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史上2度目の「開幕戦ノーヒッター」はならず、史上2度目の「ルーキーによる開幕戦サヨナラ本塁打」で決着

宇根夏樹ベースボール・ライター
セス・ビアー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)Apr 7, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月7日、開幕戦に登板したダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)は、ヒットを打たれることなく、6イニングを投げて降板した。ナ・リーグとア・リーグの球史において、開幕戦のノーヒッターは、1940年4月16日のボブ・フェラーしか達成していない。また、パドレスの投手によるノーヒッターは、昨年4月9日――開幕8試合目――にジョー・マスグローブが成し遂げた1度きりだ。パドレスは、この時点で、それぞれの史上2度目まで9アウトに迫っていた。

 だが、7回裏、ダルビッシュに代わってマウンドに上がったティム・ヒルは、先頭打者にヒットを打たれた。ノーヒッターは、あっけなく潰えた。

 それでも、ヒルとピアース・ジョンソンが計2イニングを封じ、パドレスは9回裏を迎えた。スコアは2対0、勝利まで3アウトだ。

 ところが、4番手としてメジャーデビューしたロベルト・スアレスは、最初の9球中1球しかストライクが入らず、3人目の打者にぶつけて無死満塁としてしまう。さらに、スアレスに代わって登板したクレイグ・スタメンは、暴投で1点を取られた直後にホームランを打たれ、パドレスは2対4で敗れた。

 サヨナラ本塁打を打ったセス・ビアー(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)は、昨年9月にメジャーデビューしたルーキーだ。イライアス・スポーツ・ビューローは、こうツイートしている。「Dバックスのセス・ビアーは、在籍するチームのシーズン最初の試合でウォークオフ・ホームランを打った、MLB史上2人目のルーキー。1人目はロッキーズのクリント・バームス、こちらも相手はパドレス、2005年のこと」

 史上2度目の開幕戦ノーヒッターはならず、史上2度目のルーキーによる開幕戦サヨナラ本塁打が飛び出した。開幕戦でルーキーにサヨナラ本塁打を打たれて負けたことがあるのは、パドレスだけ、ということになる。

 バームスは、2003年9月にメジャーデビューし、その翌年もメジャーリーグでプレーしたが、出場は計32試合に過ぎず、2005年の開幕を迎えた時点では、まだルーキーだった。

 バームスがヒーローになった試合も、最後から2番目に登板したパドレスの投手は、日本プロ野球を経験している。トレバー・ホフマンの前に投げたのは、大塚晶則だ。ポスティング・システムを利用し、2003年のオフに中日ドラゴンズからパドレスへ移った。

 ただ、阪神タイガースからパドレスに入団したスアレスと違い、大塚は2005年の開幕戦で、8回裏のマウンドに上がり、2人に出塁されたものの、ホームは踏ませずにイニングを終わらせた。大塚にはホールド、スアレスには黒星がついた。ホフマンはセーブ失敗と黒星、スタメンはセーブ失敗だ。

 ちなみに、4月7日は「ナショナル・ビアー・デイ」だった。日本語に訳すと「ビールの日」といったところだろうか。「Beer Day」に「Beer」がサヨナラ本塁打を打ったということだ。

 一方、バームスは、サヨナラ本塁打から2ヵ月後に、左の鎖骨を骨折し、そこから3ヵ月欠場した。チームメイトのトッド・ヘルトンにもらった鹿肉の塊を持ち、階段を登っている途中に転んだ。こちらは「Beer」ではなく「Deer(鹿)」だ。離脱するまでは、54試合でホームラン8本と二塁打16本を打ち、打率.329と出塁率.371、OPS.886を記録していた。そのままいけば、オールスター・ゲーム選出や新人王もあり得た。バームスは、2015年までメジャーリーグでプレーしたが、オールスター・ゲームには選ばれていない。

 なお、日本プロ野球の開幕戦でサヨナラ本塁打を打ったルーキーは、2人いる。1956年の穴吹義雄と1989年の中島輝士がそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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