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米ネット広告市場、5年連続2桁成長 2014年の売上高495億ドル、テレビ放送を引き離す

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米国のインターネット広告業界団体インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー(IAB)と米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)がこのほどまとめた調査リポートによると、昨年(2014年)の米国におけるインターネット広告の年間売上高は495億ドルとなり、過去最高を更新した。

ネット広告、テレビ放送との差広げる

10年前に100億ドル規模だった同国のネット広告売上高は、その後順調に伸び、2007年は200億ドル、2011年は300億ドルを超え、2013年は400億ドルの大台を突破した。

これら米ネット広告の年間売上高は、2007年にラジオを、2010年は新聞を、2011年はケーブルテレビを抜き、2013年はそれまで最大だったテレビ放送も上回った。そして2014年もインターネットは媒体別売上高でトップとなった。

2014年における媒体別広告売上高を見ると、テレビ放送が405億ドルでネットに次ぎ、そのあと、ケーブルテレビ(252億ドル)、ラジオ(172億ドル)、新聞(167億ドル)、消費者向け雑誌(128億ドル)、屋外広告(84億ドル)、ビデオゲーム(10億ドル)、映画(8億ドル)と続いた。

米国のネット広告は、テレビ放送とケーブルテレビを合わせたテレビ全体の657億ドルと比べるとまだ規模は小さい。

だがIABとPwCのリポート(PDF)によると、テレビ広告がほぼ横ばい(テレビ放送)、あるいは緩やかな増加(ケーブルテレビ)で推移しているのに対し、ネットは前年から16%増と大きく伸び、2位のテレビ放送との差を広げている。

2桁成長はネット広告のみ

IABによるとネット広告の2桁成長はこれで5年連続。ネット広告は2009年に前年比3%減と、いったん落ち込んだものの、それを除けば2003年以降一貫して2桁成長が続いている。

2010年以降に2桁成長した媒体はほかになく、この傾向が続けばネットはやがてテレビに追いつくと米ウォールストリート・ジャーナルの記事は指摘している。

一方で、新聞広告は落ち込みが激しい。

IABとPwCの別のリポート(PDF)によると、2005年に第1位の媒体だった新聞はその後一貫して右肩下がりという状況。2009年にネットに抜かれた後も減少が続き、2014年はついにラジオを下回った。

モバイル、前年比76%増と急伸

2014年の米国ネット広告売上高を種類別に見ると、検索広告が190億ドルで最も多く、全体の38%を占めた。

これに次いだのがディスプレー関連広告(バナー、デジタルビデオ、リッチメディア、スポンサーシップ)で135億ドル。その全体に占める割合は27%だった。またモバイル広告は125億ドルで同25%。

IABによると、このうち最も伸び率が高いのはこのモバイル広告。その売上高は前年の71億ドルから76%増加した。

これに伴い、ソーシャルメディア広告も同57%増の70億ドルと大きく伸びた。一方検索広告は同3%増と、小幅な伸びにとどまっている。

JBpress:2015年4月24日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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