女性のQOLを左右するアトピー性皮膚炎 - 性機能と妊娠願望への影響を解説
【アトピー性皮膚炎が女性の生活に与える影響】
アトピー性皮膚炎は、成人人口の17%にも及ぶ非常に一般的な皮膚疾患です。かゆみや痛みといった症状だけでなく、睡眠障害、不安、うつなど、患者さんの生活全般に大きな影響を与えます。
特に女性の場合、アトピー性皮膚炎は性生活や妊娠・出産に関する願望にも影響を及ぼす可能性があります。しかし、これまでこの分野についての研究はあまり進んでいませんでした。
今回、スペインの研究チームが行った調査では、102人の女性アトピー性皮膚炎患者さんを対象に、性機能や妊娠願望に関する詳細な質問を行いました。その結果、驚くべき事実が明らかになりました。
【性機能への影響:68.6%の患者さんが問題を抱える】
調査の結果、実に68.6%もの患者さんが、アトピー性皮膚炎によって性生活に支障をきたしていると回答しました。特に症状が重い患者さんや、お尻や性器に症状がある患者さんほど、性機能の低下を強く感じていることがわかりました。
性機能の低下は、患者さんの生活の質(QOL)全体に大きな影響を与えます。また、不安やうつ症状とも関連していることが示されました。
アトピー性皮膚炎の治療において、皮膚症状の改善だけでなく、患者さんの性生活にも配慮することが重要です。医療従事者は、この問題について積極的に患者さんと話し合い、適切なサポートを提供する必要があります。
【妊娠願望への影響:51%が「影響がある」と回答】
さらに驚くべきことに、調査対象の51%の女性が、アトピー性皮膚炎が妊娠願望に影響を与えると考えていました。特に、お尻に症状がある患者さんほど、妊娠を希望する気持ちが弱くなる傾向が見られました。
しかし、興味深いことに、症状の重さや性器の症状の有無は、妊娠願望への影響とは関連していませんでした。
また、調査対象の女性のうち、32.4%がすでに子供を持っており、42.2%が将来的に子供を持ちたいと考えていました。しかし、アトピー性皮膚炎と妊娠に関して皮膚科医と相談したことがある患者さんは、わずか28.9%でした。
【医療現場での対応:患者さんとの対話の重要性】
この調査結果は、アトピー性皮膚炎の治療において、単に皮膚症状を改善するだけでなく、患者さんの性生活や妊娠・出産に関する不安や希望にも目を向ける必要があることを示しています。
しかし、現状では多くの患者さんが、これらの問題について医師と話し合う機会を持てていません。医療従事者は、患者さんの性生活や妊娠願望について、積極的に話題を提供し、適切なアドバイスやサポートを行うことが求められます。
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の改善だけでなく、患者さんの全人的なケアを目指すべきです。性機能や妊娠願望に関する問題も、治療の重要な一部として考慮する必要があります。
アトピー性皮膚炎は、症状の程度や部位によって個人差が大きい疾患です。それぞれの患者さんに合わせた、きめ細やかな対応が求められます。医療従事者と患者さんが協力して、より良い治療とケアを目指していくことが大切です。
参考文献:
Rodriguez-Pozo JA, et al. The Impact of Atopic Dermatitis on Sexual Function and Reproductive Desires in Women. Acta Derm Venereol. 2024; 104: adv35107.