属するファン・ウィジョが1月23日(日本時間)の対ストラスブール戦でハットトリックを記録。リーグ・アンでのハットトリックはファン・ウィジョ自身初であり、アジア人初の快挙だった。

日本では廣山望を皮切りに、松井大輔、中田浩二、稲本潤一、酒井宏樹、昌子源、長友佑都などがリーグ・アンでプレーし、韓国ではソ・ジョンウォン、アン・ジョンファン、パク・チュヨン、ナム・テヒ、クォン・チャンフン、ソク・ヒョンジュンらがリーグ・アンのピッチを踏んだが、リーグ・アンでハットトリックを決めたアジア人はファン・ウィジョが初めてだという。

しかも、この日の3連発でファン・ウィジョはリーグ・アン通算77試合目にして27ゴールを記録。元韓国代表FWパク・チュヨンが保持していた同リーグにおける韓国人最多得点記録(91試合25ゴール)を塗り替えた。

データ集計サイト『Opta』によると、リーグ・アンで最もゴールをマークしたアジア人選手にもなったらしい。

ちなみに2位は前出のパク・チュヨン、3位はオーストラリアのフランク・ファリーナ(20ゴール)、4位は日本の松井大輔(17ゴール)、5位はオーストラリアのミル・ステリョフスキー(15ゴール)だという。

韓国発、Jリーグ経由での欧州行き

まさに「韓国Kリーグ発、Jリーグ経由での欧州行き」の成功例となったファン・ウィジョだが、フランスの地で最初から成功したわけではない。

1年目の序盤は苦戦が続いた。開幕序盤のディジョンとのアウェー戦(2019年8月25日)で待望の初ゴールは決めていたが、チームの状況もあって2列目で起用されたり、若手の台頭でベンチに燻ることもあった。

2020年2月のパリ・サンジェルマン(PSG)戦でゴールを決めて存在感を示すこともあったが、本職のセンターフォワードではなくサイド起用も多かった。

そうこうしている間に新型コロナウイルス感染症の影響でシーズンは3月半ばに中断し4月末には早期終了。フランス1年目は24試合出場6ゴールで、本人が目標にしていた“2桁ゴール”には届かなった。

ファン・ウィジョに近しい関係者によると、この時期は本人もかなりの消化不良を抱えていたという。

再確認させたガンバ大阪サポーターとの絆

ガンバ大阪在籍時から海外からの誘いが絶えず、中国や中東、アメリカからも高額オファーもあったというが、「たとえ年俸が下がってでも欧州に行きたい」という夢を追いかけた先で少なからず挫折感も味わった。

それでもひとつの救いとなったのがガンバ大阪サポーターたちの声援だろう。クラブ関連ウェブサイト『ウェブジロンダン』でリオネル・ピケ記者がこんなエピソードを紹介していた。

「日本人がファン・ウィジョのユニホームを買うためにボルドーをたくさん訪れた。日本ではクラブで活躍すると、ファンはその選手を忘れられない。それで多くのガンバ大阪のファンがファン・ウィジョを見るためにボルドーまで来たはずだ」

ガンバ大阪サポーターの絆の強さを改めて再確認させたこのエピソードに本人が奮い立たないはずがない。

昨年9月、W杯アジア最終予選で韓国に戻ったファン・ウィジョといくつか言葉を交わしたが、そのときもガンバ大阪サポーターのことを感謝していた。フランスにまで届いた声援に、ファン・ウィジョも勇気づけられたことだろう。

「2年目のジンクス」ならぬ「2年目のブレイク」

そして、ボルドー2年目となった2020-2021年シーズンにファン・ウィジョは飛翔する。リーグ戦36試合に出場して12ゴールを記録。得点ランキングでも13位タイにランクインし、年間ベストイレブン候補にも名を連ねた。

Jリーグでもガンバ大阪2年目の2018年シーズンに6戦連続ゴールを含む通算16得点で得点ランキング3位になり、ベストイレブンにも選出されていたが、まさに「2年目のジンクス」ならぬ「2年目のブレイク」をフランスでも見せつけた。

その勢いと経験を買われてオーバーエイジ枠で挑んだ東京五輪では、グループステージ3試合と決勝トーナメント準々決勝の全4試合で先発出場。

東京五輪、ボルドー残留、熱愛説

ホンジュラス戦でのハットトリックを含む4ゴールを挙げ、得点ランキング2位タイの活躍を披露していたが、U-24韓国代表は準々決勝でメキシコに3-6で敗れ、準決勝進出を逃した。

その直後にはヘルタ・ベルリン、ヴォルクスブルグ、サウサンプトン、マルセイユなど複数のクラブが獲得に興味を示していると報じられたが、最終的にはボルドーに残留。

ボルドーが財政難に陥っていることとから放出も目前とされ、ポルトガルのスポルティングとは移籍金1200万ユーロ(日本円=約15億6000万円)でほぼ合意直前まで進んだが、結局はボルドーに残留して今季を迎えていた。

今季は10月17日の第10節ナント戦で負傷交代して以降、約1カ月間戦列を離れていたものの、12月13日の第18節トロワ戦で復活ゴールを挙げるなど、大事な局面できっちり結果を出すところはさすがだ。

年明け早々にはK-POPガールズアイドル出身のタレントとの熱愛説が浮上するなどプライベ―トでも注目される存在にもなった。

(参考記事: 元ガンバ大阪の韓国代表FWとK-POP美人アイドルに熱愛説が浮上…「昨年11月から」スイス旅行写真も)

早ければ27日に韓国のW杯出場が確定?

そんなファン・ウィジョに寄せられる次なる期待は、カタールW杯への出場切符。韓国代表は1月27日にアウェーでレバノン代表と、2月1日には中立地UAEでシリア代表とカタールW杯アジア最終予選を戦う。

パウロ・ベント監督率いる韓国代表は現在、2022年カタールW杯アジア最終予選A組で4勝2分け(勝ち点14)を記録し、イラン(勝ち点16)に続いて2位につけている。

3位アラブ首長国連邦(UAE)との勝ち点差を8。韓国は残り4試合があるが、UAEの結果次第ではレバノン戦で10大会連続のW杯出場が決まる可能性もある。

キャプテンのソン・フンミン(トッテナム)やファン・ヒチャン(ウォルバーハンプトン)がケガで今回の代表招集が見送られている中、その決定打を決める主役として期待が集まるのがファン・ウィジョであることは間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事