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梅雨入りに答えなし

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
関東甲信地方の梅雨入り平年日は6月8日ころ(写真:アフロ)

台風に次いで、世の中の関心が高い梅雨入り明けの発表。しかし、梅雨入り明け日を特定することは難しい。過去には発表方法を変更したものの失敗に終わった。梅雨入りに答えはなく、大雨シーズンと捉えた方がいい。

評判悪く、わずか2年で終了

「●●地方は、6月9日ころに梅雨入りしたと見られます。」

これはおなじみの梅雨入り発表のフレーズです。つい日付に注目してしまいますが、予報官の気持ちは「ころに」という言葉に表れています。

今から20年ほど前、「梅雨入り明けの時期を旬の前半、旬の後半などの旬日程度の期間で特定することとする」と気象庁から発表がありました。

わかりやすく言えば、これまで梅雨入り明けを特定の日付で発表していたが、これからは「6月上旬前半」や「7月下旬後半」などとするということです。

梅雨入りの発表があった日に梅雨入りしたと思うのが自然ですが、そうではないといわれたら、だれもが困惑します。結果的にこの発表方法は評判が悪く、1995年と1996年のわずか2年で終了しました。

梅雨入り日が特定しにくいわけ

分かりにくい発表方法だったかもしれませんが、予報官を責める気持ちにはなりません。「気象庁最大の憂うつ」と称した記事もあるほど梅雨入り日を決めるのは難しい。天気予報の当たり外れは別として、天気そのものが移りゆく存在なので、この日からきっぱりと梅雨ですとは言えないのです。

台風に次いで、梅雨入り明けは世の中の関心が高い出来事、だからこそ「ころに」という言葉に予報官の苦悩が見え隠れしています。

東京、梅雨入り後3日目に晴れ

東京における梅雨入り後一週間の天気(速報値:1997-2015)
東京における梅雨入り後一週間の天気(速報値:1997-2015)

実際、東京の梅雨入り後、一週間の天気を調べてみると、発表当日と2日目は雨が優勢ですが、早くも3日目は晴れることが多いです。この程度のぐずつきならば、梅雨に限らず一年に何度もあります。

しかし、雨の強さ、大雨を考えれば、梅雨は侮れません。とくに西日本は一年で最も雨が多い時期で、深刻な豪雨被害が発生します。

梅雨入りの日付にこだわるよりも、大雨シーズンに入ったと思ったほうが理にかなっています。

梅雨入りの平年日マップ
梅雨入りの平年日マップ

毎年、この頃になると「いつ頃梅雨入りしますか?」という問い合わせが急に増えます。

こればかりは空模様次第ですが、今年の6月、7月は気温が高く、雨量も多くなる可能性があります。晴れれば暑く、雨が降れば大雨とメリハリのある梅雨になるかもしれません。

【参考資料】

気象庁,1995:各地の梅雨の時期と降水量,1995年版気象年鑑,242-243.

気象庁,1996:各地の梅雨の時期と降水量,1996年版気象年鑑,234-235.

「気象」1997年6月号:6月の気象メモ「日本列島梅雨景色」

毎日新聞地方部特報班編,1995:梅雨入り・明け平年日 気象庁最大の憂うつ,花鳥風月気候図ものがたり,36-39.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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