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オリンピック・パラリンピックマスコットの名称に関する商標法的考察

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

「2020年東京五輪・パラリンピックマスコットの名前発表!」というニュースがありました。オリンピックのマスコットの方が「ミライトワ」(未来+永久より)、パラリンピックの方が「ソメイティ」(ソメイヨシノおよび"so mighty"より)だそうです。ネーミングは専門会社に委託したそうですが、上記記事のコメントでは違和感ありとの意見が多く見られます。

憶測にすぎませんが、このようなネーミングになってしまったのは商標登録の縛りがきつかったことによるのではと思います。おそらく、この名称も、他のエンブレム類と同様に全区分を指定して商標登録出願されているのでしょう(出願後公報が出てウェブで検索できるまでは1カ月以上かかりますので現時点では確認できませんが)。もし全区分で商標登録できることが義務であるならば、全区分で類似先登録がない名前を選ばなければなりません。この条件にこだわりすぎた結果、日本人があまり口にしたことがない語感の言葉(=違和感がある言葉)が選ばれることになってしまったのではないでしょうか。

上記記事のコメントでは「ミライくん」で良かったんじゃないかなんて意見がありますが、「ミライ」ですとトヨタ自動車のものを含め数多くの類似・同一先登録がありますので、全区分で商標登録できることが前提になっているとするならばちょっと無理な選択肢です。

個人的には、全区分で商標登録可能という条件はあきらめてもっと親しみやすい名前(たとえば、「ミラポン」と「ソメッシー」とか)にするか、あるいは、あんまりひねらないで「東京みらい」と「東京さくら」(または「大江戸みらい」「大江戸さくら」)あたりにしておけばよかったのでは(後者ならばおそらく商標登録も可能)と思いますが、今ここで言ってもしょうがない話ではあります。

ちなみに、最近の五輪のマスコットの名前はどうだったかというと、リオ五輪は「ビニシウス」(「イパネマの娘」の作詞者の名前)、ロンドン五輪は「ウェンロック」(オリンピックに縁のあるイギリス中部の町名)ということで、あまりひねらずに人名・地名そのまんまというパターンです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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