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【姫路発ローカルニュース】国の重要文化財「書写山円教寺」の伝承を取材|人の言葉を理解する犬が実在した

栗栖成之防災士×探偵ライター
出典:ウキペディア

日本各地にはさまざまな言い伝えが残っており、現在でも神事や伝統行事として執り行われています。

筆者が住む姫路市にある国の重要文化財、書写山円教寺にも伝承が残っており、人の言葉を理解する犬が活躍していたとのこと。

今回はそんな人の言葉を理解し、遠く離れた寺と円教寺に手紙を届けていた、犬の伝承を取材してきました。

まず向かったのは広畑区才にある犬塚地蔵

筆者撮影
筆者撮影

筆者撮影
筆者撮影

最初に向かったのは、言葉を理解し円教寺で活躍した犬が祀られている犬塚です。

伝承では、書写山円教寺と才村の北東にある円教寺の別院、慶雲山満乗寺との間を往復し、手紙を運び僧侶の手助けをしたとの言い伝えが残っています。

住宅街に祀られており、よく見ておかないと見過ごすほど。ここは、かつて姫路と室津を結んだ「室(むろ)の道」と呼ばれる旧街道沿いにあり、現在では犬塚の傍にお地蔵さんも鎮座していました。

姫路市教育委員会の「犬塚の説明」

筆者撮影
筆者撮影

2009年(平成21年)5月に、姫路市教育委員会が設置した犬塚の説明でも、「この地と書写山円教寺とを、1匹の犬が手紙を運んだりした」と記載されています。

このことから、人の言葉を理解する犬が実在していたことが証明できます。

数百年前の「室津道の道標」も残っている

犬塚から約100m東の交差点に、数百年前に建てられた「室津道の道標(みちしるべ)」が残っています。

姫路市が公開している「姫路市Webマップ」によるとこの道標は、1838年(天保9年)に設置されたとのこと。なんと186年間ずっとここで、人の往来を見続けていたのですね。

右 びぜんたつの道

筆者撮影
筆者撮影

道標北面で「右 びぜんたつの道」と読めます。

左 あぼしむろ津道

筆者撮影
筆者撮影

道標の東面で「左 あぼし むろ津道」と読めます。

左 志よ志やひめじ

筆者撮影
筆者撮影

道標の東面は「左 志よ志やひめじ」と読めます。「じ」はコンクリに埋まっていますが、間違いないようです。

南面は判読不明

筆者撮影
筆者撮影

南面はほぼ風化して、彫った文字を読み取ることが不可能です。それだけ、長い年月が経過している証ともいえます。

現在の室津道

筆者撮影
筆者撮影

現在の室津道を撮影しました。旧街道沿いには住宅が立ち並んでいますが、道幅は広くありません。

1961~1964の航空写真から街道を見てみる!

出典:重ねるハザードマップ(航空写真)
出典:重ねるハザードマップ(航空写真)

これは国土交通省が無償で提供している「重ねるハザードマップ」の、1961~1964の間に撮影された航空写真です。

今から約60年前の写真を見ても、赤丸部分の「室津道の道標」がある交差点が存在。そして、水色に着色した線の上側の道が、室津への街道になります。

この約60年前の航空写真からも、旧街道の存在が確認できました。

書写山円教寺との距離をGoogleマップで計測

出典:Googleマップ(航空写真)
出典:Googleマップ(航空写真)

書写山の別院である慶雲山満乗寺の場所は不明でしたが、先の犬塚の近くであることは間違いないでしょう。そこで犬塚から書写山円教寺までの距離を、Googleマップで計測してみました。

地形情報が分かりやすいように、航空写真バージョンで計測してみると、直線距離で約9kmあり、円教寺は標高371mの書写山の山頂付近に位置します。

この距離を走り山を駆け登っていたことから、やはり特別な犬であったと想像してしまいます。強靭な肉体と精神力、そして人の言葉を理解する知能を備えていることから、円教寺の本尊である釈迦三尊の使いであったのかもしれません。

次に向かったのは書写山ロープウェイ

筆者撮影
筆者撮影

円教寺へ行くには、標高371mの書写山を登らないといけません。各方面からの登山道はありますが、最も簡単に辿り着く方法は書写からのロープウェイが便利です。

今回は先の犬塚に時間を割いたために、円教寺まで行く時間がなかったため、ロープウェイの書写駅を紹介します。

ロープウェイ営業時間

書写駅からロープウェイを利用する際には、駐車場は無料で利用できます。ロープウェイの営業時間を、次に紹介しておきましょう。

料金は往復切符がお得で便利です。また、上りは書写山にある山上駅までなので、最終発を利用すると帰りは歩いて下山となるため注意が必要です。

【始発 上下便とも年間を通じて】

  • 8:30~毎時00・15・30・45の15分間隔で発車(乗車時間約4分)

【月~土の終発】

  • 3月1日から10月10日  上り17:45・下り18:00
  • 10月11日から2月末日 上り16:45・下り17:00

【日曜日・祝日の終発】

  • 3月1日から3月31日   上り17:45・下り18:00
  • 4月1日から10月10日  上り18:45・下り19:00
  • 10月11日から11月30日 上り17:45・下り18:00
  • 12月1日から2月末日  上り16:45・下り17:00

【利用料金】

  • 片道 大人700円・小人350円
  • 往復 大人1,200円・小人600円

書写山円教寺はイメージよりとても広大

筆者撮影
筆者撮影

円教寺は書写山頂に位置する西国三十三所第27番札所であり、ラストサムライや軍師官兵衛など、多くの映画や大河ドラマのロケ地としても有名です。

円教寺は「西の比叡山」と呼ばれており、戦国時代には比叡山、大山とともに天台宗の三大道場と称されたほど格式の高い寺です。上記の案内図を見れば、その広さはお分かり頂けるでしょう。

今回はこの円教寺と別院との連絡役を担っていた、人間の言葉を理解する犬の伝承を追ってみました。

現代でも家族(ペット)として暮らしている犬の中には、飼い主の言葉を理解する犬も多く実在します。そう考えれば、書写山円教寺の伝承は本当だった可能性は高いといえますね。

防災士×探偵ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!フリーでの執筆活動をメインにしつつ、探偵として地域の困りごとも解決している。

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