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若年非正社員の47%が抱く「正社員」への希望

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 非正社員の若者達も正社員になればもっと足取りも軽くなるのだろうか

雇用問題の一つに挙げられる、若年層の非正社員就業。実態としてどれほどの若年非正社員が正社員としての就労を望んでいるのだろうか。厚生労働省が2014年9月に発表した、2013年時点における若年層の雇用実態を調査した結果「平成25年若年者雇用実態調査結果の概況」から、その実情を探ることにする。

なお正(規)社員・非正(規)社員の仕切りだが、雇用者にフルタイムで半永久的に、あるいは定年まで雇用期間を定めずに雇われる雇用形態にある社員のことを正社員と呼び、それ以外を非正社員(例えばパート、アルバイト、契約社員)と呼んでいる。非正社員の方がその職における安定性は低く、賃金も低めに抑えられることが多い。また今件調査では15歳から34歳を「若年労働者」と定義している。

次のグラフは調査母体全体のうち「非正社員(正社員以外の労働者)」で現在在学していない人(つまり学生アルバイトでは無く、主業として非正社員の立場で就業している人)に、今後どのような働き方を望んでいるかを尋ねた結果。47.3%が「今後は正社員として働きたい」と回答している。

↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)
↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)

非正社員の立場のままで働き続けたい人は3割足らず。詳しく見ると「現在の会社で」は23.9%、「別の会社で」は4.8%。非正社員の立場を望む人は、勤める企業そのものも合わせ、現状維持を望む声が大きい。残り1/4は独立事業・家業引き継ぎ、その他個々人の様々な理由による。

これを個々の属性別に見ると、それぞれの属性の事情や現状が透けて見える。

↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)(男女別)
↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)(男女別)
↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)(男女・年齢階層別)
↑ 今後の働き方別正社員以外の若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(2013年)(男女・年齢階層別)

・男性は正社員願望が強く、女性は非正社員を望む声が強い。30代に入ると女性は兼業主婦の比率が高まるので、時間の調整がし易い非正社員のまま勤めたい人が増える。

・10代は多種多様な事情があり、「その他」「不明」回答が多い。さらに女性では「今勤めている会社”以外”で正社員」という人の割合が他と比べて大きい。

・20歳以上はどの階層でも「今の会社で正社員として」の希望者が一定率いるが、歳を経るにつれて「別会社で正社員」の希望者率は減り、「正社員以外」を望む人が増えてくる

3番目の傾向に関してだが、年齢階層が上では自らの意志で非正社員として働いている人が多くなることから、「非正社員の状態を継続したい」とする人の割合が増えると考えれば道理は通る。女性は特に兼業主婦の立場の人の増加、男性は主夫、あるいは特殊技術の持ち主などだろうか。

問題は10代から20代前半。男性10代で「その他」の比率がかなり高めな状態は個人ベースの事情なので仕方ないとしても、男性で20代前半、女性でも10代前半から20代前半にかけて、正社員を望む人のうち「”別の会社で”」正社員を望む人の割合が極めて高い。逆に考えれば「非正社員として働いている現在の会社では、正社員化を望んでいない」ことを意味する。この年齢層の非正社員割合は10代が5割近く、20代前半でも1/3強と他の階層と比べても高めで、多くの人たちにおいて(会社側・本人自身側の責は別として)現在就労している会社の状況がハードであることが想像できる。

自ら望んだ人以外の非正社員への評価は多種多様。まさに「あちらを立てればこちらが立たず」のような問題が生じているのが「非正社員」問題と言える。今後は高齢者の低賃金による再就職で求人が奪われ、若年層の雇用市場がますます悪化することが容易に予想されるため、若年労働者の非正社員問題はさらに大きなものとなる。安定した就労が人生生活や消費行動においても重要な要素となることも考慮し、「これから」を創る若年層達の方を向いた政策を切に願いたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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