日本の相対的貧困率を改善させるには?
日本の相対的貧困率が米国、韓国を上回って悪いとの記事が評判のようだ。
日本の相対的貧困率、米韓にも抜かれ先進国最悪に(Wedge 7月12日)
確かにOECDの統計によれば、2021年の日本の相対的貧困率は15.4%と、韓国15.3%(2020年)、米国15.1%(2021年)を上回る悪さで、OECD加盟国38か国中下から8番目に悪い結果だ。
しかし、相対的貧困率を、子どもと高齢者に分けてみると、また見える風景が違ってくる。
厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、日本の場合、子ども(11.5%)と現役世代(12.7%)の相対的貧困率は平均値(15.4%)を下回る一方で、高齢世代(20.0%)の相対的貧困率は平均値を4.6ポイントと大きく上回っていることが確認できる。これは高齢になればなるほど、過去の経済活動の結果の積み重ねによる影響が大きくなるからだ。つまり、年齢とともに格差が拡大されているからに他ならない。
これは裏を返して言えば、日本の場合、現役期には税による所得再分配が機能せず、引退期には社会保障による所得再分配が機能していないことを意味する。
だとすれば、日本の相対的貧困率を下げる処方箋は簡単で、高齢世代の相対的貧困率が高いのだから、同じ高齢世代内での税や社会保障による再分配を強化すればいい。
前の世代よりも後に続く世代が圧倒的に豊かになる時代にあっては世代間扶養も合理性があったかもしれないが、ゼロ近傍成長時代では世代間扶養よりも世代内扶養の役割が強化されるべきだ。
現状の年金制度では過去に高所得でしたがってその多くは多額の資産を持っている高齢者ほど年金受給額が多く、低い所得で資産も少ない高齢者ほど年金受給額が低いという逆転現象が生じている。いまや生活保護受給世帯の半数が高齢世帯となっているのは、そもそも公的年金保険が機能していないからだ。資産を多く持つ高齢者からそうではない高齢者への再分配を強化することで、高齢者の相対的貧困率は改善に向かうだろう。
来年2024年度には5年に一度の公的年金制度の健康診断である「年金将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」と3年に一度の介護保険制度の見直しが行われる。
現役世代の負担が限界に達した今、世代間扶養の役割を縮小させると同時に、高齢世代のみならず世代内再分配を強化する方向での抜本的な解決策を見出してほしい。