ウクライナ海軍がケルチ海峡のロシア最後の鉄道フェリー「スラヴャニン」を撃破
7月23日、ウクライナ海軍はケルチ海峡のロシア本土側のカフカス港でロシアの鉄道フェリー「スラヴャニン(Славянин)」を撃破したと報告しました。出典:ウクライナ海軍
ウクライナ海軍が作戦を主導し戦果を報告したということは、詳しい言及はありませんでしたが使用ミサイルはATACMS弾道ミサイルではなく、おそらく国産のネプチューン対艦ミサイルを大型化した対地攻撃仕様の巡航ミサイル改造型の通称「ドウヒー・ネプチューン(意味は”長い”ネプチューン)」だと思われます。ATACMSは陸軍が運用し、ネプチューンは海軍が運用している兵器である為です。
ただしウクライナ海軍およびウクライナ軍参謀本部からは詳しい攻撃方法の言及はまだ一切されていませんので現状での推定になります。
これに先立って5月30日にウクライナ軍はケルチ海峡のロシアの鉄道フェリー「アヴァンガルト(Авангард)」と「コンロートレイデル(Конро Трейдер)」の2隻をATACMS弾道ミサイルで攻撃し撃破済みで、今回の攻撃により残る最後の3隻目の鉄道フェリー「スラヴャニン(Славянин)」を撃破して黒海のケルチ海峡の鉄道フェリーは全て使えなくなりました。
- Avangard (IMO: 9522403, MMSI: 273349080)
- Conro Trader (IMO: 7711763, MMSI: 273326760)
- Slavyanin (IMO: 8300169, MMSI: 273293910)
※黒海のロシアの鉄道フェリーは他に過去に「アンネンコフ(Анненков)」号や「ペトロフスク(Петровск)」号なども在籍していたが、これらは戦争の数年前に引退し廃船済み。
なお民間船であっても軍事輸送に従事していた場合は正当な攻撃目標となることは国際人道法でも認められています。軍隊に徴用された船として扱われます。3隻とも港で撃破されてはいますが沈んではいないので修理復帰は可能ですが、戦争中にその余裕があるかどうかは分かりません。
関連:ウクライナ軍がATACMS弾道ミサイルでケルチの鉄道フェリー2隻撃破、クリミア大橋が目の前の位置(2024年5月31日)
- クリミア港:5月30日、鉄道フェリー「アヴァンガルト」撃破 ※ATACMS
- ケルチ港:5月30日、鉄道フェリー「コンロートレイデル」撃破 ※ATACMS
- ケルチ港:自動車フェリー運航3隻(現状では未攻撃)
- カフカス港:7月23日、鉄道フェリー「スラヴャニン」撃破 ※長ネプチューン(推定)
※上記とは別に2024年5月31日にカフカス港を数発のネプチューンで攻撃し石油タンクを破壊。この時の公式発表では使用ミサイルはネプチューンとあったが、おそらくドウヒー(長)・ネプチューンが使用されたもの。出典:ウクライナ軍参謀本部
※ウクライナ軍参謀本部はケルチ海峡への攻撃について、2024年5月30日のクリミア港とケルチ港への攻撃はATACMSを使用、5月31日のカフカス港への攻撃はネプチューンを使用したと明言しているが、7月23日のカフカス港への攻撃は使用兵器について何も説明していない。
ATACMS弾道ミサイルを使わずともウクライナ国産のドウヒー・ネプチューン巡航ミサイルでケルチ海峡への攻撃が可能であることを示せた以上、仮にアメリカ供与のATACMSに使用制限があったとしても、ウクライナ軍は何時でも橋を落とせることを意味しています。
参考:ドウヒー・ネプチューン(Довгий Нептун)
※ただし新型のドウヒー・ネプチューン(長ネプチューン)の写真や概念図はウクライナ軍からは未公表で外観は不明。ウクルインフォルム紙のインフォグラフィックは従来型ネプチューンの写真であることに留意。
- 弾頭:150kg→350kgに増量
- 射程:280km→400kmに延伸
- GPS等の衛星航法+赤外線カメラ終末誘導による対地攻撃能力の付与
- 将来的に射程1000km型を実用化すべく開発中
- ドウヒー・ネプチューンは正式名称ではなく通称