ミスター百貨店、大西洋・前三越伊勢丹HD社長が新天地「羽田未来総研」で目指すこと
昨年3月に三越伊勢丹ホールディングス社長を辞任し、6月には取締役も退任した大西洋氏が、実業の世界に復帰した。かねてから日本の良いモノやコト、人材を世界に広げるクールジャパンや、地方創生、人材育成を人生を賭して取り組みたいテーマと明かしてきた中で、昨年7月から特別顧問を務めてきた日本空港ビルデング(羽田空港を中心に施設管理運営・物販販売・飲食の3事業を展開する日本空港ビルデング)の副社長に就任(6月末の株主総会後)。さらに、7月2日に100%子会社として設立する「羽田未来総合研究所」の社長に就任することが決まった。
大西洋・前三越伊勢丹HD社長が志す「羽田未来総研」のビジョン
グローバルや地方創生、人材育成、小売り事業、イノベーションなどに包括的に取り組むことができるハブとして、日本国内や世界とつながり年間8000万人が利用する羽田をベースにできることは大きなチャンスだ。事業内容として「既存の空港運営事業のさらなる価値向上、新規事業モデルの開発、シンクタンクとしての機能発揮」を掲げるが、これまで縦割りだったファッションやアート、文化、テクノロジーなどにかかわる人材や有識者を集め、フラットに連携しながら、若くて優秀な人材や企業の成長を支援したり、羽田空港周辺開発に合わせてアート&カルチャーの発信拠点づくりを進めていく。5000~3万平方メートル規模で、新しい体験型の小型百貨店、食の提案などを行っていきたいという。
クールジャパンの発信拠点を天空橋駅上に開発 2020年に先行開業
羽田空港周辺では国際線旅客ターミナルビル周辺で2つの開発が進んでいる。天空橋駅上の第1ゾーンには、先端産業の研究開発施設やクールジャパン発信拠点となる日本文化体験施設などの複合施設の開設を予定している。20年に先行開業、22年に完全開業する計画だ。
直近のところでは、日本の観光名所や銘品、エンターテインメントなどのスペシャルな情報を提供する羽田のバーチャルサイトを立ち上げる方針。並行して、地方の銘品を羽田空港を拠点に販売していく予定だ。マーケティング機能を強化して羽田や東京、日本に求められる事業やサービスを構築したり、将来的にはコンサルティング事業や、スタートアップ企業などに投資を行うコーポレート・ベンチャーキャピタル事業などへと領域を広げたい考え。
実は三越伊勢丹HDを退社直後から、多くの企業や団体などからトップ就任の声がかかっていた大西氏。しかし、社長退任時に同時に辞めた(辞めざるを得なかった)役員や執行役員の転身先が決まるまではと、昨年は自身の進路の話を進めることはなかった。それが動いたのは、今年3月のこと。「日本空港ビルデングの鷹城勲表取締役会長兼CEOは5年後、10年後など将来に向けたビジョンをお持ちの方。企画を理解いただき、スピード感を持って新会社設立に動いていただけた」と明かす。
インバウンドが急増し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて盛り上がりを見せる東京・日本だが、その後の急激な経済低迷を憂う声も聞こえてくる。大西氏も危機感を持つ一人であり、「アートや文化などがオリンピック後の日本の経済を支えられるようになれば」と説く。また、モノを買うよりも、体験や感動、心の充足に満足度を感じる生活者が増えている時代だ。「モノを売るだけでなく、知識や知能などをマネタイズする知的産業として、羽田未来総研のプレゼンスを高めながら、若い人材や企業、アーティストやクリエイターの世界進出の手助けをしていきたい」。
行政主導のクールジャパン案件などが足踏み、または失敗するケースも多い。羽田未来総研では、大西氏の求心力やネットワークを軸に、良いものが世界に伝わり、若い世代や優秀なクリエイターやアーティストが活躍できるような、日本の活力の源となるプラットフォームになることが期待される。