箒に乗ってやって来るのは可愛い魔女だけじゃない=竹帚で日本に侵入したムネアカハラビロカマキリ
箒(ほうき)に乗ってやって来るのは、可愛い魔女のキキちゃんや、サリーちゃんや、メグちゃんだけではない。
最近日本全土で生息域を急拡大している外来カマキリ「ムネアカハラビロカマキリ」は、中国から竹箒に乗ってやって来たと言われている。
と言ってももちろん、魔女のように箒にまたがって飛んできたわけではない。中国から大量に輸入された竹箒にムネアカハラビロカマキリの卵(卵鞘)が付いていたらしい。
◇昆虫記者のフィールドではムネアカが在来ハラビロカマキリをほぼ駆逐
昆虫記者は、昨冬にムネアカハラビロカマキリの卵鞘をたくさん見つけていた千葉市の公園を先日訪れ、ムネアカハラビロカマキリと、在来の「ハラビロカマキリ」を探してみた。すると、恐ろしいことに、見つかった10匹ほどのハラビロ系のカマキリのすべてが、ムネアカだった。以前ここには、かなりの数の在来ハラビロがいたのだが、短期間でそれが外来のムネアカハラビロに置き換わってしまったようだ。
◇ムネアカの勢力急拡大の秘密
ムネアカの成虫は、在来ハラビロより大きい。ムネアカの卵鞘も、在来ハラビロの卵鞘より大きいものが多い。そして、ムネアカが孵化する時期は、在来ハラビロより早いとの報告もある。
早く発生して大きくなったムネアカの幼虫にとって、生まれたばかりの在来ハラビロの幼虫は格好の餌になるだろう。
ムネアカハラビロカマキリの侵入が最初に確認されたのは2000年頃とされるが、在来の「ハラビロカマキリ」と似ていることから見つからなかっただけで、かなり以前から勢力を拡大してきたとみられる。
最近の調査では中国から輸入された竹箒100本に2、3個の割で卵鞘が付いていたという。そう聞くと少ないと思う人もいるかもしれない。しかしカマキリの卵鞘1つから100匹以上の幼虫が出てくることを考えると、少ないとはとても言えない。
さらに悪いことには、竹箒は落ち葉かきなど公園の清掃に多用され、交換頻度も高いという。近年の調査では、すでに20都道府県で発生が確認されており、この拡散力は竹箒効果と言うしかなさそうだ。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)